西村賢太の「一私小説書きの日乗 憤怒の章」(角川文庫:令和4年5月25日初版発行)を読みました。
芥川賞作家の西村賢太さんが2月5日、東京都内の病院で死去した。
54歳だった。
僕は芥川賞受賞作「苦役列車」以降、西村賢太の作品は出るたびにほとんど読んでいました。どこがいいのかと言われると、なんか感性が合うんですね。文章も好きです。最近、新刊がしばらく出ていなかったので、そろそろ出るかなと思っていたところでした。残念です。ご冥福をお祈りします。
無頼作家、怒りの日常
数多の作家を魅了する、著者ライフワークの日記文学
芥川賞を受賞後、「苦役列車」が映画化し、執筆とテレビ出演による多忙な日々を送る著者。締切に追われながらも、行きつけの店に通い、担当編集者と打ち合わせ、尊敬する人との邂逅に心震わせる。だが時に、そんな充実した日々に水を差す愚昧な人に、怒りをぶつける。惜しまれつつ急逝した最後の無頼派作家が、ライフワークとして死の直前まで綴り、数多の作家の支持を受けた日記文学「日乗」シリーズ第2弾。
たとえば、最初の日記はこうである。
平成24年5月28日(月)
午後3時起床。今朝方終わった、「文學」7月号用短篇のゲラに追加疑問が出てないかと心配になったが、幸いその旨の連絡は来ていない。ひと安心して、入浴。夜、買淫。帰路にて喜多方ラーメン大盛り。そろそろ熱々の麺はきつい季節になってきた。深更、晩酌。缶ビール一本、宝焼酎「純」一本。手製のウィンナー炒めと、焼き鳥の缶詰。納豆二パック。最後に、カップ焼きそばを食べて寝る。
だいたいが、こんな感じです。これに編集者との打ち合わせと、その後の飲み会。一人のときは、帰り道、鶯谷の「信濃路」など・・・。とんでもなく不健康な食生活です。それに加えて映画「苦役列車」への不満、新任の編集者への不満、等々、言いたい放題・・・。
西村賢太:
1967(昭和42)年7月、東京都江戸川区生れ。中卒。文庫版「根津権現裏」「藤澤清造短篇集」「田中英光傑作選 オリンポスの果実/さよなら 他」を編集、校訂、解題。著書に「どうで死ぬ身の一踊り」「暗渠の宿」「二度とはゆけぬ町の地図」「小銭をかぞえる」「廃疾かかえて」「随筆集 一私小説書きの弁」「人もいない春」「苦役列車」「寒灯・腐泥の果実」「西村賢太対話集」「小説にすがりつきたい夜もある」「一私小説書きの日乗」(既刊7冊)「棺に跨がる」「形影相弔・歪んだ忌日」「けがれなき酒のへど 西村賢太自選短篇集」「薄明鬼語 西村賢太対談集」「ずいひつ集 一私小説書きの独語」「疒(やまいだれ)の歌」「下手に居丈高」「無銭横町」「夢魔去りぬ」「東京者がたり」「風来鬼語 西村賢太対談集3」「蠕動で渉れ、汚泥の川を」「芝公園六角堂跡」「夜更けの川に落ち葉は流れて」「羅針盤は壊れても」「瓦礫の死角」等がある。2022年2月、急逝。
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