宇佐見りんの「くるまの娘」(河出書房新社:2022年5月30日初版発行)を読みました。
車で祖母の葬儀に向かう、17歳のかんこたち一家。思い出の景色や、車中泊の密なる空気が、家族のままならさの根源にあるものを引きずりだしていく。
「人が与え、与えられる苦しみをたどっていくと、どうしようもなかったことばかりだと気づ瞬間がある。すべての暴力は人からわきおこるものではなかった。天からの日が地に注ぎあらゆるものの源となるように、天から降ってきた暴力は血をめぐり受け継がれ続けるのだ。苦しみは天から降る光のせいだった」(本文より)
それに続けて、
「あの旅から帰ってきて、自分が車から降りることができなくなってしまったと知ったとき、かんこはそう思うことにしたのだ。そしてかんこは、車に住んだ。毎朝母の運転で学校へ行った」。
宇佐見りん:
1999年生まれ。2019年、『かか』で文藝賞を受賞しデビュー。同作は史上最年少で三島由紀夫賞受賞。第二作『推し、燃ゆ』は21年1月、芥川賞を受賞。同作は現在、世界14か国/地域で翻訳が決定している。
過去の関連記事: