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今村昌平監督の「赤い橋の下のぬるい水」を観た!(再掲)

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なぜか「アクセス解析」で、この古い映画がここ数日上位に挙がっています。
それは、今村昌平監督の「赤い橋の下のぬるい水」です。
原作は、辺見庸の「赤い橋の下のぬるい水」です。
 
以下、再掲します。

 

幅が10メートルほどの川、潮が引いて川底が見える。川は満ちてくる海と混じり合い、夏場は激しいにおいが来る。川沿いの魚屋には黒い前かけ姿の母親の仁子さんが魚をおろしている。川を挟んで魚屋の斜め向かいの、アパートの角には、薄い服を着た40くらいの女が、地面に直接腰を下ろして、男を待っているように見える。親父の女です。

 

上の文章は、今年の初めに芥川賞を受賞した田中慎弥の「共喰い」(集英社:2012年1月30日第1刷発行)の一部です。要するに幅10mほどの川のほとりのアパートに、薄い服を着た40くらいの女が、男を待っているように見えるというもの。この部分を読んですぐに思い出したのが辺見庸の「赤い橋の下のぬるい水」でした。川と女、それからの連想でした。さて、辺見庸の小説「赤い橋の下のぬるい水」を読んで、このブログに書いたのが2006年02月19日、いまから6年も前のことです。以下のように書きました。

 

映画「赤い橋の下のぬるい水」、こちらは役所広司と清水美砂が主演した今村昌平監督が描いた映画、公開が2001年11月でした。失業中の中年男が、体内に水がたまると悪いことをしたくなる女性と出会うというものでした。映画は辺見庸の作品、「赤い橋の下のぬるい水」と「くずきり」(「ゆで卵」所収)の二つが原作になっているようです。第54回カンヌ国際映画祭でパルム・ドールにノミネートされ、観客からの絶賛を受けたということで、当時、大いに話題になりましたのでよく憶えています。是非とも観たいと思っていたのですが、残念ながら見逃してしまいました。前作の今村作品、同じく役所広司と清水美砂が共演した「うなぎ」は観ました。

 

映画「赤い橋の下のぬるい水」を駄作だという人もなかにはいますが、小説と映画は別物と考えて、映画の方もぜひ観てみたいものです、とも書きました。そんなわけで、6年経ってやっとTUTAYAで借りて、映画「赤い橋の下のぬるい水」を観ることができました。「女と男をつなぐ“赤い橋”は、淡水と海水が交じり合う汽水漂うところであった・・・」。

 

「盗んだ金の仏像を、能登半島の日本海に面した赤い橋のたもとの家に隠した。家の門に咲くノウゼンカズラの赤い花が目印だ。俺の代わりにあの家に行ってくれ」。失業中の中年男・笹野陽介(役所広司)は、人生の師と仰ぐタロウ(北村和夫)の遺言のような戯れ言を、ホームレス仲間のゲンから聞かされます。タロウの意志を受けて、陽介は富山湾沿いを走る氷見線に乗り、ようやく能登半島のつけ根の小さな漁港に辿り着きます。

 

淡水と沈水が混じり合う水を汽水という。そこにはいろんな魚が集まってきます。そこに架かる赤い橋のたもとのの、ノウゼンカズラの咲く2階建ての家が本当にありました。橋の上からその家を観ていると、その家から妙齢な女性が出てきました。陽介は憑かれたように女性についていきます。その女性はスーパーに入り、手に取ったチーズをバックに入れて店を立ち去ります。その跡には水たまりができていて、片方だけのイヤリングが残されていました。

 

陽介は女性のあとを追い、赤い橋のたもとの家に戻ります。その家へ入ると老齢の女性が現れ、突然陽介におみくじを手渡します。戸惑う陽介、そこに現れたサエコ(清水美砂)、おみくじが吉と認めると、「チーズを食べませんか?」と2階へ誘います。2階からは、タロウの言葉どおりに赤い橋が見え、日本海の向こうには雄大な立山連峰が広がっていました。

 

サエコは自分は和菓子職人であること、祖母のミツ(倍賞美津子)は神社に御神籤を書いて納めていること、などを話します。突然、チーズを食べながら氷を口に含み、陽介を押し倒します。うつろな眼差しになると、サエコの快感とともに、体内から大量の水が溢れ出し、歓喜の声を発します。その水は廊下から階段を伝い、水路を通って川へと流れ出します。そこには大量に魚が集まってきます。思いがけない体験に陽介は驚きますが、サエコは水が溜まると我慢できなくなり、ついつい万引きをしてしまうと告白します。

 

「ぼくがサエコにかかわって水を出しつくすという、契約が自然に成立します。そんな馬鹿なことがあるわけない、というかもしれないが、あるんだな、それが!」と書いたことがあります。やはり、大人のファンタジーといえばそうかも知れません。あるいはメルヘンか?なにしろ水が噴き出して、虹まで出るんだから。でも、俗に「淫水」と言うようですが、実際にこんな「潮吹き女」がいるようです・・・。

 

陽介は地元の若い漁師と知り合い、その仕事を手伝い始めます。午前中は漁の仕事をして、午後はサエコと一緒に過ごすことになります。水が溜まるとサエコから緊急連絡が入り、大急ぎで陽介は、サエコの元へ戻ってきます。祖母のミツは、橋のたもとで誰かを待っているように、いつも座っています。やはりタロウの女はミツだったのです。結局ミツの家には、金の仏像はなかったのです。いや、タロウの言った宝物はミツだったのかも?ミツはタロウの死を知らされ、その日から橋のたもとに座ることはなくなります。

 

ある時、陽介はサエコが見知らぬ男(ガダルカナル・タカ)と話しているのを目撃します。男はサエコの体の秘密を知って、好き者の客に彼女を引き合わせようとしていたのでした。それを知った陽介は、男からサエコを奪い返します。フィガロ紙では「未来は女の時代」というタイトルで、「未来は女性のものであり、落ちこぼれた男は、愛する女と出会うことによって贖いが碍られるのだ。性的喜びが男女共に幸福を呼び起こし、愛の出逢いがふたりを救う――そこに希望がある。『水』の物語は輝かしい寓話へと姿を変える」と、この作品を「官能的な愛の映画」と捉えた、という。

 

以下、とりあえずシネマトゥデイより引用しておきます。

 

チェック:『うなぎ』の今村昌平監督が描く、大人のためのファンタジー。今年のカンヌ映画祭でフィナーレを飾り、観客に熱く迎えられた作品だ。主演の男女は『うなぎ』と同様、役所広司と清水美砂。“いけない秘密”をもつ不思議な女を清水が魅力的に演じ、女に溺れていく男を役所が軽妙に演じる。『にっぽん昆虫記』や『赤い殺意』など、長きにわたって“人間の性”をテーマにしてきた監督だけに、肩肘はらずに性愛を語る姿勢が心地よい。<R-15>

ストーリー:失業中の笹野(役所広司)は、人生の師と仰ぐホームレスの男の遺言を実行するために、能登半島の赤い橋のたもとにある家を訪ねる。そこで彼は“男と交わらないと体内に水がたまる”という女(清水美砂)と出会う。

 

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