武井彩佳の「歴史修正主義 ヒトラー賛美、ホロコースト否定論から法規制まで」(中公新書:2021年10月25日初版、2022年3月10日5版)を読みました。
本屋へ行くとまず目を通すのが
岩波新書と中公新書のコーナーです。
そこで目に止まったのがこれ!
しかし、僕には難しそう…。
いや~っ、奥が深い、というか根が深い。
近年、思い当たることが多々あります。
目次を書き写すだけで精一杯です。
「歴史的事実の全面的な否定を試みたり、意図的に矮小化したり、一側面のみを誇張したり、何らかの意図で歴史を書き替えようとすることを『歴史修正主義』と呼ぶ。・・・しかし、歴史を自分の都合のよいように『書き替える』ことと、過去の出来事に違った角度から光を当てて歴史を『書き直す』こととの区別は、容易ではない。」(「はじめに」より)。
歴史修正主義
ヒトラー賛美、ホロコースト否定論から法規制まで
拡散する主張、問題化する実態とは
ナチによるユダヤ人虐殺といった史実について、意図的に歴史を書き替える歴史修正主義。フランスでは反ユダヤ主義の表現、ドイツではナチ擁護として広まる。1980年代以降は、ホロコースト否定論が世界各地で噴出。独仏では法規制、英米ではアーヴィング裁判を始め司法で争われ、近年は共産主義の評価をめぐり、東欧諸国で拡大する。本書は、100年以上に及ぶ欧米の歴史修正主義の実態を追い、歴史とは何かを問う。
目次
序章 歴史学と歴史修正主義
第1章 近代以降の系譜―ドレフュス事件から第1次世界大戦後まで
1 陰謀論、マルクス主義の「修正」―イデオロギー化
2 ドイツ外務省の試み―戦争原因研究本部の設置
3 変質した歴史家―H・E・バーンズの場合
第2章 第2次世界大戦への評価―1950~60年代
1 ニュルンベルク裁判への不満―ドイツだけが悪いのか
2 ナチ、ネオナチの歴史観―ヒトラーに責任なし
3 フランスでの台頭―最初のホロコースト否定
第3章 ホロコースト否定―論の勃興―1970~90年代
1 起源と背景―反ユダヤ主義の政治的表現
2 歴史修正研究所を訴える―マーメルスタインの”挑戦”
3 ドイツ、フランスの否定論者―確信犯の素顔
4 ツンデル裁判の波紋―メディアによる拡散
第4章 ドイツ「歴史家論争―1986年の問題提起」
1 ナチズムと戦後ドイツ社会―過ぎ去ろうとしない過去
2 ホロコーストの比較可能性、歴史の政治利用
3 冷戦後の遺産―「否定」排除の社会的合意
第5章 アーヴィング裁判―「歴史画被告席に」
1 リップシュタットは何を問題としたか
2 歴史改竄の技術―R・エヴァンズによる検証
3 「悪意」への判決―歴史学に残したもの
第6章 ヨーロッパで進む法規制―何を守ろうとするのか
1 歴史否定の禁止対象とは―各国の法
2 ドイツの半世紀を超えた闘い―民衆煽動罪
3 表現の自由より優先すべきか―フランス・ゲソ法
第7章 国家が歴史を決めるのか―司法の判断と国民統合
1 全ヨーロッパ共通の記憶へ―民主主義の尺度に
2 アルメニア人虐殺問題―ジェノサイドか否か
3 主戦場となった東欧―旧共産主義体制の評価
おわりに
あとがき
主要参考文献
歴史修正主義関連年表
武井彩佳:
1971(昭和46)年愛知県生まれ。94年早稲田大学第1文学部史学科卒業。2001年早稲田大学文学研究科史学専攻博士課程修了。01~04年日本学術振興会特別研究員。04年博士(文学・早稲田大学)。早稲田大学比較法研究所助手などを経て、学習院女子大学国際文化交流学部教授。
専攻・ドイツ現代史、ホロコースト研究
著書「戦後ドイツのユダヤ人」(白水社、2005年)
「ユダヤ人財産は誰のものか―ホロコーストからパレスチナ問題へ」(白水
社、2008年)
「<和解>のリアルポリティクス―ドイツ人とユダヤ人」(みすず書房、2017年)
訳書D・ストーン著「ホロコーストスタディーズ―最新研究への手引き」(白水
社、2012年)
監訳W・ロワー「ヒトラーの娘たち―ホロコーストに加担したドイツ女性」(明石
書店、2016年)