江藤淳の「石原慎太郎・大江健三郎」(中公文庫:2021年5月25日初版発行)を読みました。江藤淳、石原慎太郎、大江健三郎の三人は、昔、よく読みました。
同世代の最大の理解者にして最強の批判者が描く、
二大作家の文学世界と人間像
盟友と好敵手
1950年代半ばの鮮烈なデビューから、”怒れる若者たち”の時期を経て、それぞれの1968年へ――。同時代随一の批評家が、盟友・石原慎太郎と好敵手・大江健三郎とに向き合い、その文学と人間像を論じた批評・エッセイを一冊にした文庫オリジナル作品集。解説:平山周吉
江藤淳の旧制湘南中学(新制湘南高校)時代の仲間だった石原慎太郎が「太陽の季節」で芥川賞を受賞したのは昭和31年(1956)の1月だった。石原は一橋大学法学部4年生だった。
江藤淳と大江健三郎が文壇に登場するのは、昭和32年(1957)である。慶大英文科在学中に「夏目漱石論」を出した江藤が「文學界」に「生きている廃墟の影」、「奴隷の思想を排す」と威勢のいい文芸評論を発表し、東大仏文科在学中の大江が「奇妙な仕事」で東大五月祭賞を受賞する。大江はその勢いのまま、昭和33年(1958)に「飼育」で芥川賞を受賞した。石原と江藤は昭和7年(1932)生まれ、大江は昭和10年(1935)生まれだから、みな20代前半だった。
大江は江藤を、最初の6ヵ月は「最良の援軍」、それ以後はずっと「最悪の敵軍」と評した。江藤・大江が二人で責任編集した全22巻の文学全集「われらの文学」の大江健三郎集(昭和40年、講談社)に大江が書いたエッセイ「私の文学」にある江藤評だ
以上、解説「若い日本」の連隊旗手たち 平山周吉より
目次
1968年
知られざる石原慎太郎
私にとって『万延元年のフットボール』は必要でない
石原慎太郎
石原慎太郎論
「肉体」という思想
「言葉」という難問
『完全な遊戯』
『日本零年』
*
顔
石原慎太郎と私
石原慎太郎のこと
『石原慎太郎文庫』によせて
偉大なアマチュア
怒れる若者たち
新しい作家達
青磁と純粋
*
シンポジウム「発言」序跋
文学・政治を超越した英雄たち
今はむかし・革新と伝統
生活の主人公になること
大江健三郎
大江健三郎の問題
自己回復と自己処罰
『死者の奢り・飼育』
『個人的な体験』
私の好敵手
大きな兎
谷崎賞の二作品
大江健三郎氏のノーベル文学賞受賞
解説「若い日本」の連隊旗手たち 平山主吉
「われらが文学17 石原慎太郎」
昭和40年12月21日発行
著者:石原慎太郎
発行所:株式会社講談社
行為と死
太陽の季節
処刑の部屋
完全な遊戯
ファンキー・ジャンプ
鴨
亀裂
「われらが文学18 大江健三郎」
昭和40年11月5日発行
著者:大江健三郎
発行所:株式会社講談社
性的人間
叫び声
セヴンティーン
戦いの今日
人間の羊
飼育
死者の奢り
奇妙な仕事
芽むしり仔撃ち
「弟」
1996年7月17日第1刷発行
著者:石原慎太郎
発行所:株式会社幻冬舎
「大江健三郎全小説全解説」
2020年9月15日第1刷発行
著者:尾崎真理子
発行所:株式会社講談社