Quantcast
Channel: とんとん・にっき
Viewing all articles
Browse latest Browse all 2506

桐野夏生の「燕は戻ってこない」を読んだ!

$
0
0

 

桐野夏生の「燕は戻ってこない」(集英社:2022年3月10日第1刷発行)を読みました。

 

またまたと思われるかもしれませんが・・・

過去に、以下のように書きました。

桐野夏生の著作は、10数年まではよく読んでました。思い出すままに著作の題名を挙げてみると、「柔らかな頬」、「グロテスク」、「残虐記」、「I'm sorry, mama」、「魂萌え」、等々。「魂萌え」で「桐野夏生はもういいや」と思ったのを覚えています。これらはすべて、16~17年以上の、ブログを始める前のことです。

そもそも僕は推理小説は好きではありません。なぜ桐野夏生を読んでいたのか、いま思うと桐野が次々と描く作品が、当時の社会とシンクロしていた、連動していたことが挙げられます。よく覚えているのは「グロテスク」で、「東電OL事件」を描いたものです。昼間は大企業の幹部社員、夜は娼婦というまったく違う顔をもっていたことが、大きくマスメディアに取り上げられました。

 

桐野の小説は、「社会とシンクロ」しているところが大きな特徴ではないかと思います。今回の「燕は・・・」も同様、「29歳、女性、独身、地方出身、非正規労働者」の主人公が、代理母出産を持ち掛けられ、それを行うというもの。その辺の心理状態を、関連する人物も含めてくまなく描いています。

 

ここ最近、桐野の小説を読んでいますが、どれもこれも長篇で分厚い。読めないかと思ったのですが、それが意外とすらすらと読めました。ここ最近の作品では「日没」は329ページ、「インドラネット」は373ページ、そして「燕は…」は445ページという長さです。これから読もうとしている「砂に埋もれる犬」はなんと494ページもあるものです。

 

さて、「代理母」となった女性の心理は、右に左に揺れ動くます。しかしそこではお金が方向を左右します。たまたまお金持ちの注文者だったからであって、注文主にお金がなかったら、この女性はこの社会の中に人知れず埋もれてしまいます。それにしてもラストは「三方一両損」、こんな終わり方があるのかと驚きました。

 

と、ここまで書いて、うまく書評が書けていないのが、我ながらもどかしい。

 

この身体こそ、文明の最後の利器。
29歳、女性、独身、地方出身、非正規労働者。
子宮・自由・尊厳を赤の他人に差し出し、東京で「代理母」となった彼女に、失うものなどあるはずがなかった――。
北海道での介護職を辞し、憧れの東京で病院事務の仕事に就くも、非正規雇用ゆえに困窮を極める29歳女性・リキ。「いい副収入になる」と同僚のテルに卵子提供を勧められ、ためらいながらもアメリカの生殖医療専門クリニック「プランテ」の日本支部に赴くと、国内では認められていない〈代理母出産〉を持ち掛けられ……。
『OUT』から25年、女性たちの困窮と憤怒を捉えつづける作家による、予言的ディストピア。


桐野夏生:
1951年金沢市生まれ。93年「顔に降りかかる雨」で江戸川乱歩賞受賞。98年『OUT』で日本推理作家協会賞、99年『柔らかな頬』で直木賞、2003年『グロテスク』で泉鏡花文学賞、04年『残虐記』で柴田錬三郎賞、05年『魂萌え!』で婦人公論文芸賞、08年『東京島』で谷崎潤一郎賞、09年『女神記』で紫式部文学賞、『ナニカアル』で10年、11年に島清恋愛文学賞と読売文学賞の二賞を受賞。2015年には紫綬褒章を受章、21年には早稲田大学坪内逍遥大賞を受賞。『バラカ』『日没』『インドラネット』『砂に埋もれる犬』など著書多数。

 

過去の関連記事:

桐野夏生の「インドラネット」を読んだ!

桐野夏生の「日没」を読んだ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 


Viewing all articles
Browse latest Browse all 2506

Trending Articles