大田記念美術館で「江戸の恋」を観てきました。
副題には「純愛、悲恋、危険な恋―江戸の恋バナ集めました」とあります。
「つれびき」について
カキツバタの咲く水辺で、身を寄せ合い一棹の三味線を引く若い男女。仲睦まじい様子が伝わってきますが、実は本作は、玄宗皇帝と楊貴妃の見立てとなっています。江戸時代、一本の横笛をともに吹く「並笛図」が2人の愛情の深さを示す画題として知られており、本作はこれをふまえて描かれました。春信の描く華奢で繊細な男女に重ねられた、玄宗皇帝と楊貴妃の古典世界。現実離れした恋人たちの姿には幻想的な雰囲気が漂います。
本作は、たおやかな人物像で一世を風靡した鈴木春信の優品の一つです。
純愛、悲恋、不倫まで――江戸の恋バナ集めました
浮世絵にはあらゆる恋の形を見ることができます。鈴木春信や喜多川歌麿ら一流絵師が描く、見る者をうっとりさせるような美男美女の恋。さらには、心中や不義密通、恋の末の殺人など、実際の衝撃的な事件を脚色した歌舞伎や浄瑠璃の愛憎劇も、浮世絵の格好の題材となっています。ドラマチックで時にドロドロした恋愛譚も、江戸の人々を惹きつけてやまなかったのです。
現代でも小説やマンガであらゆる恋が繰り広げられ、時代を象徴する恋愛ドラマも度々生まれています。恋という普遍的なテーマを通して浮世絵をご紹介する本展では、甘美な愛の語らいに心ときめかせ、危険な恋の行く末をハラハラと見守る、そんな恋愛物語を楽しむ醍醐味を味わっていただけることでしょう。そして浮世絵に描かれた恋を通して、一途な思いや嫉妬、さまざまな感情を抱いて生きた江戸の人々のリアルな姿にもぜひ触れてみてください。
大田記念美術館ホームページ
太田記念美術館 Ota Memorial Museum of Art (ukiyoe-ota-muse.jp)
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朝日新聞:2022年1月18日