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繊細でたおやかな鏑木清方の「風俗画」ワールド

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東京国立近代美術館で「没後50年鏑木清方展」が開催されます。

2022年3月18日~5月8日

 

繊細でたおやかな

鏑木清方の

「風俗画」ワールド

 

左:「浜町河岸」

清方が20代後半から足かけ6年暮らした浜町には、舞踊家の二代目藤間勘右衛門の家があった。この絵は稽古帰りの町娘という設定。背景には隅田川、対岸は深川だ。

中:「築地明石町」

第8回帝展で帝国美術院賞を受賞した代表作。佃の入江を望むハイカラな外国人居留地だった明石町に描いたのは良家の婦人。朝冷えに袖を搔き合わせているが足元は素足!

右:「新富町」

東京下町育ちの清方が、思い出深い町を美人に託して描いた三部作。花街のあった新富町には、潰し島田に結った粋な芸者の姿。背景は清方が生まれた年に新築された新富座だ。

 

20代:始まりは風俗画

 

「初冬の雨」1896(明治29)年

デビュー前に画家仲間との回覧帖に描い作品。庶民の生活に関心を持っていたことが分かる。初冬の雨と焼き芋屋から流れてくる温かなにおいというモチーフは、60年後にも「十一月の雨」にも描いている。

 

 

「一葉女史の墓」1902(明治35)年

仲間と作った展覧会に出し、画業の原点となった作品。水仙の造花を手に一葉の墓を抱く女性は「たけくらべ」の美登利。築地本願寺に一葉の墓を訪ねたときの心象をもとにした。一葉の享年と同じ二十四歳のときの作。

 

 

30代:美人画で大ブレイク

 

「薄雪」1917(大正6)年

大正4年に「はれゆく村雨」で第9回文展最高賞受賞し、一躍画壇の花形となった頃の代表作の一つ。近松門左衛門の「冥途の飛脚」に取材した心中シーン。官能的な中にも清気品が薫る一品。

 

 

40代:脱美人画と「社会画」を 目指して試行錯誤

 

「泉」1922(大正11)年

水をくむ若い農婦が風景に調和して描かれた佳品。本当に描きたいものを模索して試行錯誤していた清方は、この前年、帝展に向けて描き始めた「水汲」を完成できず出品を断念している。

 

 

50代:明治の下町を描いて新境地を拓く

 

「鰯」11937(昭和12)年頃

明治20年代の木挽町・築地界隈。佃で揚がった鰯を、振り売りの少年から買っている。すだれ越しにのぞく台所の様子をはじめ、暮らしの仔細が舌を巻くほど細やかに描かれている。

 

 

晩年:手元で楽しむ、小さき芸術

 

上:「築地川(明石町)町」

下:「築地川(作者)」

築地を囲むように流れていた掘割、築地川。界隈に育った清方が少年時代の思い出をつづった画帖は、まさに「卓上芸術」。外国人居留地だった「明石町」には紅毛碧眼の少女が快活に遊んでいる。「作者」に描かれた少年は、木挽町1丁目11番地に暮らした頃の清方。庭の青ブドウを見上げる表情、居宅のたたずまいも小ざっぱりとして好もしい。

 

 

 

「日経おとなのOF」

絶対に見逃せない2022年美術展

 

「東京国立近代美術館」ホームページ

https://www.momat.go.jp/am/

 

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