小川洋子の「そこに工場があるかぎり」(集英社:2021年1月31日第1刷発行)を読みました。
上の画像を見ればわかる通り、本の帯には大きく「愛はとまらない」とあり、「日本のものづくりの愛しさと本質を作家の目で伝える」とあります。そして「ベストセラー『科学の扉をノックする』に続く、小川洋子さんの工場見学エッセイ」とあります。
そしてイラストがカワイイ。そっくりそのまま、これは誰が見ても小川洋子以外の何ものでもありません。ということで、本屋で見つけて、ちょっとだけ立ち読みして、なにしろあとがきが長い、そこでも工場愛がさく裂、帰ってからすぐアマゾンで注文しました。いや、面白い、面白い、ほぼ一気読みでした。
もちろん、「科学の扉をノックする」も、アマゾンで注文しました。こちらもざっと読みました。これがまた面白いが、ここでは書きません。
巻頭の「細穴の奥は深い」は、こうして始まります。
東大阪出身の人が、何気なくこんなふうに言うのを聞いたことがある。「雨が降ると、町工場から漏れた油で、道が虹みたいに七色にひかるんですよ」 いかにも懐かしく、美しい記憶をかみしめている口調が印象に残った。以来、東大阪の地名を耳にするたび、少年が道端にしゃがみ込み、小さな水たまりの中できらめく虹を、一心に見つめている光景を思い浮かべるようになった。
小説家の小川洋子らしいエピソードだと思いました。子供の頃、僕もよく見た光景です。全編この調子、小川洋子の工場愛満載の本です。
目次
細穴の奥は深い
お菓子と秘密。その魅惑的な世界
丘の上でボートを作る
手の体温を伝える
瞬間の想像力
身を削り奉仕する
あとがき
この本で訪れた工場
この本で訪れた工場は、以下の6つの工場
細穴の奥は深い
株式会社エストロラボ(屋号細穴屋)
お菓子と秘密。その魅惑的な世界
グリコピア神戸
丘の上でボートを作る
桑野造船株式会社
手の体温を伝える
五十畑工業株式会社
瞬間の想像力
山口硝子製作所
身を削り奉仕する
北星鉛筆株式会社
小川洋子:
1962年、岡山市生まれ。早稲田大学第一文学部卒。88年「揚羽蝶が壊れる時」で海燕新人文学賞を受賞。91年「妊娠カレンダー」で芥川賞受賞。2004年「博士の愛した数式」で読売文学賞、本屋大賞、同年「ブラフマンの埋葬」で泉鏡花文学賞を受賞。06年「ミーナの行進」で谷崎潤一郎賞受賞。07年フランス芸術文化勲章シュバリエ受賞。13年「ことり」で芸術選奨文部科学大臣賞受賞。20年「小箱」で野間文芸賞を受賞。他に「薬指の標本」「琥珀のまたたき」「不時着する流星たち」「口笛の上手な白雪姫」など多数の小説、エッセイがある。海外での評価も高い。
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