主演の東出昌大、あまりにも背が高すぎるので、ウィキペディアで調べてみると、身長189センチだという。2006年から2011年までパリ・コレクションに出演、ヨウジヤマモトなどのモデルとして活躍したというから、なるほどと思う。過去に「菊とギロチン」や「寝ても覚めても」では、それほど高いとは思いませんでしたが。家の中のシーンなど、他の出演者と比べても、違和感は隠せません。
最初の佐藤泰志作品、「海炭市叙景」は映画が先でしたが、その他は(たぶん)小説を先に読んでから映画を観ています。やはり佐藤泰志という小説家の人間性に、大きく惹かれるところがあるからでしょう。ただ、今回の「草の響き」は、本人の実人生が重ねてあり、かなり辛い部分も数多くあります。
年譜を見ると、以下のようにあります。
1977年(28歳)
精神の不調に悩み、3月、上目黒診療所で自律神経失調症の診断を受け、通院をはじめる。以後、死ぬまでずっと精神安定剤を服用。療法としてのエアロビクス体操とランニングを始める。1日、10キロ以上走る。
他の作品と違って、佐藤の実人生と重なっていることがよくわかります。
佐藤泰志の小説、五度目の映画化。
函館の街を黙々と走り続ける男の、生の輝きを描きだす。
心に失調をきたし、妻とふたりで故郷函館へ戻ってきた和雄。病院の精神科を訪れた彼は、医師に勧められるまま、治療のため街を走り始める。雨の日も、真夏の日も、ひたすら同じ道を走り、記録をつける。そのくりかえしのなかで、和雄の心はやがて平穏を見出していく。そんななか、彼は路上で出会った若者たちとふしぎな交流を持ち始めるが—。数々の映画賞を受賞し話題を呼んだ『きみの鳥はうたえる』(18)に続き、佐藤泰志の小説、五度目の映画化であり、シネマアイリス企画・プロデュース作品としてもこれが五作目となる。原作は、佐藤自身が自律神経失調症を患い、療法として始めたランニング経験をもとに書いた短編小説。1979年に発表された原作を現代に置き換え、光あふれる函館の風景のなかで映像化したのは、『空の瞳とカタツムリ』(18)『なにもこわいことはない』(13)の斎藤久志。どうしようもない孤独を抱えた人々の葛藤を静かな気迫で捉えた本作。何かを追い求めるように黙々と走り続ける男の姿を通して、死に引き寄せながらも懸命に生きようとする人間の生の輝きをまざまざと描きだす。
以下、MOVIE WALKERによる。
解説:
「海炭市叙景」「きみの鳥はうたえる」から続き、函館の映画館シネマアイリスが製作を手がける佐藤泰志原作映画化第5弾。心に失調をきたし妻と函館に戻った和雄は、医師の勧めで毎日街を走ることに。やがて路上で出会った若者たちと交流を持ち始めるが……。監督は「空の瞳とカタツムリ」の斎藤久志。走ることで徐々に再生する和雄を「寝ても覚めても」の東出昌大が、夫を理解しようと努める妻・純子を「みをつくし料理帖」の奈緒が演じる。函館シネマアイリス25 周年記念作品。
あらすじ:
東京で出版社に勤めていた工藤和雄(東出昌大)は、次第に心に失調をきたし、妻の工藤純子(奈緒)と共に故郷の函館に戻る。そして昔からの友人で今は高校の英語教師として働く佐久間研二(大東駿介)に連れられ、病院の精神科を受診。医師の宇野(室井滋)は自律神経失調症と診断、和雄に運動療法として毎日ランニングをするよう指示した。和雄は医師の指示に従い、仕事からしばらく離れることにし、毎日同じ場所を走ることに。徐々に走る距離は伸びていくが、走る以外は、家事をすることも、純子を気遣うことも何もできない。純子は、函館山のロープウェイで案内スタッフとして働き始めた。東京出身の彼女にとって、函館で頼れるのは夫とその両親だけ。黙々と走る夫と、愛犬ニコとともにどうにか生活を続ける。一方スケボーで街を走る小泉彰(Kaya)は、札幌から函館に引っ越してきた。転校したばかりで孤立気味だったが、同じバスケットボール部の同級生から、夏になったら海水浴場の近くにある巨大な岩から海へダイビングしようと誘われる。誘いに乗る彰だったが、実は泳げず、市民プールで練習することに。そこで、目を見張るような泳ぎをする高田弘斗(林裕太)と出会う。弘斗は以前中学でいじめられ、不登校になった経験があるらしい。弘斗は彰に泳ぎを教える代わりにスケボーを教えてほしいと言い、やがて弘斗の姉・恵美(三根有葵)を交え人工島の緑の島の広場で遊ぶようになる。広場で花火をしていたところ、その周りを走る和雄に気付き、彰と弘斗は追いかけるように走り出した。すぐに脱落した弘斗をよそに、必死で和雄と並んで走り続ける彰。それ以来3人は時々一緒に走るようになり……。
映画『草の響き
映画『草の響き』公式サイト (kusanohibiki.com)
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「きみの鳥はうたえる」
(「草の響き」所収)
河出文庫
2011年5月20日初版発行
著者:佐藤泰志
発行所:株式会社河出書房新社
「佐藤泰志―生の輝きを求め続けて作家」
2014年2月28日初版発行
監修:福間健二
発行所:河出書房新社
過去の映画化作品は、以下の4本です。
「海炭市叙景」
「そこのみにて光輝く」
「オーバー・フェンス」
「きみの鳥はうたえる」
朝日新聞:2021年10月8日