山種美術館で「浮世絵・江戸絵画名品選―写楽・北斎から琳派まで―」の、後期を観てきました。展示は、前期と後期に分かれて展示されていました。
山種美術館で「浮世絵・江戸絵画名品選―写楽・北斎から琳派まで―」を観た!
今回の目玉はこれ!
広重の代表作《東海道五拾三次》全点を一挙公開!
当館所蔵の保永堂版《東海道五拾三次》は、最初期の摺りの特徴を持つ図や、題字を記した扉も含まれ、江戸時代以来セットで伝わる貴重な全56枚の揃いです。前・後期に分け、全点を展示します。
広重の「東海道五拾三次」は数が多いこともあり、ここでは2回に分けて、以下に載せておきます。
歌川広重「東海道五拾三次」1833-36(天保4-7)年頃
広重は生涯に大小合わせて約20種もの東海道シリーズを描いているが、天保4(1833)年頃から2、3年かけて、保永堂竹内孫八から刊行されたこのシリーズが、そのなかで最初のものである。広重の東海道シリーズ中のみならず、葛飾北斎や歌川国芳ら、他の絵師の手がけたすべての東海道物の中でも、もっともすぐれた出来映えを見せている。今日、「保永堂版」の通称で、浮世絵風景画の中で北斎の「冨嶽三十六景」と並ぶ知名度を誇っている。
東海道の各宿場やその近郊を、季節の違いや多彩な天候描き分けた情趣性 豊かな表現は、浮世絵風景画に新生面を開いている。また、人物描写に関しても、豊かな風俗描写と諧謔味ある仕草・表情が大きな魅力となっている。
人気作であっただけに摺られた枚数も膨大で、同じ図柄でも摺りのヴァリエーションが多様である。全図完成の後、画帖に仕立て売り出されたものもあったが、古美術市場で流通する過程で、ほとんどの画帖はばらされてしまっている。そのため、もともと揃いで売り出されたセットがそのまま残る例は少ないが、山種美術館の一揃いは題字を記した扉が付属することから、もと画帖仕立のものがまとまって残った、数少ないものと考えられる。今日、初摺とされる摺りの特徴を持つ図が数多く含まれ、保永堂版の美的特質を考察する上で重要な揃いとして注目されている。
(「山種コレクション浮世絵名品集」より)
東海道五拾三次 扉
日本橋・朝之景
品川・日之出
川崎・六郷渡舟
神奈川・台之景
保土ヶ谷・新町橋
戸塚・元町別道
藤沢・遊行寺
平塚・縄手道
大磯・虎ケ雨
小田原・酒匂川
箱根・湖水図
三島・朝霧
沼津・黄昏図
原・朝之富士
吉原・左富士
蒲原・夜之雪
由井・薩埵嶺
奥津・興津川
江尻・三保遠望
府中・安倍川
丸子・名物茶店
岡部・宇津之山
藤枝・人馬継立
嶋田・大井川駿岸
金谷・大井川遠岸
日坂・佐夜ノ中山
掛川・秋葉山遠望
以下、続く
歌川広重(初代) 1797-1858(寛政9-安政5)
江戸末期の浮世絵師。幕府の定同心安藤家に生まれたため、安藤広重とも呼ばれている。歌川豊広に学び、文化末頃より作画活動を開始し、役者絵、武者絵などの作例を残す。文政期はおもに美人画に筆を執ったが、天保(1830-44)初期の川口正蔵版「東都名所」などで名所絵の資質を開花させ、同4年頃に刊行を開始した保永堂版「東海道五十三次」の成功で人気を確立した。天保期の「近江八景」「江戸近郊八景」「木曽海道六拾九次」、嘉永6-安政3(1853-56)年の「六十余州名所図会」、晩年にあたる安政(1854-60)期の「名所江戸百景」など、数多くの名所絵シリーズを刊行し、名所絵の第一人者として活躍した。
(「山種コレクション浮世絵名品集」より)
山種コレクション
浮世絵 名品集
2016(平成28)年9月3日発行
監修・執筆:大久保純一(国立歴史民俗博物館教授)
編集:山種美術館学芸部
発行:山種絵美術館©2016
山種コレクション
浮世絵 江戸絵画
監修:大久保純一(国立歴史民俗博物館教授)
山下裕二(山種美術館顧問、明治学院大学教授)
執筆:大久保純一
山下裕二
山崎妙子(山種美術館館長)
高橋美奈子(山t根美術館学芸部長)
櫛淵豊子(山種美術館学芸員)
編集:山種美術館学芸部
発行:山種絵美術館©2010