新宿武蔵野館で、デレク・ツァン監督の「少年の君」を観てきました。
映画評論家の高崎俊夫は、以下のように書いています。
そんな彼女が警察の取調室でシャオベイと対峙し、かすかに微笑みを交わす場面は、「離愁」(73)で、ジャン=ルイ・トランティニャンとロミー・シュナイダーがまなざしを交錯させたラストシーンを想起させるほど、すばらしい。
同じような感想を抱いた人もいるんですね。「離愁」は僕が観た映画の中で、最高傑作だと思っている映画のひとつです。DVDも持っています。あまりにも素晴らしすぎて、いまだにブログに書いていません。いわゆる「ストップモーション」で終わるという、映画史上語り継がれているラストシーンです。が、しかし、1973年の映画です。時代はそれから半世紀近く過ぎていて、世の中はより複雑になっています。
イー・ヤンチェンシーは、チャン・イーモウの「サンザシの樹の下で」でデビューした女優です。公開が2010年ですから、13年経ったということです。現代中国における受験戦争と陰湿ないじめの問題がテーマとなっています。若い監督らしく、暴力シーンも多く、劇画タッチの描きかたなので、若い人には受けるかもしれませんが、僕にはちょっと行き過ぎではないかと思うシーンが数多く出てきます。
以下、KINENOTEによる。
解説:
壮絶ないじめ、苛烈な受験戦争、母子家庭や子どもの貧困など過酷な社会問題を描き、香港のアカデミー賞と言われる香港電影金像奨で作品賞・監督賞・主演女優賞を含む8冠を獲得、第93回アカデミー賞国際長篇映画賞にノミネートされた中国・香港合作の青春映画。中国では、ほとんど宣伝がないまま公開されたにもかかわらず、口コミで250億円の興行収入となる大ヒットを記録、青春映画ジャンルで歴代1位を樹立した。監督は「インファナル・アフェア」シリーズで知られる俳優・監督・プロデュサーのエリック・ツァンの息子デレク・ツァン。2001年に俳優デビューし、2010年にジミー・ワンと共同監督した「恋人のディスクール」(大阪アジアン映画祭2011グランプリ)で監督業に進出した。中国で「13億人の妹」の愛称で親しまれる人気女優チョウ・ドンユイと、国民的アイドルにして本作で演技の実力を見せつけたイー・ヤンチェンシーを主演に起用し、内向的な優等生とストリートに生きる不良少年の極限の孤独と純真な愛をヒリヒリと描きあげている。
あらすじ:
母子家庭で進学校に通う高校3年生のチェン・ニェンは、大学進学だけを夢見て、全国統一入学試験の勉強に集中していた。そんななか、同級生の女子がクラスメートのいじめを苦に校舎から飛び降りてしまう。少女の死体にまで無神経にスマホのカメラを向ける生徒たち。その異様な光景に耐えきれなくなったチェン・ニェンは、遺体にそっと自分の上着をかける。だが、そのことがきっかけで、激しいいじめの矛先はチェン・ニェンへと向かうようになる。彼女の学費のためと犯罪まがいの商売に手を出している母親以外、頼る者もないチェン・ニェン。同級生たちの悪意が増幅するなか、下校途中の彼女は集団暴行を受けている少年を目撃し、とっさの判断で彼を窮地から救い出す。シャオベイというその少年もまた、身寄りもなくストリートで過酷な日々を送っていた。二人の孤独な魂は、いつしか互いを呼び合うようになる。
映画「少年の君」予告編(出演:チョウ・ドンユイ、イー・ヤンチェンシー) - YouTube
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