平野啓一郎の「本心」(文芸春秋:2021年5月25日第1刷発行)を読みました。
平野啓一郎の著作は、初期の芥川賞受賞作以来、しばらくは読んでいましたが、ある時からパタッと読まなくなりました。しかし、大江健三郎関連のシンポジウムに出て、また読むようになりました。その辺の経緯は過去のブログに書いてあります。それが「マチネの終わりに」とか「ある男」です。そして最近では、100分de名著の「金閣寺」の解説でした。三島由紀夫の再来とまで言われた平野、これはもう絶品解説?でした。そして、「本心」となるわけです。が、これはカズオ・イシグロの「クララとお日さま」と通底しているようで、これも時代なのかなと思いました。
愛する人の本当の心を、
あなたは知っていますか?
「本心」の特設サイトには、以下のようにあります。
『本心』特設サイト|平野啓一郎 (k-hirano.com)
「心配だっただけでなく、母は本当は、僕を恥じていたのではなかったか?」ロスジェネ世代に生まれ、シングルマザーとして生きてきた母が、生涯隠し続けた事実とは──急逝した母を、AI/VR技術で再生させた青年が経験する魂の遍歴。
・四半世紀後の日本を舞台に、愛と幸福の真実を問いかける、分人主義の最先端。
・ミステリー的な手法を使いながらも、「死の自己決定」「貧困」「社会の分断」といった、現代人がこれから直面する課題を浮き彫りにし、愛と幸福の真実を問いかける平野文学の到達点。
・読書の醍醐味を味合わせてくれる本格小説。
また、著者メッセージとして以下のようにあります。
『本心』特設サイト|平野啓一郎 (k-hirano.com)
2040年代を生きる、母を亡くした一人の青年の物語です。彼はAIによって再現された〈母〉によって、その悲しみと孤独の慰めを得ようとします。母の情報を学習したそのVF(ヴァーチャル・フィギュア)が、「自由死」を願い続けた母の「本心」を語ることを、恐れつつ期待しながら。――やがて、母の死後、初めて知ったその人間関係が、青年の心に大きな変化をもたらしてゆきます。……
未来について考えることは、気候変動や人口減少など、現代の喫緊の課題になっています。AIやロボットが普及してゆくと、一体何の職業が残るのか?
しかし、最も重要なことは、その時代の人間の「心」です。私たちは一体、何を感じ、考えながら生きてゆくのか? そして、「本心」について考えることは、社会全体について考えることに直結します。なぜなら、私たちがある社会システムを「是」とするのは、究極的には、それを「本心」から受け容れ、肯定している場合だからです。ところで、「本心」とは何なのでしょうか?
テーマは、「最愛の人の他者性」です。
『マチネの終わりに』、『ある男』に引き続き、愛と分人主義の物語であり、その最先端です。
平野啓一郎
平野啓一郎:
1975年愛知県蒲郡市生。北九州市出身。京都大学法学部卒。
1999年在学中に文芸誌「新潮」に投稿した『日蝕』により第120回芥川賞を受賞。40万部のベストセラーとなる。
以後、一作毎に変化する多彩なスタイルで、数々の作品を発表し、各国で翻訳紹介されている。2004年には、文化庁の「文化交流使」として一年間、パリに滞在した。
美術、音楽にも造詣が深く、日本経済新聞の「アートレビュー」欄を担当(2009年~2016年)するなど、幅広いジャンルで批評を執筆。2014年には、国立西洋美術館のゲスト・キュレーターとして「非日常からの呼び声 平野啓一郎が選ぶ西洋美術の名品」展を開催した。同年、フランス芸術文化勲章シュヴァリエを受章。
また、各ジャンルのアーティストとのコラボレーションも積極的に行っている。
著書に、小説『葬送』、『滴り落ちる時計たちの波紋』、『決壊』、『ドーン』、『空白を満たしなさい』、『透明な迷宮』、『マチネの終わりに』、『ある男』等、エッセイ・対談集に『私とは何か 「個人」から「分人」へ』、『「生命力」の行方~変わりゆく世界と分人主義』、『考える葦』、『「カッコいい」とは何か』等がある。
2019年に映画化された『マチネの終わりに』は、現在、累計58万部超のロングセラーとなっている。
長編英訳一作目となった『ある男』の英訳『A MAN』に続き、『マチネの終わりに』英訳『At the End of the Matinee』も、2021年4月に刊行。
朝日新聞:2021年6月2日
過去の関連記事:
ブログを始める前に、以下の本を読んでいます。
「一月物語」、「高瀬川」、「日蝕」、「葬送」など。