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柳美里の「JR高田馬場駅戸山口」を読んだ!

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柳美里の「JR高田馬場駅戸山口」(河出文庫:2012年12月20日初版発行、2021年3月20日新装版初版発行)を読みました。

 

柴崎友香の「千の扉」を読んだとき、以下のように書きました。

実は僕は、大学へ通う一時期、戸山ハイツに下宿していました。広大な団地の中心にある標高44mの山も、何度か登ったことがあります。もっとも高層住宅に建て替わった戸山ハイツではなく、木造平屋が建ち並んでいた戸山ハイツですが。小説の一方の主人公、日野勝男が団地に入居したのが1970年、それより前のことです。数年前のことですが、戸山ハイツから早稲田の方へと通り抜けたことを思い出しました。

年末恒例の朝日新聞の「書評委員が選ぶ今年の3冊」(2017年12月24日)に、原武史は、次のように述べています。

新宿区の戸山ハイツとおぼしき団地を舞台に、造成される前からここに住み、団地の黄金時代を経て高齢化により過疎化するまでの時代を見つめてきた男性の生涯を通して、戦後日本の光と影を浮かび上がらせようとする小説。団地小説の白眉だと思う。

柴崎友香の「千の扉」を読んだ!

 

全米図書賞受賞のベストセラー『JR上野駅公園口』と同じ「山手線シリーズ」として書かれた河出文庫『グッドバイ・ママ』を新装版で刊行。居場所のない「一人の女」に寄り添う傑作。
「少しだけ眠ろう……悲しみに耐えるために」
夫は単身赴任中で、子どもと二人暮らしの母・ゆみ。幼稚園や自治会との確執、日々膨らむ夫への疑念、そして社会からの孤立。その思いは、「あの日」を境にエスカレートしてゆく。絶望の果てに「一人の女」がくだした決断とは……。

柳美里が「居場所のない全ての人へ」贈る傑作長編。
全米図書賞(翻訳文学部門)受賞作&ベストセラー『JR上野駅公園口』(「TOKYO UENO STATION」モーガン・ジャイルズ訳)の連作「山手線シリーズ」。
*解説=和合亮一
*河出文庫『グッドバイ・ママ』の新装・改題版。著者による「新装版あとがき」収録。

 

「解説 円環の中に閉じ込められないために」と題して、詩人の和合亮一さんは、以下のように書いています。

この物語において女が抱えている孤独感については終始、胸がつまりそうになる。夫から近所から、あるいは息子の幼稚園の母親たちなどから疎外され続けている。そもそも女には悪意などほとんどないのだが、息子への愛情が強まるほどに、周囲に敵意と反感とを持たずにはいられなくなる。女に理解を示してくれる人は夫も含めて誰も居ない。精神の隘路へと女は次々に追い込まれていく。

息子が幼稚園で正座させられていることへの反発や、戦中に人体実験場があったところに埋められている朝鮮人の骨の事実への執着や、ゴミをめぐる近所の人々とのいざこざ、別居している夫との離婚など…。絶え間なく女の頭を様々なリアルがめぐるが答えは無い。あたかも終わらない山手線の列車の行く先のようだ。女は時折、自分に問う。「ゴト、ゴト、ゴト…この円環の中に閉じ込められたいの? おお! 二重の鎖をかけられて縛られた虜よ!」

(主人公の女は)セシウムやストロンチウムなどの放射能から、我が子をどう守ったらいいのかを心配してヒステリックに独り言を続ける姿があるが、ここに書かれた意味の闇の深さに苦しくなる。これは多かれ少なかれ、原発が爆発してからたくさんの母親が、人々が抱えている恐怖である。私たちはみな「縛られた虜」なのであろうか。

柳美里:
1968年生。高校中退後「東京キッドブラザース」入団。86年

ユニット「青春五月党」結成。93年『魚の祭』で岸田戯曲賞、97年『家族シネマ』で芥川賞、2020年『JR上野駅公園口』で全米図書賞受賞。

 

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