中島京子の「ムーン・ライト・イン」(角川書店:2021年3月2日初版発行)を読みました。山田洋次監督が「小さいおうち」がテレビで再放映していたので、それを観たのがきっかけでした。中島京子の作品は、デビュー作「FUTON」を読んだとき、驚いた記憶があります。
本の帯には、以下のようにあります。
「小さいおうち」「長いお別れ」の著者が贈る
不思議な再生の物語。
だいじょうぶ。
何かにつまずいた時、
あなたを待っている場所がある。
中島京子の「長いお別れ」、文庫本なので購入してあります。
文庫本の、川本三郎の解説には、以下のようにあります。
「認知症になってしまった父親をめぐり、三人の娘、母親(妻)、孫たちが、それぞれに戸惑い、混乱しながらも、それでもなんとか試練を乗り越えてゆく。読つらいしょうせつ小説ではあるが、同時に、父親のことを気づかう家族それぞれの気持ちが伝わってきて、読む者を暖かい気持ちにさせる」。
「長いお別れ」は、蒼井優、竹内結子、松原智恵子、山崎努らで映画化されています。2019年12月6日公開されました。
最新作「ムーン・ライト・イン」は、どんな内容なのか?
職を失い、自転車旅行の最中に雨に降られた青年・栗田拓海は、年季の入った一軒の建物を訪れる。穏やかな老人がかつてペンションを営んでいた「ムーンライト・イン」には、年代がバラバラの三人の女性が、それぞれ事情を抱えて過ごしていた。拓海は頼まれた屋根の修理中に足を怪我してしまい、治るまでそこにとどまることになるが――。
人生の曲がり角、遅れてやってきた夏休みのような時間に巡り合った男女の、奇妙な共同生活が始まる。
雨に降られて訪れた栗田拓海が主人公かと思ったらそうでもなく、ペンションのオーナー虹さん、その古い恋人・かおるさん、その付き人・塔子さん、フィリピン娘、マリー・ジョイ、出てくる人それぞれが同じように分担して、物語を構成していきます。拓海がマリー・ジョイに恋心を打ち明けられないでもたもたするところや、かおるさんの息子が帰国するというのであたふたするとかも、結局は尻切れトンボに終わります。ペンションの「ムーン・ライト・イン」が、過去のあるみんなの心のふるさとになっていくというのが筋書なんでしょうが、僕にはどうもすっきりしません。
中島京子:
1964年東京都生まれ。2003年『FUTON』で小説家デビュー。10年『小さいおうち』で直木賞、15年『かたづの!』で河合隼雄物語賞、歴史時代作家クラブ賞作品賞、柴田錬三郎賞、同年『長いお別れ』で中央公論文芸賞、16年日本医療小説大賞、20年『夢見る帝国図書館』で紫式部文学賞を受賞した
過去の関連記事:
中島京子の「夢見る帝国図書館」を読んだ!
中島京子原作、山田洋次監督の「小さいおうち」を観た!
中島京子の「小さいおうち」を読んだ!