世田谷美術館で「アイノとアルヴァ 二人のアアルト フィンランド―建築・デザインの神話」を観てきました。観に行ったのはオープン二日目、小雨降る肌寒い日でした。ブログに書こうと思って画像などは用意していたのですが、ブログにログインできなくて、載せるのが遅れてしまいました。
最近のアアルト展、神奈川県立近代美術館葉山館の「アルヴァ・アアルト―もうひとつの自然」あたりから、急速に家具に多くを割くようになってきました。アアルトといえば、家具やインテリアももちろんやりますが、基本は建築です。その建築を紹介する割合が少なくなっているのが残念です。注目されることの少なかったアイノの仕事に光を当てるのは必要ですが、どうしても家具寄りになってしまっています。理由があるのはうすうすは分かっているのですが、たぶん資料や画像の出所が決まっているためでしょう。つまりは「アアルト財団」からの情報ということです。武藤さんが、二川さんの写真が素晴らしいのは、アアルト事務所から出る写真ではなく、独自の視点で撮っているからだと言ってます。葉山館も、ステーションギャラリーも、そしてギャラリーエークワッドも、展示も図録もみんな同じようで、独自の展示ポリシーが出し切れていないのが残念です。
敬愛しあう パートナーとして25年の月日をともに歩んだアアルト夫妻。注目されることの少なかったアイノの仕事に光をあてつつ、時代を超えて愛されるアアルト建築とデザインの本質を見つめ直す。
僕は、アアルトの建築は、ただ一つだけ、MITの学生寮、ベーカーハウスを観ています。1972年の夏、大学の研究室の仲間といった21日間のアメリカ建築旅行でした。ちょうど夏休みだったので、人はほとんどいなくて、食堂も椅子やテーブルが積み重なっていて、残念ながらあまりいい印象は残っていません。
「その1」は、主として家具・インテリアを載せました。
「その2」は、主として建築を載せます。
パイミオのサナトリウム、パイミオ、1929-33年
病棟外観、2014年撮影
病棟最上階のテラス、2014年撮影
上:病棟の階段、2014年撮影
下:職員食堂、2014年撮影
世田谷美術館に展示された模型
ベイカーハウス学生寮、ケンブリッジ(アメリカ)、1946-49年
ベイカーハウス、学生食堂のある南側外観、1949年撮影
ベイカーハウス学生寮、南側立面の初期のスケッチ
個室の家具配置図、アイノ・アアルト、1947-48年
ヴィープリの図書館、北側外観
ヴィープリの図書館の講堂、1935年撮影
ヴィープリの図書館、図書エリア,1935年撮影
ニューヨーク万国博覧会フィンランド館のうねる壁、1939年撮影
フィンランド館の1階平面のデザインスケッチ、製品ディスプレイ
世田谷美術館大ホール
ニューヨーク万国博覧会フィンランド館壁面模型
マイレア邸の配置図、1938年
隅に暖炉があるリビングルーム、2001年撮影
メインエントランスのある南側外観、2003年撮影
1階平面図、1938年
メインエントランス、1981年撮影
マイレア邸のリビングルーム、2001年撮影
アアルトハウスのリビングルーム、2003年撮影
アアルトハウスの中庭側南西立面図、1935年
アアルトハウス、住居部分中庭側外観、2016年撮影
事務所棟中庭側外観、2016年撮影
僕が見た「MITベーカーハウス」1972年夏
「アイノとアルヴァ 二人のアアルト
フィンランド―建築・デザインの神話」
アイノ・マルシオ(1894-1949)が、まだ無名の建築家・アルヴァ・アアルト(1898-1976)の事務所を訪ねたのは1924年のことでした。アイノはそこで働きはじめ、ふたりは半年後に結婚します。アイノがパートナーになったことで、アルヴァに「暮らしを大切にする」という視点が生まれ、使いやすさや心地よさを重視した空間には、優しさと柔らかさが生まれます。
やがて国際的潮流となった合理主義的なモダニズム建築の流れのなかでも、ヒューマニズムと自然主義の共存が特徴として語られるアアルト建築は、独自の立ち位置を築きました。実用性や機能性を重視するモダニズムの理論は、ふたりのヴィジョンとも重なるものでしたが、夫妻は自国フィンランドの環境特性をふまえ、自然から感受した要素をモティーフとしたデザインを通じ、彼らなりの答えを探求していきます。アイノは54歳という若さで他界しますが、ふたりが協働した25年間は、かけがえのない創造の時間となりました。
互いの才能を認めあい、影響しあい、補完しあいながら作品をつくり続けたアアルト夫妻。本展は、これまで注目される機会の少なかったアイノの仕事にも着目することで、アアルト建築とデザインの本質と魅力を見つめ直し、新たな価値と創造性を見出そうとするものです。2020年にギャラリーエークワッド、竹中大工道具館にて開催した先行企画で展示された作品資料も網羅するほか、長年遺族のもとで保管されてきた初公開資料などもご紹介します。
「世田谷美術館」ホームページ
過去の関連記事:
東京ステーションギャラリーで「アルヴァ・アアルト もうひとつの自然」を観た!
神奈川県立近代美術館葉山館で「アルヴァ・アアルト―もうひとつの自然」を観た!
小泉隆「アルヴァ・アールトの建築 エレメント&ディテール」を読んだ!
ギャラリーエークワッド「アイノ・アールト アルヴァ・アールトと歩んだ25年」を観た!
「アイノとアルヴァ 二人のアアルト」
展覧会図録(カバー付き)
2021年3月15日初版第1刷発行
編:アルヴァ・アアルト財団
ギャラリーエークワッド
発行所:株式会社図書刊行会
「アイノとアルヴァ 二人のアアルト」
展覧会図録(カバーなし)
AINO AALT Actrchitect and Designer
―Alvar Aaltoと共に歩んだ25年―
2016年8月12日(金)-2016年10月31日(月)
主催:公益財団法人竹中育英会
共催:公益財団法人ギャラリーエークワッド
「アルヴァ・アアルト会うヴァ・アアルト―もうひとつの自然」
神奈川県立近代美術館展覧会図録
2018年10月25日初版第1刷発行
編集:和田菜穂子
(建築史家、国際巡回展日本展担当コーディネーター)
発行所:株式会社図書刊行会
以下、手持ちのアアルトの本(順不同)
SD選書34
「アルヴァ・アアルト」
発行:昭和44年3月5日第1版
著者:武藤章
発行所:鹿島研究所出版会
「ALVAR AALTO」
Band Ⅱ 1963-1970
Les Editions d’Architecture Artemis Zurich
「ALVAR AALTO作品集」
第1巻 第2巻 第3巻
発行者:二川幸夫
発行:A.D.A.EDITA Tokyo Co.Ltd.
「アルヴァー・アールト 1898-1976」
―20世紀モダニズムの人間主義
展覧会カタログ
編集:セゾン美術館/デルファイ研究所
発行・発売:デルファイ研究所
発行日:1998年12月15日
「アルヴァ・アールトの建築」
エレメント&ディテール
2018年3月10日初版第1刷発行
著者:小泉隆
発行所:株式会社学芸出版社
建築巡礼18
「アールトとフィンランド」
―北の風土と近代建築―
平成2年9月30日発行
著作者:伊藤大介
発行所:丸善株式会社
GAグローバル・アーキテクチュアNo16
「アルヴァ・アアルト」
イマトラの教会
セイナヨキ・シティ・センター
1972年6月15日発行
企画・撮影:二川幸夫
文・訳編:武藤章
発行:A.D.A.EDITA Tokyo Co.Ltd.
GAグローバル・アーキテクチュアNo10
「アルヴァ・アアルト」
ルイ・カレ邸 1956-59
1971年11月1日発行
企画・撮影:二川幸夫
文・訳編:武藤章
発行:A.D.A.EDITA Tokyo Co.Ltd.
GAグローバル・アーキテクチュアNo24
「アルヴァ・アアルト」
セイナッツアロの役場 1950-1952
カンサネラケライトス 1952-1956
1973年8月10日発行
企画・編集:二川幸夫
文:武藤章
発行:A.D.A.EDITA Tokyo Co.Ltd.
現代建築家シリーズ
「アルヴァ・アアルト」
1969年8月10再版
写真:二川幸夫
文:芦原義信・武藤章
発行所:株式会社美術出版社