佐藤直樹の「東京藝術大学で教わる西洋美術の見かた」(世界文化社:2021年2月10日初版第1刷発行)を読みました。
著者は、東京藝術大学で美術史を専攻する「芸術学科」で教鞭をとる現役の東京藝術大学准教授です。
この本は、ルネサンスの手本となった「古典古代」を紹介し、ルネサンスから説き起こし、初期ネーデルランド絵画のファン・エイク兄弟、ラファエッロやデューラーはもちろん、レオナルドやカラヴァッジョ、等々。そして最新の情報であるシャルフベックやハンマースホイまで取り上げられています。
通史的でなく、偏った作品選択でもなく、個々の作品に対する具体的なアプローチが学べるように書かれています。西洋美術の最大の特徴が「ルネサンス」にあること、従ってルネサンスを理解することなしには西洋美術史の本質をつかむことはできないということで、第2回から「ルネサンス」で始まります。15回の講義形式で構成されているので、西洋美術の鑑識眼が鍛えられること間違いなしの本です。
本の帯には、以下のメッセージが…。
これが藝大の美術史だ。
作品のメッセージを読み解いて
鑑賞眼を鍛える!
バランスよく作品を知るより、
個々の作品に対する
具体的なアプローチを学んだほうが、
実は美術鑑賞のコツを得るには、
手っ取り早いのです。
(「はじめに」より)
内容
これが藝大の美術史だ。作品のメッセージを読み解いて鑑賞眼を鍛える!
本書は、東京藝術大学で実際に行われている講義に基づいて作られた西洋美術の入門書です。通史的に作品を概説するのではなく、著者の視点で選んだ個々の作品について、そこに込められたメッセージをわかりやすく読み解いています。クローズアップや補助線の導入など、読者の理解を助けるビジュアルも多用。楽しみながら、知らず知らずのうちに鑑賞眼が鍛えられることを意図しています。
目次
1. 序章/古典古代と中世の西洋美術
ルネサンス アルプスの南と北で
2. ジョット/ルネサンスの最初の光
3. 初期ネーデルラント絵画1/ロベルト・カンピンの再発見
4. 初期ネーデルラント絵画2/ファン・エイク兄弟とその後継者たち
ルネサンスからバロックへ 天才たちの時代
5. ラファエッロ/苦労知らずの美貌の画家
6. デューラー/ドイツルネサンスの巨匠
7. レオナルド/イタリアとドイツで同時に起きていた「美術革命」
8. カラヴァッジョ/バロックを切り開いた天才画家の「リアル」
9. ピーテル・ブリューゲル(父)/中世的な世界観と「新しい風景画」
古典主義とロマン主義 国際交流する画家たち
10. ゲインズバラとレノルズ/英国で花開いた「ファンシー・ピクチャー」
11. 19世紀のローマ1/「ナザレ派」が巻き起こした新しい風
12. 19世紀のローマ2/アングルとその仲間たち
13. ミレイとラファエル前派/「カワイイ」英国文化のルーツ
14. シャルフベックとハマスホイ/北欧美術の「不安な絵画」
15. ヴァン・デ・ヴェルデ/バウハウス前夜のモダニズム
佐藤直樹:
東京藝術大学准教授。1965年生まれ。東京藝術大学大学院美術研究科後期博士課程中退。ベルリン自由大学留学、国立西洋美術館学芸課勤務を経て、2010年より現職。専門はドイツ/北欧美術史。編著書に『ローマ 外国人芸術家たちの都』(2013年)、『芸術愛好家たちの夢 ドイツ近代におけるディレッタンティズム』(2019年)、『ヴィルヘルム・ハマスホイー沈黙の絵画』(2020年)ほか。
以下、著作より
第3回 初期ネーデルランド絵画①―ロベルト・カンビンの再発見
「偽装された象徴主義」
第4回 初期ネーデルランド絵画②―土その後継者たち
「ヘント祭壇画」に隠された画期的な発明
第5回 ラファエッロ―苦労知らずの美貌の画家
ラファエッロ「パルナッソス」
第10回 ゲインズバラとレイノルズ
ゲインズバラ「ブルーボーイ」、「フランセス・ダンカム」
第14回 シャルフベックとハンマースホイ
シャルフベック「黒い背景の自画像」、「快復期の子」
第14回 シャルフベックとハンマースホイ
ハンマースホイ「イーダの肖像」、「室内、ストランゲーゼ30番地」