TOTOギャラリー間で「小さな風景からの学び」を観てきました。
このブログ(とんとん・にっき)に乾久美子が出てくるのは以下の2件です。
TOTOギャラリー間で「第13回ヴェネツィア・ビ、エンナーレ国際建築展日本館帰国展」を観た!
乾久美子設計の「日比谷花壇」を観た!
青木淳の事務所にいたことや、ディオール銀座のファサードをやったことなどで、乾の名前はかなり以前から知ってはいました。しかし、乾と同年代の藝大の人を僕は知らないことで乾との接点がありませんでした。最近、「日比谷花壇」を設計したことや、伊東豊雄の呼びかけにより3人の建築家―乾久美子、平田晃久、藤本壮介が、共同作業によってひとつの建築をつくり、そのプロセスを展示したものがヴェネツィア・ビエンナーレ国際建築展で「金獅子賞」を受賞したことなど、聞いてはいました。
「私たちの日常には、人を包み込むような優しさを感じる空間がある」、そんなきっかけからこのプロジェクトは始まったという。「その場が生み出された根源的な何かを感じることのできる空間を採集する」。撮影者それぞれが“気になる”という理由でとられた風景は、半年以上の調査を経て18000枚にのぼったという。そこから、その形状や状態など、同じような質をもつと思われるもの同士を23のグループ、178のユニットに層別しました。その過程で導き出されたのが「サービス」という概念だったという。
乾久美子の、この展覧会を解説する「動画」が面白い。さすがは大坂人、安藤忠雄ばりの説得力のある話は一見の価値あり、です。また、「小さな風景からの学び」、図録ともいえず、解説書のような手引き書のようなもので、ほとんど写真です。アレグザンダーの「パタン・ランゲージ」のようなもの?これが優れもの、開いたときに平になるとか、軽い紙質のものを使っているとか、いろいろと工夫が成されています。是非手に取って見てみてください。お薦めです。
乾久美子氏による展覧会コンセプト文
小さな風景からの学び
半年以上かけて、学生やスタッフと共に「小さな風景」を撮影することを繰り返してきました。気になる風景があればとにかく撮影し、毎週のように持ち寄り、分類をし続けたのです。「気になる」などというといかにも適当な感じがしますが、人は、そうした言葉にならないぐらいの感情の動きで空間の魅力を判断しているのではないかと考えてみたのです。 最終的に大量の写真が集まりました。「気になる」という撮影者の気持ちがよくわかる風景ばかりです。見るものを誘い込むような魅力にあふれ、あたかも擬人化したくなるような表情の豊かさがあります。しかし撮影されてきた対象物は大きくバラツキがあり、共通する「何か」はそう簡単には見えてきません。最終的に見つかったのは「サービス」という言葉でした。生態学で使われるこの言葉を写真の中の風景の評価に適用すれば、そこから何かが学べるのではないかと考えたのです。 展覧会では、大量の風景写真の展示を通して、風景がかもし出すさまざまなサービスの表情を楽しむような視点と、そこからの考察を提示します。自然からのサービス、人為的なサービス、偶然のサービス、ユーモアのあるサービスなど、私たちは空間の中でさまざまな次元でサービスを享受しつつ、その質を表情として読み取っているのではないかという仮説を通じて、「生きられた/計画された」といった区別を超えた空間や建築の価値のありようを考えていきます。
乾久美子
乾久美子:略歴
1969年大阪府生まれ。1992年東京藝術大学美術学部建築科卒業。1996年イエール大学大学院建築学部修了。1996~2000年青木淳建築計画事務所勤務を経て、2000年乾久美子建築設計事務所を設立。2011年東京藝術大学美術学部建築科准教授就任。主な建築作品に、「Dior Ginza」(2004)、「アパートメントI」(2007)、「フラワーショップH」(2009)、「KYOAI COMMONS」(2011)など。現在は東北で小・中学校の計画や、宮崎県延岡市におけるまちづくりが進行中。
「小さな風景からの学び」:展示の一部
a-並べ方
b-スケール
c-そっとおいてみると
d-集まり方
e-散らばり方
f-内と外
g-境界
「小さな風景からの学び」
TOTOギャラリー・間では、建築家・乾久美子氏と乾氏が教鞭を執る東京藝術大学・乾研究室の学生によって行われた、都市のリサーチ研究成果を紹介する展覧会を開催いたします。乾氏は近年、陸前高田の「みんなの家」(2012年)の設計に参画した他、現在では宮崎県延岡駅周辺の整備プロジェクトや宮城県七ヶ浜町と岩手県釜石市における学校建築などが進行中です。こうした〈多くの人の集まる場所=公共〉のあり方を探る中で、設計者として日本の風景の多様性を再認識し、人が自然に引きつけられる場所のもつ魅力への関心が高まり、今回のリサーチが始まりました。「小さな風景からの学び」と題された本展では、乾氏のほか、研究室の学生や乾久美子建築設計事務所の所員が行ったリサーチの、日常のささやかな現時点での成果を紹介します。半年以上をかけて、延べ45都道府県、約200を超える市区町村を取材する中で出会った風景を撮り続けた結果、その総数は約18,000枚にものぼりました。それらの写真を類型学的に分類していく中で見出された視点を加えながら分析してきました。会場では、そうした類型化の過程で導き出されたキーワードである「サービス」という切り口で選ばれた約2,000枚あまりの写真を178ユニット(写真群)に層別して紹介します。こうして撮りためられた大量の写真が、これからの建築のあり方を考えるヒントを与えてくれるのではないでしょうか。
さまざまなサービスの表情
編著者=乾久美子+東京藝術大学 乾久美子研究室
発行年月=2014年4月
装丁・本文デザイン=飯田将平+深川優
TOTO出版
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