国立西洋美術館で「ジャック・カロ リアリズムと奇想の劇場」を観てきました。西洋美術館での版画といえば、思いだすのはドーミエ、デューラー、ブレイク、ピラネージ、等々です。「過去の関連記事」を集めてみると、自分が思っていた以上に西洋美術館で版画を観ていたことに気がつきました。もちろん、西洋美術館の版画コレクションは多岐に渡り数多く収集していて定評があります。
今回のジャック・カロ(1592-1635)、僕は今まで知らなかった17世紀初頭の版画家です。若い頃にローマに出て修行をし、またフィレンツェでも活動しました。フィレンツェでは、トスカーナ大公コジモ2世のデ・メディチに才能を認められ、宮廷付き版画家として活動しています。同じ時期、即興喜劇コメディア・デラルテの役者を取材した作品や、細密描写を駆使した「インプルネータの市」も残しています。
1621年頃には、主君の氏を受けて故郷ロレーヌ地方に戻りますが、以降も宮廷や聖職者たちのための作品を手がけます。1630年代には、17世紀ヨーロッパの戦争に取材した「戦争の悲惨(大)」連作や、奇怪な悪魔たちが跋扈する「聖アントニウスの誘惑(第2作)」等の大作も制作しました。「腐食銅版画(エッチング)」の技法に新境地を開き、版画史上に名前を残しました。ジャック・カロはわずか40年の生涯ですが、1400点以上もの作品を生み出しました。
展覧会の構成は、以下の通りです。
Ⅰ ローマ、そしてフィレンツェへ
Ⅱ メディチ家の版画家
Ⅲ アウトサイダーたち
Ⅳ ロレーヌの宮廷
Ⅴ 宗教
Ⅵ 戦争
Ⅶ 風景
Ⅱ メディチ家の版画家
Ⅳ ロレーヌの宮廷
Ⅴ 宗教
Ⅵ 戦争
Ⅶ 風景
「ジャック・カロ リアリズムと奇想の劇場」
ジャック・カロ(1592-1635)は、17世紀初頭のロレーヌ地方が生んだ、優れた技量と豊かな創造性を兼ね備えた版画家です。若い頃に滞在したイタリアでは、メディチ家の宮廷附き版画家に抜擢され、1621年の帰郷後も、ロレーヌの宮廷や貴族たち、聖職者たちのためのみならず、周辺諸国の貴顕たちの注文にも応えて制作を行うなど、華やかなキャリアを築きました。わずか40数年の生涯に残した作品の数は1400点以上にのぼります。当時の喧騒が今にも聞こえてきそうな祝祭や市の様子、民衆喜劇(コメディア・デラルテ)の役者たちや道化たちを描いたもの、対抗宗教改革の潮流を映した作品群、社会を暗い影で包んだ戦争に取材したもの、イタリアや1630年頃に滞在したパリ、故郷ロレーヌの風景・・・、多彩な主題を扱った画面の中では、現実に向けられた鋭いまなざしと、想像力に富んだ着想が交錯する、独特の世界が作り上げられています。また、カロは試行錯誤を重ね、腐食銅版画(エッチング)の技法に新境地を開いたことでも知られます。この新しい技法から生み出された、ときに明暗を鮮やかに対比し、ときに柔らかな空間の広がりを詩情豊かに描き出す線の表現の美しさは、見るほどに深い驚きをもたらします。本展覧会では、国立西洋美術館のコレクションに基づいて、初期から晩年に至るカロの作品を、年代と主題というふたつの切り口からご紹介します。カロの活動の軌跡をたどりつつ、リアリズムと奇想が共演するその版画世界をご覧いただきます。さらに、作品を通して、当時の芸術的潮流や社会の諸相に対するカロの姿勢を探っていくことも、この展覧会の狙いです。
2014年4月8日(火)~6月15日(日)
国立西洋美術館
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