伊藤隆の「日本の内と外」(中公文庫:2014年1月25日初版発行)を読みました。「シリーズ日本の近代」という本です。以前、鈴木博之の「都市へ」を読みました。それと同じシリーズになります。索引まで入れるとなんと525ページにもなる分厚い文庫本です。「日本の近代(16) 日本の内と外」(中央公論新社、2001年)を文庫化したものです。
シリーズは今もまだ刊行中です。「都市へ」と「日本の内と外」以外の既刊は、「逆説の軍隊」(戸部良一)、「官僚の風貌」(水谷三公)、「メディアと権力」(佐々木隆)、「企業家群像」(宮本又郎)、「新技術の社会誌」(鈴木淳)です。
本の帯には、以下のようにあります。
「世界」の一員として生きるため日本が懸命に切り開いた道とは?
本の裏表紙には、以下のようにあります。
開国で国際社会に編入された日本は、欧米が牛耳る「世界」を必死に生き延び、日清・日露の戦を勝ち抜いて20世紀を迎えた。だが新しい世紀は、世界大戦の惨禍と、共産主義という新たな局面で大きく揺すぶられていた。第1部「列強への途」、第2部「共産主義の世紀」と二部構成で描く近代日本の歩み。
目次:
第1部 列強への途―1853‐1918
1.「世界」への編入
2. 「大国」の地位を賭けて)
第2部 共産主義の世紀―1917‐1991
3.共産主義という素晴らしい未来
4.革命を遠く離れて
参考文献
関係年表
索引
伊藤隆:
政策研究大学院大学教授。1932年(昭和7)年東京生まれ。東京大学文学部国史学科卒業。東京大学大学院人文科学研究科国史専攻修士課程修了。東京大学文学部教授、埼玉大学大学院教授などを経て現職。近代史史料の編纂及び刊行にも数多く携わる。著書に『大正期「革新」派の成立』『昭和初期政治史研究』『近衛新体制―大政翼賛会への道』『近代日本の人物と史料』『牧野伸顕日記』(共編)『佐藤栄作日記』(監修)『鳩山一郎・薫日記』(共編)など多数
第一部の終わりに、伊藤は以下のように書いています。
さて、日本にとって19世紀半ばから20世紀初期にかけては、西欧文明と接触し、試行錯誤を繰り返しながらその文明を摂取し、当時の「世界」であった西欧社会に自らをその一員とすべく全力を挙げて取り組んだ年月であった。そして日露戦争と第一次大戦によって、日本は世界の列強の一員であることを自他共に認識することとなった。ここで、日本の近代は第一幕を終わる。今日に至る1世紀足らずの年月は、第一次大戦中にロシアで勃発し成功した共産主義革命によって局面を変えた世界を生きることとなった。
そしてこの本の最後に、以下のように書いています。
さて過去150年の日本を、第1部では欧米がすなわち世界であった状況で、その世界に参入するための必死の営みとして、第2部では今世紀の大半、世界を揺るがした共産主義、社会主義、その鬼子であったナチズム、ファシズムの中で生きた日本および日本人を描くことで、日本が世界に参入し、世界の中の一つのアクターとして生きてきたことを示した。そして、共産主義の実験が完全に失敗に終わった今日、世界とともに日本も新しい段階を迎えようとしている。・・・日本はこの150年間に多くの経験をし、多大の蓄積をしてきた。それが何であったかを債券投資、積極的に評価することこそ、日本および日本人が新しい世界を切り開く原動力になるという大きな希望を持ってよいのではなかろうか。
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