パナソニック電工汐留ミュージアムで「ウィーン工房1903-1932」展を観てきました。副題には「モダニズムの装飾的精神・いま甦る、モダン・インテリアの開拓者たち」です。
「ウィーン工房は1903年、ウィーン市の小さなアパート3部屋で、建築家のヨーゼフ・ホフマンとコロマン・モーザー、そして財政的な後ろ盾ともなった実業家のフリッツ・ヴェンドルファーの3名がはじめた企業」とありますが、僕はヨーゼフ・ホフマンの名前だけしか知りませんでした。また「建築から、インテリア、家具、照明や食器にいたるまでの生活芸術のあらゆる装飾を一貫したスタイルで統一する『総合芸術』を標榜」というところは、まさにウィリアム・モリスのアーツ・アンド・クラフツ運動を彷彿とさせるものです。いずれにせよ、僕は始めて知ることばかりの展覧会でした。
圧巻だったのは、会場に敷いてあった絨毯と、壁紙でした。絨毯は歩いてみるとすぐわかる通り、良質のものでした。これはすごいと思いました。もちろん、出されていた椅子やテーブル、照明や食器、装飾品等々、一品一品、すごく材質もいいし、手間暇かかっていることがよくわかり、デザインも素晴らしい。が、しかし、あまり良質でも、高くては売れない。従って、工房全体が尻つぼみになっていったと言うことはよくわかります。結局は、時代のあだ花だったのか。解散まではたったの30年、残念ながらあまりにも短い運動だったと言えます。
ウィーン工房のデザイナーで、結婚後京都に移り住んだフェリーチェ・ウエノ・リックス(上野リチ)についても、始めてこの展覧会で知りました。「建築家である夫、上野伊三郎とともに、京都市立芸術大学や主宰したインターナショナルデザイン研究所で、教育にあたりながら、故郷ウィーンで身につけたデザインの手法を日本において普及させました」とありました。それだけでウィーン工房の理念が日本に根付いたかと言えば、やはり僕は否定的です。
「ストックレー邸」に関して。ストックレー邸は、ヨーゼフ・ホフマンの設計で、1911年にベルギーに完成したホフマンの代表作です。ホフマンはオットー・ワーグナーの弟子の一人。ストックレーは、ウィーン在住のベルギー人資本家の邸宅です。1903年にウィーン工房を設立。高級家庭用品をデザイン、制作、販売していたホフマンが、工芸家の才能と建築家の才能を発揮した傑作です。
ヨーゼフ・ホフマンの家具は、オットー・ワーグナーの「ウィーン郵便貯金局」を観に行ったときに、いまでも使われているものを、たくさん観ることができました。
「ウィーン工房1903-1932 モダニズムの装飾的精神」
ウィーン工房は1903年、ウィーン市の小さなアパート3部屋で、建築家のヨーゼフ・ホフマンとコロマン・モーザー、そして財政的な後ろ盾ともなった実業家のフリッツ・ヴェンドルファーの3名がはじめた企業です。建築から、インテリア、家具、照明や食器にいたるまでの生活芸術のあらゆる装飾を一貫したスタイルで統一する「総合芸術」を標榜し、制作から販売までを一手に引き受けました。その思想は、当時巷に流布していた粗悪な大量生産品を廃し、質の高い職人の手仕事を理想としたウィリアム・モリスのアーツ・アンド・クラフツ運動を受け継ぐものです。ウィーン工房のデザインには機能性・合理性を本領とするモダン・デザインの先駆でありながら装飾的でもある、という一見矛盾とも思われる要素が共存しています。19世紀末ウィーンで繰り広げられた退廃的かつ華麗な芸術運動と20世紀のモダン・デザインが、対立することなく繋がり、その変容の中で美しいデザインの品々が生み出されていったのです。本展覧会は、ウィーン工房の初期から解散までの約30年間の全活動を、年代を追って作品とともに紹介するものです。近代の建築やデザインの中でもとりわけ濃密でありながら軽やかな存在感を放つウィーン工房の造形美をお楽しみください。また、展覧会の最終章では、ウィーン工房のデザイナーで、結婚後京都に移り住んだフェリーチェ・ウエノ・リックス(上野リチ)の作品を多数ご紹介しています。リックスは、建築家である夫、上野伊三郎とともに、京都市立芸術大学や主宰したインターナショナルデザイン研究所で、教育にあたりながら、故郷ウィーンで身につけたデザインの手法を日本において普及させました。遠くウィーンの地で華麗に咲き誇ったウィーン工房のデザインは、上野夫妻の活躍で日本にも根付いているのです。
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