世界が絶賛、本年度アカデミー賞作品賞受賞!
観てきました、「それでも夜は明ける」を! もともとこの作品を知って観にいこうと思っていたのですが、アカデミー賞を受賞したので、観にいくのを躊躇っていました。でも、やっぱり観ておかないと話にならないので、重い腰を上げて観にいったというわけです。
誰が言ったかうろ覚えですが、日本人は中国や韓国への蛮行、ドイツ人はもちろんユダヤ人虐殺、そしてアメリカ人は奴隷問題がのど元に刺さったトゲだと言いました。僕が子どもの頃、アメリカでは黒人と白人はバス停での座るベンチも別々だと聞かされていました。黒人がプールには入れないので、黒人の水泳選手がいないとも、ゴルフ場には入れないので、黒人のゴルフの選手がいないとか。いわゆる“人種差別”です。アメリカの南部では黒人労働力で、綿花栽培が栄えました。
1640年代から1865年まで、現在のアメリカ合衆国領域内ではアフリカ人とその子孫が合法的に奴隷化されていたが、その所有者は圧倒的に白人であり、ごく少数が先住民や自由黒人であった。この奴隷所有者の大多数は南部にいた。南北戦争の前の時点で南部の4家族に1軒が奴隷を所有していた。黒人の95%は南部に住んでおり、南部の人口に対しては3分の1に達していた。これに対して北部における黒人の人口比率は1%に過ぎなかった。(「ウィキペディア」による)
「それでも夜は明ける」のなかでよく分からなかったのは、「自由黒人」という言葉です。この映画のなかで豪勢な暮らしをしている黒人女性が出てきたりもします。主人公のソロモンも、自分は自由証明書で認められた黒人だ、と言ったりもします。その自由黒人が、突然誘拐され、奴隷となって、12年もの間、自由を奪われ、過酷な労働を強いられた、という話です。自由黒人であることを主張できただろうに、また逃げ出すこともできただろうに、ただただ主人公は過酷な奴隷生活に甘んじています。そしてラストには、ハリウッドお決まりの助け船(ブラッド・ピット)が現れ、めでたしめでたしとなるわけです。そんな全体の都合良さが、僕は腑に落ちませんでした。
物語は1841年のニューヨーク州から始まります。バイオリニストのソロモンは、愛する妻と2人の子供と幸せに暮らしています。ソロモンは自由証明書で認められた自由黒人です。ワシントンで開催されたショーで演奏をしますが、契約終了で祝杯をあげて酔いつぶれ、翌日目が覚めると手足を鎖で繋がれていました。騙されて売られたと気づいたときは船の上、ニューオーリンズの奴隷市場で売買され、大農園主のフォードに買われていきます。船上で他の奴隷から「生き残りたいなら余計なことはするな」「自分の素性や読み書きができることは言うな」と言われたりもします。
原作は、南北戦争が勃発する8年前の1853年に出版されたアフリカ系アメリカ人ソロモン・ノーサップの回想録です。自由黒人だったソロモンが強いられた12年感に及ぶ奴隷生活を描いた手記です。アメリカが取り上げたくなかった奴隷制度の闇の部分を、重い腰を上げて描いた貴重な作品であり、しかも今年は南北戦争が終わって奴隷解放から150年目だという。キーワードの「あきらめない」、当たり前と言えば当たり前ですけど、白人による差別や虐待のなかで、人間の尊厳を失った数多くの奴隷たちのなかで、12年間も「あきらめない」で、壮絶に生きたひとりの黒人を描いた衝撃的な作品です。
以下、とりあえず「シネマトゥデイ」より引用しておきます。
チェック:奴隷制度がはびこっていたアメリカを舞台に、自由の身でありながら拉致され、南部の綿花農園で12年間も奴隷生活を強いられた黒人男性の実話を映画化した伝記ドラマ。主人公が体験した壮絶な奴隷生活の行方、そして絶望に打ち勝つ希望を描き出す。監督は『SHAME -シェイム-』のスティーヴ・マックィーン、黒人男性を『2012』などのキウェテル・イジョフォーが演じる。共演には、マイケル・ファスベンダー、ベネディクト・カンバーバッチ、ブラッド・ピットら豪華キャストがそろう。
ストーリー:1841年、奴隷制廃止以前のニューヨーク、家族と一緒に幸せに暮らしていた黒人音楽家ソロモン(キウェテル・イジョフォー)は、ある日突然拉致され、奴隷として南部の綿花農園に売られてしまう。狂信的な選民主義者エップス(マイケル・ファスベンダー)ら白人たちの非道な仕打ちに虐げられながらも、彼は自身の尊厳を守り続ける。やがて12年の歳月が流れ、ソロモンは奴隷制度撤廃を唱えるカナダ人労働者バス(ブラッド・ピット)と出会い……。
「それでも夜は明ける」公式サイト