東京藝術大学大学美術館で開催された「観音の里の祈りとくらし展―びわ湖・長浜のホトケたち―」ブロガー特別内覧会へ行ってきました。
ブロガー特別内覧会スケジュール
18:00~19:15 自由内覧
18:00~ 長浜城歴史博物館副館長 大田浩司氏による主要作品の解説
19:15 内覧会終了
東京で初披露となる、観音の里で守られてきた仏様18躯が勢揃い!
滋賀県長浜市には、130躯を超える観音様が伝わり、古くは奈良・平安時代に溯るものも多数あります。長浜市の観音様は、大きな神社に守られてきたのではなく、地域の暮らしに根付き、そこに住む人々の信仰や生活、人生、地域の風土などと深く結び付きながら、今なお大切にひそやかに守り継がれています。
今回の展覧会では、18躯の観音様の優れた造形とともに、このような独自の精神文化や生活文化を「観音文化」として写真パネルや映像でご紹介し、地域に受け継がれ今なお続いている信仰文化を首都圏の方に広く知っていただく目的で開催するものです。
数と質で秀でた長浜の観音像
滋賀県は、国指定重要文化財の観音像が、全国で最も多く所在する県として知られています。その中でも、長浜市には特に多くの観音像が、寺院や仏堂に祀られています。国・県・市の指定文化財となっている像だけでも37躯に及びますが、市内でも北部地域(旧伊香郡)に集中して残っており、今も村人によって守り継がれています。また、全国的に見てもその作例が少ない、奈良時代末期から平安時代初頭という、非常に古い次期に造られた像が多数残っていることも特筆すべきでしょう。
官営工房が関与した作品も伝来
最も著名な像は、国宝となっている向源寺の十一面観音立像(高月町渡岸寺)ですが、他にもキラ星のごとく優れた像が点在しています。赤後寺(日吉神社)の千手観音立像や、菅山寺の十一面観音立像の制作年代は奈良時代末期まで溯る可能性があり、地方としては日本でもトップクラスの古さです。これらには、造形面や技術面などからみて、官立の造営期間(官営工房といいます)の職人が関与したと考えられています。平安前期につくられた観音寺の伝千手観音立像(木之本町黒田)や、鶏足寺の十一面観音立像(木之本町古橋)、千手院の2躯の千手観音立像(川道町)、来現寺の聖観音立像(弓削町)なども、官営工房の影響を受けた先進の技術によって制作されたとみられます。
天台宗の影響下の造像
平安中期になると、石道寺の十一面観音立像(木之本本町石道)のように、明らかに天台宗(比叡山)の影響下で造られた像が現れます。これには、浅井郡三川村(長浜市三川町)出身の良源(元三大師)の出現と活躍による、天台宗の隆盛が大きく関与していると考えられています。奈良の大寺院(南部寺院といいます)に代わって、天台宗(延暦寺)の力が現在の長浜市域にも及んだことを示しています。このように、観音像の形状は地域の振興の歴史を表しているのです。
「観音の里の祈りとくらし展―びわ湖・長浜のホトケたち―」
琵琶湖の北岸に位置する湖北地域には、古くから仏教文化が栄え、すぐれた仏教彫刻が数多く伝わっています。 とくに慈愛に満ちた観音菩薩像の遺品が多いのが、この地域の大きな特色となっています。 これらの観音像を生み出した寺院の多くが廃絶した後も、地域の住民たちが中心となって、観音像を守り伝えてきました。今日においても、お寺が無住になると新しいお堂や公民館などに仏様をお迎えするなど、人々の尽力によって多くの観音像が継承されています。 北近江の観音は、すぐれた造形もさることながら、暮らしや風土と深く結びつき、今なお生きた信仰の中心にあることが最大の魅力でありましょう。この展覧会では、地元で大切に祀られる様子をそのままのかたちでご紹介できるよう、工夫をこらしています。 日々の暮らしのなかに信仰が息づく「観音の里」の姿を、身近に感じていただければ幸いです。
注:会場内の画像は主催者の許可を得て撮影したものです。
図録
初版第1刷 平成26年3月21日
企画:長浜市・東京藝術大学大学美術館
編集:長浜市長浜城歴史博物館
発行:長浜市
制作:サンライズ出版
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