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静嘉堂文庫美術館で「描かれた風景~絵の中を旅する~」を観た!

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静嘉堂文庫美術館で「描かれた風景~絵の中を旅する~」(後期)を観てきました。会期が終了間近なので、大慌てで観に行ってきました。二子玉川からのバスも混んでいて、静嘉堂文庫前のバス停でかなりの人が降り、ほぼ全員が静嘉堂文庫へ向かって坂道を登っていきました。静嘉堂文庫美術館はいつもはのんびりと観て廻れるのに、今回は見事に混んでいて、チラシも早々と無くなったということでした。「本展修了後、美術館改修工事のため、約1年半休館いたします」という案内がありました。改修工事前の最後の企画展、ああ、なるほど、と思いました。再オープンは2016年秋になるようです。


「描かれた風景~絵の中を旅する~」、北は日本三景の一つである松島から、南は大分県の耶馬溪まで、各地の名所を描いた名所絵や風景画を中心に展観します。他に版本や蒔絵、茶道具、煎茶道具、文房具なども含め、前後期合わせて全70件を紹介します。


今回の見どころはというと、まずは「都の賑わい」です。前期(2月1日~16日)は「江戸名所図屏風」が展示されていたようですが、後期(2月18日~3月16日)の目玉は、重要文化財「四条河原遊楽図屏風」(2曲1双)でした。この作品を楽しめるのが、大型ディスプレイを使った「見どころルーペ」です。タッチパネル式で屏風の各所を拡大できるので、詳細に観ることができます。


次の見どころは、静嘉堂でしか観ることのできない、保存状態のよい色鮮やかな浮世絵です。東海道の宿場町を描いた「双筆五十三次」は、閉経の風景を歌川広重が、前の人物を三代豊国が描いた合作です。この作品は門外不出です。蛇腹状にたたまれていたので状態が極めてよく、また発色も素晴らしい。2010年6月には「錦絵の美―国貞・広重の世界―」がありました。


次の見どころは、名所の筆頭、古くから信仰の対象でもあった富士山です。世界遺産登録でも話題になりました。各地から見た肉筆作品の富士、版本による富士。富士山のいろいろな顔を楽しめるような優品がありました。なにを隠そう、静嘉堂文庫美術館のラウンジから多摩川ごしに、正面に富士山がしっかりと見えるのです。そしてもう一つ、「堅田図旧襖絵」の久々の公開です。中国絵画からの影響もみられる「堅田図旧襖絵」は、もと京都・大徳寺 瑞峯院の襖絵でした。伝雪舟の「西湖図」とともに、室町時代の水墨主体の風景を味わいます。他に鈴木芙蓉の水墨画、「那智山大瀑雨景図」があります。


都の賑わい

桃山時代から江戸時代の初めにかけての四条河原界隈は、歌舞伎小屋、見世物小屋が軒を連ねる一大歓楽地でした。この屏風は、その繁栄ぶりを描いた四条河原図の代表的な優品です。左隻の右上には竹矢来をめぐらせた歌舞伎小屋を配し、鼠木戸の上の櫓に富士山や一の字に「うきよさと嶋大かふき」と染め抜いた朱色の幕が翻っています。佐渡嶋は六条三筋町の遊女歌舞伎の一座です。その隣は山荒の見せ物、道路を隔てて下方には、大女、犬の曲芸、皿まわし、風流笠を着けた尺八の演奏と見所が重なります。藍色と墨で描かれた鴨川の両岸では、鮎漁の人々、楊弓場、心太売り、瓜売り、一服一銭が描かれ、活気にあふれています。左隻の左上にも歌舞伎小屋が拝され、こちらは桔梗紋と巴紋を染め抜いた幕を掛け、看板に「西洞院道喜かふき」とあり、六条三筋町に増設された西洞院町の遊女歌舞伎の興行です。虎革を敷いた曲彔に腰かけた一座のスターの和尚の三味線に合わせ、その回りを兵庫髷の遊女が踊っています。賑わう往来の向かいの小屋では、しずしずと舞が演じられています。既成の流派に属さない、すぐれた町絵師による見応えのある当世風俗画です。


浮世絵にみる名所


富士山図


「堅田図旧襖絵」

現在この作品は屏風装ですが、もとは京都紫野の大徳寺の塔頭、瑞峯院の檀那の間の襖絵でした。東京国立博物館にある「片田景図」はこの作品を模写したものであることが確認されました。堅田は、比叡山の麓の琵琶湖に面した漁村で、中世には琵琶湖の湖上権を掌握する自治都市として発展しました。瑞峯院は、天文21年から24年頃、大友宗麟を檀那として成立し、開山の微岫宗丸のあとを引き継いだ第二世の怡雲宗悦が近江の出身で、堅田の祥瑞寺に住した経歴があることから、そのゆかりで堅田の景観が檀那の間に描かれた可能性がある、と解説にあります。ただ、水墨淡彩で描かれた日本の都市風景図としては類例が乏しく、制作期や筆者については今後の研究がまたれる、としています。


風景表現の変遷~江戸後期から近代まで
鈴木芙蓉は、中国文化に対する教養と理解を持ち、「酔芙蓉」と呼ばれたように、酔興に乗じて描いたともいわれていますが、大幅の絹を用いた「那智山大瀑雨景図」は、酔興による紙本の作品とは異なり、時間を費やして謹直に描かれたことが明らかな作品です。樹木や岩はもちろん、人物や拝殿もそれぞれに応じた異なる筆線、墨色で描き分け、再度の低い代赭と藍を用いてそれぞれを彩っています。通常の山水画であればそれで完成をみるのですが、本図はさらに技巧を凝らしている点で、より思いのこもった作品ということができます。トクに注目されるのは、那智の滝から落下する水しぶきが、画面左からの強風によって霧状となり、上空にあおられる状況を描写していることです。滝の流れをあらわす垂直線の延長上に、濃度を微妙に変化させた面的な淡墨が、ゆらぎをもちながらU字形の弧を描いて画面の右上へと流れていきます。二重の水幕が表現をより複雑にし、息苦しさを感じさせるような重々しい空気感、そして神域としての異空間を演出しています。



ロビー展示


「色絵吉野山図茶壺」。桜満開の吉野山、その景を闇夜に見るかのような色絵茶壺。丸く張った器面を覆う漆黒の釉が、金・銀・赤の桜花や葉の緑を艶やかに浮かび上がらせています。


「描かれた風景~絵の中を旅する~」

古来日本では、四季の移り変わりの中で自国の風景を愛で、多くの名所絵・風景図が描かれてきました。本展では、室町時代の名品「堅田図旧襖絵」を久々に公開するとともに、近世初期風俗画の傑作として知られる重要文化財「四条河原遊楽図屏風」をはじめ、世界文化遺産登録で話題となった富士山を描いた作品、門外不出のため鮮やかな色彩の残る歌川国貞(三代豊国)・広重の浮世絵などを出品。古今東西の描かれた名所を一堂に展示することにより、日本人が愛した風景の様相を探ります。普段見慣れた景色やまだ見ぬ日本の風景がどのように描かれてきたのか…美術館で、時空をこえた旅をお楽しみください。


「静嘉堂文庫美術館」ホームページ


fuu1 「静嘉堂文庫美術館」

リーフレット
















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