ダニス・タノヴィッチ監督の「鉄くず拾いの物語」を観てきました。この映画のことを知ったのは、新宿武蔵野館で「危険な関係」を観に行った時のことでした。題名だけではどんな内容の映画なのか、まったく分かりませんでしたが、ロビーに張ってあった新聞の切り抜きなどでは、なぜか評価が高そうで、皆さん、食い入るように見ていました。その日、一旦は続けて二本観ようかとも思ったのですが、「危険な関係」があまりにも良かったので、「鉄くず拾いの物語」は後日出直すことにしました。
ダニス・タノヴィッチ監督とはどんな人なのか、調べてみました。なんと1996年に亡くなったクシシュトフ・キェシロフスキの原案をダニス・タノヴィッチが2005年に映画化したという「 美しき運命の傷痕」を観ていました。もっともドキュメンタリータッチの「鉄くず拾いの物語」とはまったく異なる作品でしたが・・・。
2011年に故郷ボスニア・ヘルツェゴヴィナの新聞で、ナジフとセナダに起こった“できごと”を知り、「何としても映画にして、世間に訴えなければいけない」と、ダニス・タノヴィッチは立ち上がります。ボスニア戦争の最前線で記録映像をとっていた頃のシンプルな手法に立ち戻り、たった1万3000ユーロの自己資金で、わずか9日間の撮影を敢行します。実際の当事者であるナジフとセナダを出演させ、まるでドキュメンタリーのような緊張感のある映像世界を創り上げました。
チラシには、以下のようにあります。
愛する人を守るため、人は何ができるだろう。
幸せな家族に起こった悲しい“できごと”。生きる意味を問う感動の物語。
人生はと時して、あまりにも理不尽で厳しい。
それゆえ、人間はたくましく美しい。
ボスニア・ヘルツェゴヴィナに暮らすロマの一家は、貧しくも幸福な日々を送っていた。ある日、3人目の子供を身ごもる妻・セナダは激しい腹痛に襲われ病院に行くと、今すぐ手術をしなければ危険な状態だと告げられた。そして保険証を持っていないために、高額な手術代を要求される。鉄くず拾いで一家を支える働き者の夫・ナジフは、医師に妻の手術を何度も懇願するも冷酷に拒否されてしまう。ナジフは「なぜ神様は貧しいものばかりを苦しめるのだ」と嘆きます。ナジフは解決策をひとつひとつと丁寧に探ってゆくが、貧しく仕事もない彼にできることは限られていた・・・。「ノー・マンズ・ランド」でアカデミー賞外国語映画賞を受賞したダニス・タノヴィッチが、故郷で実際に起きた不幸な“できごと”に突き動かされ、当事者たちを起用して一気に撮り上げた意欲作。無骨だが優しいナジフの眼差し、子供たちの笑顔、隣人たちから差し伸べられる温かな手、スクリーンに映し出されるのは真実の物語。家族を守るため懸命に試練と向き合い、大切な人と共に生きる意味を静かに投げかけてくる気高いナジフの姿は、観る者の心を強く揺さぶる。
以下、とりあえず「シネマトゥデイ」より引用しておきます。
チェック:「ノー・マンズ・ランド」などで知られるダニス・タノヴィッチ監督が、ロマ族の一家の実話を基に描く感動作。ボスニア・ヘルツェゴビナを舞台に、緊急掻爬(そうは)手術が必要にもかかわらず、保険証がなく高額の治療費が払えないために手術を拒否される家族の苦難をドキュメンタリータッチで描き出す。出演者は実際その当事者であるナジフ・ムジチとセナダ・アリマノヴィッチ。第63回ベルリン国際映画祭で3冠に輝いた、真実の物語に心揺さぶられる。
ストーリー:ロマ族のナジフ(ナジフ・ムジチ)とセナダ(セナダ・アリマノヴィッチ)夫妻は、2人の幼い娘と共にボスニア・ヘルツェゴビナの小さな村で生活している。ナジフは拾った鉄くずを売る仕事で生活費を稼いでおり、彼らは家族4人で貧しいながらも幸せな日々を送っていた。ある日、彼が仕事から戻ると妊娠中のセナダが激しい腹痛でうずくまっていて……。
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