群馬県立館林美術館で「山口晃展 画業総覧―お絵描きから現在まで」を観てきました。観に行ったのは10月22日(火)、1ヶ月以上も前のことでした。その日は、館林美術館を観た後、足利美術館と大川美術館を回りました。以前、一度館林美術館へ行ったことがあるのですが、バスで行ったのでとんでもなく遠回りで、参ったことがありました。今回は迷わず行き帰りはタクシーを利用しました。デジカメの調子が悪く(設定が間違っていた)、妙に幻想的な画像になりました。
山口晃の作品に関しては、現在横浜美術館で開催されている「横山大観展 良き師、良き友」の、それぞれの似顔絵を描いたことで話題になっていました。似顔絵といえば、2008年に東京国立博物館・平成館で開催された「対決 巨匠たちの日本美術」でも、似顔絵を描いていたことが記憶に残っています。また、公共広告機構マナー広告も記憶に残っています。今回も「江戸のしぐさ」のための原画より、「傘かしげ」「こぶし腰うかせ」、「感謝の目つき」「束の間のつきあい」が出ていました。
僕は山口晃の展覧会はそうたくさん観ているわけではなく、銀座三越での「山口晃展 東京旅ノ介」と、メゾンエルメスでの「望郷 山口晃展」を観たに過ぎません。一度ちゃんと観ておこうと思い、遠いにもかかわらず館林美術館まで観に行った、というわけです。たまたま藤森輝信×山口晃「日本建築集中講義」を読んだり、山口晃の「ヘンな日本美術史」を読み、文章の巧さとイラスト(漫画)巧さに脱帽しました。そんなこともあり、紀伊国屋で開催された藤森輝信×山口晃「日本建築集中講義」反省会を聞きに行くまでになりました。
今回の最も早い作品は、1990年の「洞穴の頼朝」です。平塚美術館で2011年5月に開催された「画家たちの二十歳の原点」に出されていた山口21歳の作品でした。平塚美術館の開催趣旨には、以下のようにありました。「人生においてもっとも多感でナイーヴな十代の最終章、二十歳という象徴的な時期は、多くの芸術家にとって表現の原点であり、出発点にも位置づけられます。この時期、未熟と成熟とが葛藤しつつ、世界との関係の中で客観的な自己の形を作り始めるのです」。頼朝に扮した「自画像」(1994年)は、芸大の卒業制作と聞きました。
今回の展覧会で驚いたのは1992年の作品「大師橋圖畫(平面図及び断面図)」でした。これはまさに僕らのいう「断面パース」にほかなりません。ある程度建築のことを知っていないと描けない図面です。建築学科では「図学」の時間に透視図の描き方を習いますが、芸大でもそのような授業があったのでしょうか。「邸内見立 洛中洛外圖」(2007年)は、完全な平行透視図です。他にも山口の絵は、平行透視になっている作品が多いのが目につきます。
以下、ジュニアガイド「山口晃展 画業総覧―お絵描きから現在まで」より引用します。
山口晃さんは、1969年に東京で生まれました。3歳で群馬県桐生市に引っ越し、高校卒業までの15年間を桐生市で過ごしました。東京藝術大学で油彩画を学んだ後、個展をはじめ日本や海外でたくさんの展覧会に出品して注目を集めています。作品は、絵画を中心に立体的な作品や映像の作品も作っています。また、本の表紙絵や新聞小説の挿絵、音楽のCDジャケットなども描いているので、、身近なところで山口さんの絵を見ることができます。最近は、京都の平等院養林庵書院に襖絵を納めたり、美術に関する本を出版するなど幅広く活躍しています。
山口晃:略歴
1969年東京都生まれ。群馬県桐生市に育つ。
東京藝術大学大学院美術研究科絵画専攻(油画)修士課程修了。
2007年上野の森美術館「アートで候。会田誠 山口晃展」。
2008年アサヒビール大山崎山荘美術館で「さて、大山崎—山口晃展」開催。
同年秋から五木寛之による新聞小説『親鸞』の挿絵を担当。
2012年メゾンエルメス(銀座)で「望郷/山口晃-TOKIORE(I)MIX」開催。
同年11月平等院養林庵書院に襖絵を奉納。
同月より「山口晃展 老若男女ご覧あれ」を、美術館「えき」KYOTO、そごう美術館、新潟市美術館で開催。
近著に『ヘンな日本美術史』(祥伝社)、『山口晃 大画面作品集』(青幻舎)。
「山口晃展 画業ほぼ総覧-お絵描きから現在まで」
山口晃は、日本の古典的な絵画や古今東西のさまざまな美術を探究し、私たちの日常生活をふまえて、時間と空間、自然と人工物とを自由自在に交錯、融合させた世界を、卓越した描写力によって表す作家として高く評価されています。作品は、精妙巧緻を極めかつ軽妙洒脱で、鋭い批評精神とユーモアにあふれており、年齢や性別を問わず多くの人々の共感をよんでいます。近年、その活動は、書籍や新聞小説の挿絵、パブリックアート、CDジャケットやCM原画、他の分野とのコラボレーション、文筆活動まで広くおよんでいます。本展覧会は、山口晃が幼少期から高校卒業までをすごした群馬での初めての回顧展として開催するもので、絵画や立体作品などの代表作を中心に、当地に関連した最新作、20年ぶりに公開される《自画像》、初出品となる板絵、さらに子どものころのお絵描き、高校時代の貴重な資料などが一堂に会します。ぜひこの機会に「山口ワールド」の魅力をご堪能ください。
「山口晃展 画業総覧―お絵描きから現在まで」
リーフレット
協力:ミヅマアートギャラリー
編集:群馬県立館林美術館
文 :中島幸子(群馬県立館林美術館)
発行:群馬県立館林美術館
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朝日新聞2013年11月30日(土)「フロントランナー」