資生堂ギャラリーでは、2013年9月28日(土)から12月25日(水)まで、「LAS MENINAS RENACEN DE NOCHE 森村泰昌展 ベラスケス頌:侍女たちは夜に甦る」を開催しています。本展は、日本及びスペインで今年から来年にかけて開催される「日本スペイン交流400周年事業」プロジェクトです。
僕が森村の作品を始めて観たのは、2007年7月のことです。偶然通りかかった高島屋東京店6階美術画廊Xで、高島屋創業180周年記念森村泰昌新作展「絵写真+The KIMONO」を観ることができました。高島屋から制作依頼を受け、高島屋史料館の所蔵品カタログを繰っていたら、「これだ」という作品に行きあたった。それが北野恒富作「婦人図」だったと、森村は言います。これがまた妖艶、というか、素晴らしいセルフポートレートでした。
その前にNHKの「新日曜美術館」で、フェルメールが最後まで手放さなかったという「絵画芸術(画家のアトリエ)」(ウィーン美術史美術館)に基づいて、画家のアトリエをつくり、フェルメール自身と言われている画家(後ろ姿)になりきった森村を観た記憶があります。その時、カメラオブスキュラで映像を映していました。さて、今回はスペインバロックの巨匠ディエゴ・ベラスケスの名作「ラス・メニーナス」です。僕は2007年12月19日に「プラド美術館」へ行って、「ラス・メニーナス」を観てきました。
一人芝居「侍女たちは夜に甦る」
口上。
トザイ(東西)、トーザイ(東西)。
これより御覧にいれまするは、森村泰昌による一人芝居。全8幕の活人画。あれやこれや総勢11人の人物に変身する手品でございます。お題は、スペインバロックの巨匠ディエゴ・ベラスケス画伯によりまする、あの名作「ラス・メニーナス」。思い起こせば1990年、ベラスケス描くところのマルガリータ王女に扮したあの日から、あたため続けた大芝居。23年の歳月を経て、ようやく皆々様にご披露させていただく仕儀となりました。舞台はマドリードのプラド美術館。くだんの名画「ラス・メニーナス」の展示室。静寂に包まれた夜の館内にて、不肖わたくし森村が、「ラス・メニーナス」と御対面。するとあら不思議。絵画の中の画家のアトリエと、美術館の展示室がつながって、共々何処かにワープする。ワープの行き先はどこ。此岸を越え出た冥界か、はたまた宇宙の時空のねじれの狭間か。とにもかくにも森村は、絵画鑑賞という創造力を駆使し、妄想の暴発を促して、絵画の中に紛れ込もうといたします。絵画と鏡と扉の三面鏡。画家とモデルと鑑賞者の視線の蔓の縺れ。静寂に包まれたバロック世界が沈黙のうちにうねうねとねじれ続けて、さてその先にはいかなる結末が待ち受けているのでしょうか。それは見てのお楽しみ。絵画の迷宮を彷徨う旅人による、およそ350年のときを駈け逃げ冒険譚。皆さま、視線の迷子になりませぬよう、目を見開いて、とくと御覧あれ。
森村泰昌 2013年秋
「森村泰昌展 ベラスケス頌:侍女たちは夜に甦る」
本展では、17世紀スペイン絵画の巨匠、ディエゴ・ベラスケスの名画「ラス・メニーナス」をテーマにした写真作品を17点展示する予定です。「ラス・メニーナス」は、通常絵画の外にいる画家が絵の中に登場し、画家・モデル・鑑賞者の立場と視線が行き交う、複雑な構図により成り立っています。この絵はどんな目的で描かれたのか、絵の中のキャンバスに描かれている対象は誰だったのかなど、多くの謎を持つ作品で、これまでにさまざまな解釈がなされてきました。森村は1990年に「美術史の娘」のシリーズで、ベラスケスが描いたマルガリータ王女をもとにした作品を制作しました。いつかは「ラス・メニーナス」についての作品を制作したいと、そのときから考えていた森村は、「ラス・メニーナス」を再現するだけではなく、この絵画をもとに森村が新たな物語をつくり、“全8幕の一人芝居”として表現します。作品の背景となる美術館の部屋は、今年2月にマドリッドのプラド美術館で撮影してきました。登場人物の撮影は、6月末から7月初めに森村が客員教授を務める京都市立芸術大学で、特別授業として学生たちに公開制作するというかたちで行われました。本展では、物語の場面となる写真作品と、登場人物の肖像写真など、総数17点を展示する予定です。これまで森村は絵画や写真のフレームの中を意識して作品をつくってきましたが、今回は登場人物がフレームの外の美術館に現れるというダイナミックな展開が繰り広げられます。また、扮装していない森村自身が初めて作品に登場します。西洋絵画を代表する作品に独自の解釈と想像力が加わった、謎めいていてスリリングな森村泰昌の美の世界をお楽しみください。
なお、品川の「原美術館 」では、森村泰昌の「レンブラントの部屋、再び」が開催されています。
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