東京都美術館で「ターナー展」を観てきました。観に行ったのは10月23日(水)、もう2週間以上経ってしまいました。思い出すのは府中市美術館で観た「ターナーから印象派へ」です。図録を見てみると、2009年11月から翌年2月まで開催していたものです。図録には川村錠一郎(一橋大学言語社会研究科名誉教授)の「イギリスの風景画 ラスキンの影、ターナーの光」という興味深い論文が載っています。
ジョン・ラスキン(1819-1900)の「現代画家論」のなかで、「偉大な画家」ターナーの作品について検証しているという。ここでは詳細は省くが、1点だけ、ラスキンによるとターナーの作品の色彩は保存が難しく初出時から後、鮮度がかなり落ちていくものがかなりあることを指摘しているという。従って、色彩に関しては私たちの持つターナーのイメージはかなり修正されるべきなのかもしれない、と川村は言う。
府中市美術館で「ターナーから印象派へ 光の中の自然」展を観た!
東京藝術大学大学美術館で開催された「夏目漱石の美術展」では、第1章の「漱石文学と西洋美術」で最初に取り上げられていたのは、「坊っちゃん」のあの有名な一節でした。
「あの松を見給へ、幹が真直で、うえが傘の様に開いてターナーの画にありそうだね」と赤シャツが野だに云ふと、野だは「全くターナーですね。どうもあの曲り具合つたらありませんね。ターナーそつくりですよ」と心得顔である。ターナーとは何の事だか知らないが、聞かないでも困らない事だから黙って居た。・・・すると野だがどうです教頭、是からあの島をターナー島と名づけ様ぢやありませんかと余計な発議をした。赤シャツはそいつは面白い。吾々は是からさう云はうと賛成した。(「坊ちゃん」五)
その時、実際に出されていたのは、ターナーの「金枝」という作品で、今回出ていた「チャイルド・ハロルドの巡礼」はたしか写真が展示されていたように記憶しています。「坊ちゃん」に書かれた松は、愛媛県松山市の「四十島」だそうで、漱石がどちらの絵を見たのかは分かりませんが、両作品とも一本松であるのは変わりはありません。いずれにせよ、漱石をも魅了したという「チャイルド・ハロルドの巡礼」が、今回の目玉であることは間違いありません。
東京藝術大学大学美術館「夏目漱石の美術世界展」内覧会へ行った!
風景画の可能性と、英国絵画の地位を飛躍的に高めたターナーは、その生涯を通じて自身の絵画表現を追求し続ける求道者でした。ターナーの人生と作品の魅力については、以下の5つのテーマを切り口すると理解しやすいそうです。 キーワードに整理して言えば、「英国」「海」「イタリア」「光と大気」「崇高」、といったところでしょうか。
1. 「絵になる英国」を探して
2. 「海洋国家」の精神を誇る
3. イタリアに魅せられて
4. 光と大気を描く
5. 大自然への畏怖をかたちに
ターナー展記念号外の「朝日小学生新聞」の「ターナーギャラリー」を見ると、ターナーの画家としての歩みが分かり易く書かれています。
最初の船の絵は、日本と同じように海に囲まれた母国イギリスが海に強いことを絵にした「スピットヘッド:ポーツマス港に入る拿捕された二隻のデンマーク船」(1808年発表:33歳頃)、とてつもない自然の力に驚き絵にした「グリゾン州の雪崩」(1810年発表:35歳頃)、イタリアを旅して描いたローマの風景「ヴァティカンから望むローマ、ラ・フォルナリーナを伴って回廊装飾のために絵を準備するラファエロ」(1820年発表:45歳頃)、北イタリア、ベネチアの風景「ヴェネツィア、嘆きの橋」(1840年発表:65歳頃)、海と湖の景色「平和―水葬」(1842年発表)「湖に沈む夕陽」(1840~45年頃:65~70歳頃)。年を重ねるとともに、ものははっきりとした姿を失い、空や海の光そのものに画家の関心が移っていくことが分かります。
ジョゼフ・マロード・ウィリアム・ターナー(1775-1851年)
生涯一貫して風景表現の可能性を探究し続けた、英国ロマン主義を代表する画家。早くから画家を志し、弱冠26歳で当時英国美術界の最高権威であったロイヤル・アカデミーの正会員となった。信念を貫く寡黙な人柄で知られ、終生画業に専心したと伝えられている。それまでの風景画のあり方を超えた独自の画風は、後のモネら印象派の画家にも影響を与えたとされる。
「ターナー展」
風景画家として西洋美術史に燦然と輝く足跡を残し、今日なお英国最高の巨匠と称賛されるジョゼフ・マロード・ウィリアム・ターナー(1775-1851年)の展覧会を開催します。世界最大のコレクションを誇るロンドンのテート美術館から、油彩画の名品30点以上に加え、水彩画、スケッチブックなど計110点を紹介。才能のきらめきを示す10代の習作から、若くして名声を確立しながらも、批判を恐れず新たな表現を追求し続けた壮年期の代表作、かつて誰も試みたことのない方法で光と大気を描きだした晩年の到達点まで、栄光の軌跡をたどります。日本でまとめて見る機会が少ない巨匠の待望の大回顧展です。
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