ポレポレ東中野で、石山友美監督作品「少女と夏の終わり」を観てきました。石山監督の長編デビュー作で、簡単に言えば、二人の中学生の少女を中心に山間の村に展開する一夏の物語です。
最初からいきなり、主役の2人、瑞樹と薫がキスするシーンがあります。中学生の瑞樹は、床屋の父親と二人暮らしです。物心つく前に姉が強姦され殺されていました。姉が殺害されたときと同じ年齢に達した瑞樹は、大人の身体へ成長することに戸惑いを見せます。親友の薫は製材所の娘です。薫は夏休み以降、男子の見る目が自分ではなく瑞樹に向かっているのに気づきます。そして、薫は瑞樹に恋心を寄せる浩に、「瑞樹は処女ではない」と嘘をつきます。瑞樹は製材所の青年に、淡い恋心を抱いていたのです。
一方、村で製材所を営む薫の父(圭一郎)は、地域に温泉ランドを建設しようとしている人たちと対立して、ますます孤立していきます。そんな圭一郎のもとに東京から研究者の日高が調査に訪れ、圭一郎の山にも異変が起きていると言います。果たして、若い娘を生贄に出さないと山が枯渇するという、村の伝説と関係があるのかどうか。ある時、防虫液の散布で山へ入った日高が熊に襲われて崖から落ち、、道に迷い遭難します。瑞樹は姉が死んだ山の祠へお供えに行き、遭難した日高と出会います。日高を助けたのは、実は村のお婆さんでしたが、日高と瑞樹は目配せして瑞樹が助けたことにしておきます。
「少女と夏の終わり」は、単に少女の成長劇だけではなく、様々なエピソードが重層した群像劇になっていて、さすがは日本女子大で建築を学んだ石山監督、建築的な構成に観るうちにどんどん引込まれます。選挙の結果は、おおかたの予想通り「池上あきら」が勝利します。薫の父親の製材所も、経営に行き詰まり、従業員を手放さざるをえなくなりました。主人公の2人の少女は、最初と最後で見違えるように美しく成長し、変化します。幼なじみの2人、瑞樹は生まれ育った山村を旅立ち、薫は残ります。最初と最後に少女たちの長回しがあります。キャストは、演技がたどたどしく、ほとんどがプロの俳優ではなく、シニア劇団の役者や監督の人脈で集められた人たちだという。
エンドロールに出てきた「浜中木材」の名を見たときに、「ああ、やっぱり」と思いました。1994年のこと、日の出町の浜中木材の製材所を訪ねました。その後、何軒かの住宅を、東京の木でつくるのもいいかと思い、いわば産直という形で、木材を浜中木材にお願いしました。それだけでなく、その時は奥多摩の大工さんに木材の加工をお願いし、建て方以降は東京の工務店がやるという形を取りました。その頃から、奥多摩の木材をどうしたらいいのかという、林業家、製材所、工務店、設計事務所の会合に何度か出たりもしました。たしか、泊まりがけで行ったこともあったように思います。
石山友美：略歴
東京都出身。日本女子大学家政学部住居学科修了。ニューヨーク市立大学都市デザイン学科修了。在米中に大学でジョアン・コプチェックの「都市と映画」をテーマにした講義を受けたことをきっかけに映画制作に興味を持つようになり、帰国後は沖島勲監督に師事。沖島勲監督作の自主映画「怒る西行」(09)に出演。本作が長編映画第1作。父親は早稲田大学教授で建築家の石山修武です。
以下、とりあえず「シネマトゥデイ」より引用しておきます。
チェック：第25回東京国際映画祭「日本映画・ある視点」部門で上映され、注目を浴びた群像ドラマ。とある山村で生活している少女たちの精神と肉体の成長を、村で起きるさまざまな出来事を絡めながら映し出していく。監督は、『ニュー・ジャック&ベティ』『怒る西行』などの沖島勲に師事し、本作で長編映画デビューを果たした石山友美。『Lost & Found』の菅原瑞貴、『スマグラー おまえの未来を運べ』の加治木均ら、50人以上のキャスト陣が濃密なストーリーを構築。舞台となる村や山々を捉えた美しい映像にも息をのむ。
ストーリー：思いも寄らぬ早さで肉体が発育し、戸惑うばかりの女子中学生の瑞樹（菅原瑞貴）。悩む彼女を何かと気遣う親友の薫（上村愛）だったが、これまで自身に向けられていたクラスメートたちの視線が大人びてきた瑞樹に向けられていることに複雑な気持ちを抱く。一方、彼女たちの暮らす村では山の木々が枯れたり、その調査で東京から研究者が訪れたり、温泉ランド建設をめぐる村長選挙が迫ったりと、騒がしくなってくる。そんな中、薫がついたうそに村人たちの思惑やうわさ話が絡まって、とんでもない事態が起きてしまう。
「少女と夏の終わり」公式サイト