板橋区立美術館で「狩野派SAIKO!~再興!最高!再考?狩野派再点検~」を観てきました。
安村敏信は1953年、富山県生まれ。東北大学大学院修士課程(日本美術史)修了。1979年より板橋区立美術館に勤務。 現在は同館の館長を務めています。その安村の著作、「江戸絵画の非常識 近世絵画の定説をくつがえす」(敬文舎:2013年3月23日第1版第1刷発行)を読み、大胆な指摘に大いに刺激を受けました。
安村敏信の「江戸絵画の非常識 近世絵画の定説をくつがえす」を読む!
その安村が板橋区立美術館の企画に長らく携わってきているので、それはもう安村の体臭がプンプンするような企画ばかりです。惜しむらくは、美術館が駅からちょっと遠いだけ。そのためか「幟」には自虐的なキャッチが毎回書かれています。
室町時代から江戸時代にかけて、幕府の仕事を一手に請け負ってきた絵師の専門集団である狩野派を、「創造性がない」と批判することも数多いが、安村は狩野派を擁護し、これに反論しています。それが「江戸絵画の非常識」の中の常識その三「江戸狩野派は粉本主義によって疲弊し、探幽・常信以降は見るべきものがない。」の中で、その「常識」に反論しています。例えば「粉本をつくらずして流派が成り立つのだろうか」とか、狩野典信の「大黒図」を取り上げ、狩野派が本来もつべき漢画の力強い墨線の復活によって、江戸狩野派を再生しようという変化への石が感じられる画家である、としています。
今回のタイトルが「狩野派SAIKO!~再興!最高!再考?狩野派再点検~」です。語呂合わせというか、駄洒落の連続で、笑っちゃいます。このタイトルを見ただけで、狩野派を擁護していることは十分伝わってきます。いわゆる館蔵品展で、入場料は「無料」という太っ腹です。始祖の狩野正信から、元禄風流子・英一蝶、そして幕末の河鍋暁斎までの作品が展示されています。暁斎の作品は3点、展示されていて、なかでも酔った勢いで一気に描いたという「骸骨図」(ホネ・骨・ロック)は、暁斎の才能を余すことなく伝えています。
狩野派SAIKO!
~再興!最高!再考?狩野派再点検~
狩野派SAIKO!
~再興!最高!再考?狩野派再点検~
板橋区立美術館の古美術コレクションは、狩野派の作品がひとつの核になっています。狩野派とは、血縁関係で続いた狩野家を中心とする専門絵師の集団で、常に幕府の仕事を行った一派です。室町時代から江戸時代まで400年にわたり、日本絵画史上の最大勢力でありつづけました。今回の館蔵品展では、当館の狩野派コレクションを中心に、始祖の正信から幕末の河鍋暁斎までの作品を展示し、多様な狩野派をご覧いただきます。秀頼(ひでより:国宝「高雄観楓図屏風」の作者)や、内膳(ないぜん:重文「南蛮屏風」の作者)などの珍しい作品のほか、江戸時代の女性画家である清原雪信(きよはらゆきのぶ)、融女寛好(ゆうじょかんこう)、表絵師の春雪(しゅんせつ)、了承(りょうしょう)など、知られざる狩野派絵師たちの作品が満載です。展示作品のいくつかには「SAIKO!ポイント」をつけ、再興・最高・再考をキーワードに、絵画史上の注目点を解説しながら、当館の狩野派コレクションを再点検します。
「板橋区立美術館」ホームページ
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