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三菱一号館美術館で「浮世絵Floating World」第3期を観た!

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三菱一号館美術館で「浮世絵Floating World」第3期を観てきました。今回の浮世絵展、なにはともあれ第1期、第2期、第3期と必ず観ること、浮世絵を「通史」として観ること、という個人的にささやかな目標を立てました。そして、それからなにが分かるのか? 全体を3つに分けた分け方、今まで分かっていたようで、実はよく分かっていなかった浮世絵の大きな歴史のことが、分かったような気がしてきました。


以前、千葉市美術館で観た「芳年・芳幾の錦絵新聞」展を観たときに、浮世絵展としてはなんかしら違和感を感じました。また、先日大田区立郷土博物館で観た「馬込時代の川瀬巴水展」、これも浮世絵なのか、自分の中で整理がつかないままでした。要するにこれらが、おおよそ今回の第3期にあたるというわけです。


大久保純一の「カラー版 浮世絵」でも、浮世絵の創始者として取り上げられていた菱川師宣の浮世絵は、房総の菱川師宣記念館まで観に行きました。ほとんどの作品が墨一色でしたが、あまりにも有名な「見返り美人図」には驚きました。たまたまその時に観たのは、「房総の広重―描かれた房総の風景―」展で、新に発見された肉筆画「宝珠と熨斗」や「花鳥人物画帖」など、貴重な新資料が初公開されていました。これらは第1期にあたるわけです。


やはり浮世絵と言えば、北斎や広重です。それだけ作品がポピュラーで分かり易い。万人受けの作品が多いことにもよります。またそれらの作品は海外での評価も高く、ジャポニズムとして欧米の芸術家にも影響を与えています。実は、ここでは意識してロートレックの作品は取り上げていません。歌麿が描いた「青楼十二時 続」の遊女と、ロートレックの「彼女たち(エル)」の娼婦たち、共通の女性の心理があり、ペーソスがあり、姉妹作のように見えて印象的だと、高橋館長は言います。


そういえば、ある時、ある浮世絵展で「柱絵」を観て驚いたことを思い出しました。江戸庶民の暮らす長屋の柱に貼って飾るように考えられています。第1期では、勝川春章の「五條大橋 牛若丸と弁慶」や、礒田湖龍斎の「渡辺綱と茨木童子」といった分かりやすいテーマの柱絵が出されていました。最後を飾ったのは、あのチャールズ・ワーグマンの横長の作品「明治風俗往来図」でした。


今回、三菱一号館美術館では、いわゆる斎藤コレクション、川崎・砂子の里資料館の約500点余りの浮世絵を、3期に分けて展示していました。それは、以下の通りです。

第1期 浮世絵の黄金期―江戸のグラビア

第2期 北斎・広重の登場―ツーリズムの発展

第3期 うつりゆく江戸から東京へ―ジャーナリスティック、ノスタルジックな視線


斎藤館長は、以下のように述べています。

浮世絵の全貌を観てもらいたいので、斎藤コレクションから「これぞ浮世絵」という作品を厳選したこと。会場が明治時代の建物だから、19世紀にタイムスリップして、欧米人が自宅に浮世絵を飾って楽しむ様子も体験してもらえること。


第1期では、錦絵誕生以前を含む初期の浮世絵と、美人絵や役者絵といってオーソドックスな作品を紹介し、江戸時代の庶民の楽しみであった浮世絵の現展を観ていただきたい。

第2期では、十返舎一九が刊行した「東海道中膝栗毛」が大ヒットし、旅ブームを起こした社会状況を背景に、北斎や広重によって確立された名所絵をみていただきたい。このジャンルの代表作として、世界的に認められている北斎の「冨嶽三十六景」と、広重の格調高い名所絵の「東海道五拾三次之内」があります。

第3期では、江戸から東京への移り変わりを観ることができます。明治維新を境に、江戸と東京の違いが名所絵にも現れています。


もう一つ、展示の仕方に今までにない工夫がなされていました。小部屋が多い三菱一号館美術館のなかで一番大きな部屋で、縦型のガラスケースに特別な照明を当てて、作品を1枚ずつ展示してあるところは壮観でした。


うつりゆく江戸から東京へ―ジャーナリスティック、ノスタルジックな視線










肉筆浮世絵





浮世絵Floating World これぞ浮世絵!
「はかない世の中であるならば、せめて浮かれて暮らしたい」という江戸の人々の気分を反映した浮世絵。現実とも享楽の世界とも思える“Floating World”を鮮やかに描いた浮世絵は、好奇心のまま最先端の風俗や事象を捉え、江戸の人に留まらず、19世紀には欧米の人々を魅了し、さらに現代の私たちの心をも浮き立たせる華やかな光景に溢れています。本展は、会期中2度の展示替えを行い、3期に分けて江戸から明治まで、浮世絵の誕生から爛熟に至る全貌を500点を超える作品によりご紹介します。川崎・砂子の里資料館長・齋藤文夫氏の膨大な浮世絵コレクションから、連作などの他に類例を見ない稀少性の高い浮世絵版画、肉筆画の名品を展示するとともに、浮世絵の影響を受けたロートレックをはじめとする当館所蔵ヨーロッパ近代版画を対比させ、時代や地域を越えた浮世絵の普遍的な魅力に迫ります。明治期の建物を復元した当館において、西洋建築空間で浮世絵をご覧頂くことで、19世紀欧米人が浮世絵を飾っていた室内を追体験するかのような展示空間もお楽しみ下さい。


「三菱一号館美術館」ホームページ


とんとん・にっき-uki7 浮世絵
珠玉の齋藤コレクション

Floating World

図録

発行日:2013年6月22日

発行:三菱一号館美術館








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