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Channel: とんとん・にっき
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中見真理の「柳宗悦―『複合の美』の思想」を読んだ!

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とんとん・にっき-yana

中見真理の「柳宗悦―『複合の美』の思想」(岩波新書:2013年7月19日第1刷発行)を読みました。柳宗悦足跡を考えると、どうしてもウィリアム・モリスと比較してみたくなります。柳はモリスと比較されるのを厭がり、強く反撥していたようですが・・・。小野二郎の「ウィリアムモリス ラディカル・デザインの思想」と中見真理のこの本は、それぞれの「思想」を浮き彫りにするという意味では、同じような印象を持ちました。読もうと思って購入しておいた本、大内秀明の「ウィリアム・モリスのマルクス主義 アーツ&クラフツ運動を支えた思想」(平凡社新書:2012年6月15日初版第1刷)は、帯に「マルクスの正統な後継者は、ウィリアム・モリスである」とあるので、読むのは棚上げになっています。あまり「思想」の側から攻められても、読解力のない僕は辟易するだけです。


中見真理の「柳宗悦―『複合の美』の思想」も、帯にはややセンセーショナルに、以下のようにあります。
暴力連鎖の現代社会に必要な思想とは?
文化の多様性、非暴力を重んじた生涯を浮き彫りにする


「まえがき」には、以下のようにあります。
柳は人であれ、地域、民族であれ、それぞれがもてる資質を最大限に発揮し、互いが互いを活かすことによって世界全体がより豊かになるよう願いながら、社会通念と闘い続けた思想家であった。そのような人物として、近現代日本の思想史上独自の位置に立ち、しかもその独自性によって、現代の問題に対しても多くの示唆を与えてくれる。暴力連鎖のやまない世界の現状から抜け出す方法を模索したいと考えるとき、あるいは人心の荒廃した現代社会のなかで、質の良い人間関係を取り戻したいと願うとき、柳の生涯から学べることは、きわめて多いのではないか。


もちろん、柳の生涯、民芸の活動についても多くのことが書かれていますが、いままで「民芸の柳」として語られることの多かった柳宗悦を、民芸を超えて多様な活動をした人物として、「複合の美」を求めた平和思想家として、著者は描きだそうとしています。「複合の美」の平和思想については、やや分かりづらいのですが、著者は柳の次のようなことばを紹介しています。「野に咲く多くの異なる花は野の美を傷めるであろうか。互いは互いを助けて世界を単調から複合の美に彩るのである」と記しています。各国の特色をなくして「一色」を目指すような「国際主義」に反対し、各々の独創に活き、お互いが寄与し合ってこそ世界の文化は進む、と説いていました。


柳は、「日本の国宝」の多くが朝鮮や中国のもの、もしくはそれらの模倣だと認識し、日本の美の独自性について疑問を持つようになります。柳宗悦といえば、木喰仏を偶然発見したこと。木喰上人は1000体以上の仏像を彫ったとされ、現在600体以上が残されており、柳は短期間の内に約350体を見つけ出したという。木喰を著書にまとめ、木喰の展覧会を開催したのは、柳が木喰仏を日本から生まれた日本固有の仏教芸術ととらえたからだという。柳は陶芸家の河井寛次郎や浜田庄司とともに民衆的工芸を略した「民芸」という言葉をつくりだし、無名の工人の作った健康な美を示す日曜雑器を民芸と呼ぶことにしました。


興味深かったのは「パッシヴ・レジスタンス」という言葉です。太陽光の利用の際、太陽熱を取り込むのに、動力を使って機械的に行うシステムを「アクティヴ・ソーラーシステム」と言い、機械を使わない方式を「パッシヴ・ソーラーシステム」と言います。「パッシヴ・レジスタンス」は非暴力的抵抗の意味。柳はブレイクやラッセル、そしてクエーカーの思想に学んだという。「無抵抗主義」は、何もしないことではなく、非暴力による抵抗を意味するのだと、柳は明確に認識していたという。その延長上で、カンディーの「無抵抗主義」=非暴力不服従運動に極めて高い評価を与えています。


朝鮮や中国の他にも、柳は沖縄をはじめ、東北、アイヌ、台湾の文化など、周辺地域の文化にも目を向けます。次第に柳は、浄土真宗へ積極的な関心を示します。一遍上人と妙好人の研究も進めます。そして「無対辞思想」に到達します。




著者紹介
中見真理(なかみ・まり)1949年東京生まれ。一橋大学大学院法学研究科博士課程(外交史・国際関係論)単位取得退学。現在、清泉女子大学文学部教授。専攻は、国際関係思想史。著書に、『柳宗悦 時代と思想』(東京大学出版会、2003年:同韓国語版、金順姫訳『柳宗悦 評伝:美学的アナキスト』ソウル:暁享出版社、 2005年)、 In Pursuit of Composite Beauty: Yanagi Soetsu,His Aesthetics and Aspiration for Peace (Trans Pacific Press & University of Tokyo Press,2011)主要論文に、「清沢冽の外交思想」(『みすず』19-7、1977年7月)、「太平洋問題調査会と日本の知識人」(『思想』728、1985年2月)、「日本外交思想史の研究領域を考える―戦後日本の平和論を問題にしつつ」(『年報近代日本研究』10、1988年)、「ジーン・シャープの戦略的非暴力論」(『清泉女子大学紀要』57、2009年)。


目次
まえがき―柳宗悦を「民芸」から解き放つ
序章  いまなぜ柳思想に目を向けるのか
第1章  生涯の素描
第2章  相互扶助思想の受容と民芸の位置
第3章  朝鮮への想い
第4章  独自の平和思想の形成
第5章  「周辺」文化へのまなざし
第6章  開かれた宗教観
終章  柳思想の何を継承するのか
あとがき
主要参考文献
略年譜
索引


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