ブリヂストン美術館で「日本人が描くParis 、パリ、巴里―1900-1945」を観てきました。佐伯祐三の作品が、6点も出されていて圧巻でした。チラシになっている佐伯の作品は「テラスの広告」(1927年)、石橋財団ブリヂストン美術館蔵のものですが、大阪市立近代美術館建設準備室蔵の「レストラン(オテル・ヂュ・マルシュ)」(1927年)も、同じ場所を描いている作品のようです。パリと言えばやはり藤田嗣治です。やはり6点が出されていました。出された作品数だけが判断の基準ではないのですが、次いで坂本繁二郎の作品が5点、浅井忠の作品が4点出されていました。
黒田清輝の「ブレハの少女」(1891年)は、今回出された中では最も古い1800年代の作品です。少女の姿が薄幸そうで、しかも貧困にあえいでいるように見え、以前から気になっていた作品です。ブリヂストン美術館のコレクションの解説があったので、以下に載せておきます。
1891年9月、黒田清輝は友人の画家・久米桂一郎と、パリを発ってブルターニュ半島のサン=マロ湾に浮かぶブレハ島に遊びました。この島の変化に富み風光明媚な景色やケルト系住民の風俗を喜び、同じように訪れた画家たちとの交流も楽しんだ黒田は、約1カ月滞在します。その間に海岸風景に加え、現地の子どもをモデルに雇って人物画を描きました。少女の燃え立つような赤毛、狂気をはらんだような眼差し、手に持つ布きれの黄色、左右で大きさの異なる靴、大きく欠けた碗。画面を覆う筆遣いも荒々しく、穏健な画風を示す黒田には珍しく、激しい表現がちりばめられた作品です。旅先での自由な空気が、彼の内面の熱情を引き出したのでしょう。
パリでも親しかったという浅井忠と和田英作の、同じ女性をモデルに描いた作品が出されていました。タイトルも同じ「読書」で、浅井は正面から、和田は左斜めから描いていました。同様の例として、大正9年9月、中村彝と鶴田吾郎が盲目のロシア人エロシェンコをモデルに競作しました。第一次世界大戦中、パリの日本人画家は激減したなかでフランスに留まった数少ない一人が藤田嗣治でした。大戦末期の1917年前後、パリの郊外や都市風景を哀愁に満ちた色調で描き始め、やがて1920年代に入ると、乳白色の下地に日本画の面相筆で裸婦や静物画を描く様式を確立させ、パリ画壇の寵児となりました。
小出楢重の「帽子をかぶった自画像」(1924年)は、帽子を被り背広を着て、パレットを右手に絵筆を左手にカンヴァスに向かっている作品でブリヂストン美術館で常時展示してありましたが、「パリ・ソンムラールの宿にて」(1922年)は、三重県立美術館蔵のもので、5ヶ月ほどのパリ滞在時に描いたもので、暗い色調が印象的でした。
児島善三郎は、1924年から1928年にかけてフランスに留学し、アンドレ・ドランのフォービズムによる量感あふれる裸婦の表現から多くを学んだとういう。「立つ」(1928年)はその成果が現れています。伊原宇三郎は1925年農商務省の海外実習練習生として渡仏します。ピカソら同世代の画家たちに共感をよせる一方、ルーヴル美術館に通いながら、ドミニク・アングルの「グランドオダリスク」を模写しました。こうしてモニュメンタルで古典の静かな香気が漂う画風が確立され、「椅子によせる」はその成果といえます。
展覧会の構成は、以下の通りです。
第1章 パリ万博から第一次世界大戦まで 1900-1914
第2章 黄金の1920年代と両大戦間期 1918-1945
第1章 パリ万博から第一次世界大戦まで 1900-1914
第2章 黄金の1920年代と両大戦間期 1918-1945
「Paris、パリ、巴里―日本人が描く 1900-1945」
明治維新以降、西洋文化を学んでそれを乗り越えることが、日本のひとつの目標となりました。日本人洋画家にとって、芸術の都パリは、19世紀末から聖地となります。いつか訪れてその空気を吸い、泰西名画や最新の美術に直に触れてみたい、と強く憧れる対象となりました。1900年以降、パリを訪れる洋画家たちが増えていきました。聖地パリで、あるものは衝撃を受け、あるものは西洋美術を必死に学びとろうとし、またあるものは、西洋文化の真っ只中で日本人のアイデンティティーを確立しようと試みます。ブリヂストン美術館と石橋美術館のコレクションから、浅井忠、坂本繁二郎、藤田嗣治、佐伯祐三、岡鹿之助たちがパリで描いた作品約35点を選び出し、さらに他館から約5点の関連作品を加えて、日本人洋画家にとってのパリの意味を考えてみます。20世紀前半の、生き生きとした異文化交流のありさまをお楽しみください。
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