第2次世界大戦におけるホロコースト、ユダヤ人への迫害を描いた映画は数多くあります。しかし、ナチス占領下のパリで行われたユダヤ人迫害、「ヴェルディヴ事件」は、僕は「黄色い星の子供たち」を観るまでは、知りませんでした。1942年の夏、ドイツに占領されたパリで、フランス政府はドイツのユダヤ人狩りに積極的に協力することになります。パリのユダヤ人居住区を一斉摘発し、劣悪な環境の室内競技場に押し込め、そして収容所へと送り込みます。
「サラの鍵」は、二つの時代のパリの二人の女性が交互に描かれます。一つは1942年夏、ユダヤ人として生まれた幼い少女サラです。そしてもう一つは現代、パリに住むアメリカ人女性ジャーナリストのジュリアです。
1942年、ユダヤ人の少女の家に、警官が押しかけた直後、少女は納戸を開けて、おびえる幼い弟に「ここに入りなさい」と言う。「私が戻るまで、出てきちゃ駄目よ」と言い聞かせ、納戸に鍵をかけます。サラは父母と共に狩り立てられ、室内競技場へ押し込まれます。サラは家に帰りたいと思います。「この鍵で納戸を開けなければ、弟は死んでしまう」と。収容所へ移動するときに父母とは引き離されても、納戸の鍵は持ち歩きます。サラは、監視する警官に「家に帰して欲しい」と懇願し、脱走を企て成功します。
一方、現代のパリに住む女性ジャーナリストのジュリアは、雑誌でフランスでのユダヤ人迫害の記事を担当することになります。同じ頃、夫の家族が所有するアパートの部屋を改築することになります。そのアパートのあるところはパリの古い街であるマレ地区、ユダヤ人が多く住んでいた地区でした。ジュリアは、アパートは夫の家族が1942年8月に手に入れたものだと知ります。ジュリアは直感で不穏な過去を思い浮かべて、そのアパートの過去の持ち主を調べ始めます。
もちろん「サラの鍵」は、ユダヤ人迫害をテーマに描いていますが、もう一つ、ジャーナリストは「真実」のためには、人を傷つけることになってもいいのかという、根本的な問題をもテーマにしています。取材対象者からは、なんの資格があって私たちの人生に踏み込んでくるのかと言われたりします。これは永遠に解決不能な問題です。ジュリアは高齢で妊娠し、夫からは「いまさら赤ん坊に振り回されるのは嫌だ」と、堕胎を勧められていたりもします。サラの「鍵」は、単に納戸の扉を開けるだけではなく、人生そのものを開ける「鍵」なのだと気がつきます。
以下、とりあえずシネマトゥデイより引用しておきます。
チェック:ナチス占領下のパリで行われたユダヤ人迫害、ヴェルディヴ事件を題材に、過去と現代を交錯させながらユダヤ人一家に起こった悲劇を描く感動的な社会派ドラマ。世界中で300万部を売り上げたタチアナ・ド・ロネの原作を基に、『マルセイユ・ヴァイス』のジル・パケ=ブランネール監督が映画化。『イングリッシュ・ペイシェント』などのクリスティン・スコット・トーマスが、アウシュビッツについて取材するジャーナリストを好演。次第に解き明かされる衝撃の事実とラストに胸を打たれる。
ストーリー:1942年、ナチス占領下のパリ。ユダヤ人一斉検挙によってヴェルディヴに連れてこられた人々の中に、少女サラはいた。それから60年後。パリに暮らすアメリカ人ジャーナリストのジュリア(クリスティン・スコット・トーマス)は、アウシュヴィッツに送られた家族を取材するうちに、かつて自分のアパートで起こった悲劇を知ることとなる。
「サラの鍵」公式サイト
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