大倉集古館で、館蔵品展「画の東西~近世近代絵画による美の競演・西から東から~」を観てきました。観に行ったのはお正月気分が抜けきれぬ1月3日のことでした。
大倉集古館と言えば、僕の中では「追憶の羅馬展 館蔵日本近代絵画の精華」、その時に出されていた横山大観の「夜桜」と前田青邨の「洞窟の頼朝」です。この二つの傑作を所蔵しているんですね、大倉集古館は。今回の「画の東西」、後期、2月19日から大観の「夜桜」が出てきます。
今回の目玉はなんと言っても横山大観の「瀟湘八景」でしょう。これもやはり「追憶の羅馬展 館蔵日本近代絵画の精華」に出されていました。大倉集古館蔵の「瀟湘八景」は、「山市晴嵐」「遠浦帰帆」「洞庭秋月」「瀦湘夜雨」「姻寺晩鐘」「漁村返照」「平沙落雁」「江天暮雪」です。8幅のうち、前期は「洞庭秋月」「瀟湘夜雨」「姻寺晩鐘」の3幅、後期は「漁村返照」「平沙落雁」「江天暮雪」の3幅が展示されます。
横山大観の「瀟湘八景」は大倉集古館だけではなく、茨城県立美術館蔵の「瀟湘八景」があります。また国立博物館でも所蔵しています。
国立博物館の「瀟湘八景」は、大正元年(1912)第6回文展に出品されたもので、中国旅行より帰った直後の成果であり、古来親しまれた東洋画の主題にいどみつつ、その伝統に対し大観独自の新解釈を示した記念的作品である、といわれています。 大観の「瀟湘八景」について、夏目漱石の「文展評」をネットで見つけました。
「大観君の八景を見ると、…横山大観に特有な八景であるといふ感じが出てくる。君の絵には気の利いた様な間の抜けた様な趣があって、大変に巧な手際を見せると同時に、変に無粋な無頓着な所も具へている。君の絵に見る脱俗の気は高士禅僧のそれと違って、もっと平民的な呑気なものである。八景のうちにある雁は丸で揚羽の鶴の様に無格好ではないか。さうして夫が平気でいくつも蚊のように飛んでゐるではないか。さうして雲だか陸だか分らない上の方に無造作に並んでゐるではないか。またいかにも屈託がなさそうではないか。…」(新聞評論『文展と芸術』夏目漱石)
横山大観「瀟湘八景」
その他の作品
「画の東西~近世近代絵画による美の競演・西から東から~」
当館の所蔵する多彩な日本絵画の作品を、それらが生まれた地域を西・東に分けて陳べるという角度からご鑑賞頂く試みです。京を中心とする西からは狩野派の山口雪渓や円山四条派の円山応挙と呉春、近代京都画壇の雄・竹内栖鳳、また活動の初期を四条派に学んだ川合玉堂などの画業を展観します。一方、江戸に拠を移した東の作例としては、探幽を始めとする江戸狩野の画家と、その伝統を基に更なる発展を刻んだ横山大観等を選びました。西から東から、広がりながら継承されていく美の姿をお楽しみください。
「大倉集古館」ホームページ
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