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国分良成編「中国は、いま」を読んだ!

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国分良成編「中国は、いま」(岩波新書:2011年3月18日第1刷発行)を読みました。岩波新書は、僕はいつもチェックしている本です。今年は、3月11日の東日本大震災の発生を受けて、内橋克人編「大震災のなかで 私たちは何をすべきか」(6月21日発売)や、石橋克彦編「原発を終わらせる」(7月20日)を読みました。また、坂本義和著「人間と国家 ある政治学徒の回想(上・下)」を読みました。これは加藤周一著「羊の歌(上・下)」に誘発されて読んだものです。


実は、藤井省三著「魯迅―東アジアを生きる文学」(3月18日)を読もうと思って購入しておいたのですが、同時に発売された国分良成編「中国は、いま」の方が、先に読み終わりました。もう一つ、これは岩波新書ではなく、中公新書ですが、中国関連ということで、2011年度「大佛次郎論壇賞」を受賞した服部龍二著「日中国交正常化 田中角栄、大平正芳、官僚たちの朝鮮」(中公新書:2011年12月20日再版)も購入してあります。


本のカバーには、以下のようにあります。

日本のGDPを追い抜き、豊かな国への足がかりを確かにしている中国。一方、周辺諸国への強い姿勢やナショナリズムの高揚、軍事力の増大などが、不安や警戒感を生んでいる。「嫌中」意識や脅威論が高まりつつある今、政治・経済・社会・国際関係の専門家15名が、中国の現状を冷静に分析し、日中関係への提言を行う論集。


編者の国分良成は、1953年生まれ、慶應義塾大学法学部教授、現代中国論や東アジア国際関係の、気鋭の専門家です。国分は「私的な経験」として、中国政治研究を志したのは大学2年生の時。当時は文化大革命の時代であり、毛沢東も周恩来も健在だったが、この2人が死去したのが1976年、国分が大学院に進学した年でした。留学はアメリカが先で、中国に住んだことのない中国研究者だったことが、コンプレックスだったという。上海の復旦大学に留学がかなったのが、1987年。全国を旅してわかったことは、中国社会には表と裏という別世界があること、政治への不満以外の話も時には聞きたいと思うほど、裏では日常的に批判を耳にしたという。国分の帰国直後に起こった民主化要求運動と天安門事件は、その延長上のことだったという。


中国経済は2003年から07年にかけて二桁の高い成長が続き、リーマン・ショックにより成長はやや減速したものの、08年、09年も9%台の成長を維持し、10年は10.3%の成長を達成、この結果、中国は経済総量で日本を抜き、米国に次ぐ世界第2位の経済大国に浮上しました。(p153) その中国、なりふり構わぬ天然資源の獲得、軍備の拡張、東シナ海・南シナ海での威圧的な行動、オリンピックや万博やアジア大会など巨大イベントの相次ぐ開催、各国に対するノーベル平和賞受賞者・劉暁波氏の授賞式への欠席要請など、中国の行動は周辺国および世界をしばしば困惑させています。・・・外部から観れば理解しにくい行動を、なぜ中国をとるのか。(p125) 


なぜ中国政府は対外強硬姿勢をとるのか? 開発独裁と言える中国の政治体制は、民主化へと進むのか? 中国軍はどの程度統制されているのか、なにを目指しているのか? 市民たちの暮らしはどのような状況下、何を求め、どんな行動をとっているのか? 少数民族はどのような地位におかれ、これからどうなるのか?  中国の自画像とは歴史的にどう形作られたか。それが今どう作用しているのか? 中国経済はどんな問題を抱えているのか。それにどう対処しようとしているのか?  レアアースの「輸出禁止」は、なぜ起きたのか。何を意味する問題なのか? 東アジアのなかで中国とどのように向き合っていけばよいのか? そして、 これから中国はどこへ行くのか? こうした中国への疑問に15人の専門家が、この本で真摯に答えようとしています。(岩波新書編集部:小野寺耕明)


中華思想の伝統がいまなお色濃く、政治体制改革が立ち後れた中国で、改革開放の開始以降も、対外強硬論は間欠泉のように噴出します。1999年、鄧小平が示した「冷静に観察し、しっかりと足場を固め、沈着に対処し、能力を隠して力を蓄え、力に応じ少しばかりのことをする(冷静観察、穏住陣脚、沈着応対、韜光養晦、有所作為)」は、中国外交の基本方針とされます。しかし、総書記就任以来、協調的な外交方針を掲げてきた胡錦濤は、中国の大国化に伴い台頭する対外強硬論に抗しきれなくなります。胡は鄧小平が示した「韜光養晦、有所作為」という抑制的な外交方針を、「堅持韜光養晦、積極有所作為」、すなわち「能力を隠して力を蓄えることを堅持するが、より積極的に少しばかりのことをする」と修正します。


小泉首相の靖国神社参拝が引き金となった2006年までの日中関係の悪化と、2010年の尖閣諸島問題を契機とする日中関係の悪化は質的な変化があると、田中均はいう。靖国問題では中国政府は「政令経熱」と称して、首脳会談を停止する政治的措置をとっただけでしたが、尖閣問題では中国は人的交流の停止や、レアアース輸出の中断、日本企業関係者の光速といった、目的達成のためには手段を選ばない措置にエスカレートします。そのような中国に対して、従来のような官僚の縦割り体制でも、いわゆる政治主導体制でも困難である。政と官の役割分担を再確認し、官僚のプロフェッショナルなサポートの中で政治が判断していかなければならないと、田中はいう。


現在、中国論は巷に溢れている。しかしそれらの多くは、言い方はきついが、犬の遠吠えか自己満足になっている。それは中国が耳を傾けるものでなければならないし、中国側と真摯な会話と対話と議論を繰り返さなければならない。・・・いまの中国は、京劇のごとく、表面はきらびやかに派手な立ち回りを演じている。しかしそれは表面の物語であって、内実は苦しいはずである。・・・巨大な中国の出現にみなが右往左往する中で真に必要なことは、プロフェッショナルによる腰の据わった冷静な中国論の筈であると、編者の国分はいう。


■目次
はじめに 中国のいまをどう見るか 国分良成
第1章 対外強硬姿勢の国内政治 清水美和
   ―「中国人の夢」から「中国の夢」へ
第2章 改革開放時代の中国政治をどう捉えるか 唐 亮
   ―開発独裁モデルと近代化
◆視点・提言 日中は一緒にやっていける 緒方貞子
第3章 中国軍は何を目指しているか 浅野 亮
   ―軍事プレゼンス増大と自己認識
◆視点・提言 中国よ、戦前日本の道を歩む勿れ 五百旗頭真
第4章 下からの異議申し立て 小嶋華津子
   ―社会に鬱積する不安と不満
第5章 周縁からの叫び 星野昌裕
   ―マイノリティ社会と国家統合
◆視点・提言 日中関係への三つの提案 エズラ・ヴォーゲル(山口信治訳)
第6章 歴史を背負った自画像 高橋伸夫
   ―悲願の達成をめぐる苦悩
◆視点・提言 日中関係を支える人材づくりを 小林陽太郎
第7章 岐路に立つ中国経済 田中 修
   ―発展パターンの転換は可能か
第8章 テクノ・ナショナリズムの衝突 丸川知雄
   ―レアアースをめぐる日中関係
◆視点・提言 アメリカ、日本、そして中国 ジョセフ・S・ナイ(赤木完爾訳)
第9章 東アジアの中の中国 田中 均
   ―日本外交への視点
終 章 中国はどこへ行く 国分良成
あとがき
執筆者紹介


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