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出光美術館で「琳派芸術Ⅱ」(後期)を観た!

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出光美術館で「琳派芸術Ⅱ」(後期)を観てきました。観に行ったのは12月2日でした。出光美術館では、「琳派芸術」というタイトルで2011年1月に第1部と第2部として開催されたことがありました。そこでは「酒井抱一生誕250年 琳派芸術―光悦・宗達から江戸琳派」とあり、「第1部 煌めく金の世界」、そして「第2部 転生する美の世界」の2部構成となっていました。


出光美術館で「琳派芸術 第1部 煌めく金の世界」展を観た!
出光美術館で「琳派芸術 第2部 転生する美の世界」展を観た!


酒井抱一は、京都の俵屋宗達、尾形光琳らに継承された琳派芸術を、江戸の地に再興した「江戸琳派」の大成者として知られています。昨年、抱一生誕250年を記念した出光美術館での展覧会が、東日本大震災により途中閉幕となり、あらためて琳派芸術を鑑賞する機会として開催されたのが、今回の「琳派芸術Ⅱ」という展覧会でした。尾形光琳を意識して描いた酒井抱一の「風神雷神図屏風」「八ッ橋図屏風」など巧者な金屏風の代表作や、抱一が独自の美意識を表明した清冽な銀屏風の名品「紅白梅図屏風」という、琳派ならではの金銀の豊かな世界を一堂に観ることができるという贅沢な展覧会です。


前期はブログに書いたので、ここでは前期の載せなかった分と後期のみ展示されたものを取り上げています。ただし「Ⅰ 金と銀の世界」は、出品作品は前後期同じですので、前期をそのまま載せてあります。また工芸作品については、省略しています。


さて、今回の展覧会の構成は、以下の通りです。

Ⅰ 金と銀の世界

酒井抱一は、私淑する尾形光琳を強く意識した作品を制作しています。抱一が描いた「風神雷神図屏風」「八ッ橋図屏風」など、金地屏風の意欲作、また屏風の裏絵に銀地を採用し、冴えた白い輝きを放つ銀色の画面に、自己の瀟洒な美意識を表明した絵師でもあります。


Ⅱ 草花図の伝統

俵屋宗達以来、琳派の絵師たちが最も得意としている画題の一つが、「草花図」です。楚々として可憐な草花が、歴代の琳派の絵師たちによって、さまざまに表現されてきました。抱一の代表作である「十二ヶ月花鳥図屏風」は、先達の草花図や、尾形光琳の月次花鳥図を参考として生み出されました。


Ⅲ 江戸琳派の先駆者

酒井抱一より以前に、江戸の地で琳派様式を試みた絵師に立林何帠(かげい)や、俵屋宗理(初代)がいます。特に俵屋宗理の絵画作品は、洒脱で瀟洒な造形性をもち、抱一が後に大成する江戸琳派様式の先駆けを示しています。二世宗理を名乗ったのが葛飾北斎であったように、宗理はたしかな技術を持つ腕の立つ絵師でした。


Ⅳ 俳諧・機知・闇

新興都市であった江戸の地に芽生えた江戸琳派の絵画は、新奇が画題や、意表をつく趣向を積極的に取り入れる傾向があります。正攻法よりは逆手にとって、気の利いた演出を加える洒脱な作風を好んだのです。俳諧性や機知性の溢れる画題が、ときに繊細に、あるいは大胆な対比構図で描かれています。また明るい陽光よりも、闇を照らす繊細な光の表現に傾倒する画題が多いことも、江戸琳派の絵師たちの独特な眼差しを物語っています。


Ⅴ 抱一門下の逸材

酒井抱一の門下には、数多くの弟子が育ちました。なかでも逸材として知られるのは鈴木基一です。神田の紫染職人の子に生まれ、18歳のときに抱一の内弟子となっています。確かな描写力に裏打ちされた明快な色彩と構図、驚きや面白みを潜ませる機知的な趣向は、敢えて余韻を排するかのような理知的な画面を創り、基一の絵画を特徴づけています。


工芸作品



Ⅰ 金と銀の世界







Ⅱ 草花図の伝統







Ⅲ 江戸琳派の先駆者





Ⅳ 俳諧・機知・闇




Ⅴ 抱一門下の逸材



鈴木基一「三十六歌仙図」について

もう何度も観ていますが、ひとつだけここに書き記しておきます。鈴木基一の「三十六歌仙図」についてです。藤原公任が撰下した三十六歌仙を主題とした図です。本来、活躍した時代を異にする歌仙たちが、時を超えて一つの場面に集合した夢のような群像です。ただし、描かれたのは35人の肖像。几帳の前で額に手をあて、姿の見えない一人を捜す仕草をする歌仙が描かれていますが、実は高貴な斎宮女御(徽子内親王)だけは几帳の
中にその姿を隠している、という趣向です。黒い束帯の歌仙が絶妙に配置されていますが、ひしめき合う歌仙たちの色とりどりの着衣が、華やかな画面をつくっています。三十六歌仙の群像表現の原案は尾形光琳にあり、抱一や基一たちが、若干改変を加えながらほぼ同じ図様を踏襲してきました。またこの作品は華やかな表具裂が用いられているように見えますが、これは抱一ら江戸琳派の絵師が得意とし、本来は仏画に用いられる「絵描装」「書表具」といわれる手法で、掛軸の上端から下端まで、すべて基一が肉筆で描いた表具模様である点が注目されます。天地には、白地に青波の扇面流。中廻しは幾何学的な蜀江文が微細に描かれています。基一は光琳から受け継いだ華やかな歌仙の群像に、きらびやかな絵表装を加えて、自分なりの奇抜なデザインを創り出しています。(「琳派芸術―光悦・宗達から江戸琳派」図録より)


「琳派芸術Ⅱ」

酒井抱一(1761~1828)は、京の俵屋宗達、尾形光琳らに継承された優美な琳派芸術を、東都・江戸の地に再興した“江戸琳派”の大成者として知られています。昨年、抱一生誕250年を記念した当館での展覧会は、東日本大震災により途中閉幕となりました。この度の展覧会は、ご期待をお寄せくださった多くの皆様へ、あらためて琳派芸術をご鑑賞いただく機会といたしました。本展では、尾形光琳を意識して描いた酒井抱一筆「風神雷神図屏風」「八ツ橋図屏風」などの豪奢な金屏風の代表作や、抱一が独自の美意識を表明した清冽な銀屏風の名品「紅白梅図屏風」などを一堂に展示し、琳派ならではの金と銀の豊かな世界を、昨年に引き続いて存分にご堪能いただきます。また、本展を構成するにあたっては、酒井抱一や高弟・鈴木其一(1796~1858)を中心にご紹介した昨年の展覧会の第2部〈転生する美の世界〉を基本としながらも、その再現展示を目的とせず、新しいテーマや構成も取り入れて、展示内容をリニューアルしています。例えば、宗達以来、各時代の琳派の絵師たちがさまざまに表現した草花図の展開に目を向けたり、また抱一よりも先に、江戸の地で琳派様式を試みた江戸琳派の先駆者たちに注目するなど、新鮮な鑑賞のための視点を設けています。抱一が江戸琳派の瀟洒な造形性を確立する上で、いかに琳派の伝統や先達の様式と向き合い、挑んでいるのかを探りながら、その魅力を多方面から解き明かします。酒井抱一や鈴木其一ら江戸琳派の絵師たちは、宗達や光琳らが創った琳派の伝統を真摯に学びながらも、その模範から脱する冒険心をもっています。継承と創造を繰り返し、時空を超えて清新な美を生み出しつづけた琳派芸術の粋美の輝きをじっくりとご鑑賞ください。


「出光美術館」ホームページ


とんとん・にっき-rin1 『琳派芸術Ⅱ」

小冊子

平成24年10月27日発行

編集・発行:公益財団法人出光美術館





とんとん・にっき-rin17 「琳派芸術―光悦・宗達から江戸琳派」

図録

平成23年1月8日発行

編集・発行:公益財団法人出光美術館









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