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講談社野間記念館で「横山大観と再興院展の仲間たち展」を観た!

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講談社野間記念館で「横山大観と再興院展の仲間たち展」を観てきました。観に行ったのは12月7日、庭の樹木もだいぶ色付いていました。以前、野間記念館で「横山大観展」を観たことがあります。野間コレクションの中の六曲一双の「千与四郎」(再興第5回院展)と、大幅の水墨画「月明」(再興第7回院展)は、名作中の名作と言われているようです。「千与四郎」と「月明」は、今までも何度か観た記憶があります。


横山大観自身は、「千与四郎」について、以下のように述べています。

「千の与四郎に就て」

自分の出品画千の与四郎は利休がまだ利休と名を変えぬ前の少年時代、道陳の紹介で茶人武野紹鷗の許へ入門させた、その時に紹鷗は利休を座敷へ上げず、直に庭の掃除を命じて、彼の奇才を試みたところ、利休は掃き清めた庭へ樹を揺すって桜紅葉を落とし一味の閑寂さを添えたので紹鷗が大いに感じたという逸話がある。それを描いたもので、茶室を調べるためには京都へも行き、裏千家、天珠院、天然坊、妙喜院、藪内等の茶室を観て研究した、自分としては可なり苦心した心算である。


この逸話は「名品図録」では、「その典拠を見いだすことができなかった」と書かれています。岡倉天心の「茶の本」で、利休とその実子、紹安(のちの道安)との物語として、利休が紹安を叱りながら路地の整え方を教え諭すという話を、大観自らが翻案して紹鷗と利休の話に作り変えたのか、あるいはどこかに典拠があるのか、現段階では不明である、としています。いずれにせよこの逸話は、路地の景色の理想とは単に清潔ばかりを宗とするわけではなく、自然な趣を大事に考えるという利休の思想を示しているのではないか、と述べています。


図録では「月明」については、気宇壮大な山並みの景色を墨の抑揚を十分に生かして描いている、とし、闇他溶け込む遠山は、その稜線から顔を出しはじめた満月の灯りに姿を浮かび上がらせ、静かな仙境が月明かりの織りなす光と闇の交響に様相を変え、幽玄な世界を創出しようとしたいる、と述べています。「月明」では、独自に開拓した片ぼかしや、米法山水の手法を融合させたり、また松木立の表現には細く鋭利な線描を用いるなど、さまざまな技法を一つの画面に共存させることで立体的な空間を生み出している、としています。


「再興院展」については、2009年11月に栃木県立美術館で「大正期、再興院展の輝き」を観たことがあります。その時の様子は、下の記事に載せてあります。

栃木県立美術館で「大正期、再興院展の輝き」を観た!


日本美術院が再興された経緯は、下記のようにありました。

明治31(1898)年に岡倉天心によって創設された日本美術院。横山大観や菱田春草らの新鋭画家たちが、新しい「日本画」の創造に邁進しました。その後、明治40(1907)年には、国家が主催する文部省美術展覧会(文展)が開設され、天心や大観はその審査員に任命されますが、文展との関係は決して良好なものではありませんでした。大正2(1913)年9月に天心が没すると、大観は活動休止状態にあった日本美術院の再興を企図します。そして翌大正3(1914)、下村観山や木村武山、安田靫彦、今村紫紅を中心として日本美術院は再興されました。


野間コレクションは、特定の画家や美術団体を集中的に収集したり、作品の傾向を限定することなく、多くの画家の多種多様な表現による作品をもれなく収集したようです。官展系では竹内栖鳳、川合玉堂、上村松園、鏑木清方、松岡映丘、結城素明、平福百穂、荒木十畝、福田平八郎、堂本印象ら、院展系では横山大観、下村観山、木村武山、冨田渓仙、安田幸彦、前田青邨、小林古径、川端龍子、速水御舟、小茂田青樹など、当時の日本画壇を代表する画家たちがほぼ洩れなく収集されている、と図録にはあります。


野間清治は、「渾然一体」「誠実勤勉」「縦横考慮」を講談社の社是とし、それに「雑」の思考を加え、美術品収集にもそれらが応用されたという。


Ⅰ.横山大観と再興院展の仲間たち







Ⅱ.横山大観と再興院展の仲間たち



Ⅲ.横山大観と再興院展の仲間たち





Ⅳ.横山大観と再興院展の仲間たち


小川芋銭:十二ヶ月図

とんとん・にっき-tai3

小杉放菴:十二ヶ月図

とんとん・にっき-tai2


「横山大観と再興院展の仲間たち」
「教師ナシ先輩アリ、教習ナシ研究アリ」。それは、岡倉天心の教え子たちにより、大正3年(1914)に再興された日本美術院が掲げた原則です。そこには、新しい日本の芸術を樹立するためには、画家自身の自由な研鑽をこそ尊び、何ものにもとらわれないという気概が、込められていました。日本美術院再興の主役が、生涯をかけて、新しい日本画の創造を担ってきた、近代日本画壇の巨星、横山大観。今回の展示では、大観の画業がもっとも充実した大正期の作品を中心に、同時代に活躍した院展画家たちの佳作をお楽しみいただきます。歴史画、風景画、花鳥画など多岐な範囲にわたり、日本画界を牽引してきた、かれらの絵画世界や描法の魅力を感じ取っていただければ幸いです。


「講談社野間記念館」ホームページ


とんとん・にっき-noma3 「美の流れ―講談社野間記念館名品図録」

編集:講談社野間記念館(小田島雅和、豊田和平)

    財団法人野間文化財団

編集協力:講談社写真図版資料部

撮影協力:講談社写真部

発行:財団法人野間文化財団








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