出光美術館で「琳派芸術Ⅱ」(前期)を観てきました。ブログに書くのが遅くなりましたが、観に行ったのは11月13日でした。出光美術館では、「琳派芸術」というタイトルで2011年1月に第1部と第2部として開催されたことがありました。そこでは「酒井抱一生誕250年 琳派芸術―光悦・宗達から江戸琳派」とあり、「第1部 煌めく金の世界」、そして「第2部 転生する美の世界」の2部構成となっていました。
出光美術館で「琳派芸術 第1部 煌めく金の世界」展を観た!
出光美術館で「琳派芸術 第2部 転生する美の世界」展を観た!
さて、今回の展覧会の特徴は、昨年、抱一生誕250年を記念して開催されていた「琳派芸術 第2部 転生する美の世界」が、東日本大震災により途中閉幕となったことで、あらためて「琳派芸術」を観てもらおうと意図したものです。従って今回の展覧会は「転生する美の世界」と共通した内容で、酒井抱一の「八ッ橋図屏風」「風神雷神図屏風」「紅白梅図屏風」や、鈴木其一の「四季花木図屏風」が出されていました。
今回の展覧会を構成するにあたっては、酒井抱一や鈴木其一を中心に紹介した昨年の展覧会の第2部「転生する美の世界」を基本としながらも、その再現展示を目的とせず、新しいテーマや構成も取り入れて、展示内容をリニューアルしていると、美術館では説明しています。
展覧会の構成は、以下の通りです。
Ⅰ 金と銀の世界
Ⅱ 草花図の伝統
Ⅲ 江戸琳派の先駆者
Ⅳ 俳諧・機知・闇
Ⅴ 抱一門下の逸材
工芸作品
昨年は「琳派」についての展覧会がたくさんありました。「抱一生誕250年」ということで、出光美術館、千葉市美術館、畠山記念館で「琳派」を掲げた展覧会が催されました。過去、思い出すのは、2008年11月に東京国立博物館で開催された「大琳派展 継承と変奏」でした。本阿弥光悦、俵屋宗達、尾形光琳とその弟乾山、酒井抱一、鈴木其一の6人が、当然ですが全員取り上げられていました。「尾形光琳生誕350周年記念」と銘打っていました。「大琳派展・オフ会」なるものに参加した、楽しい思い出もあります。
出光美術館というと、僕の場合ですが、なんといっても「国宝・風神雷神図屏風」展です。いま図録を出してみたところ、「国宝・風神雷神図屏風」の図録には平成18年9月9日とありました。2006年、今から5年前のことです。もちろん目玉は俵屋宗達、尾形光琳、そして酒井抱一の3作品が一堂に会したことです。あのときのスリリングな感動は、今でも忘れることはありません。ブログを書き始めたということでも、この時の展覧会の記事が、出光美術館の最初の記事として、このブログに載っている記念碑的な記事でもあります。
今あらためて気がついたのですが、「国宝・風神雷神図屏風」展、副題には「宗達・光琳・抱一 琳派芸術の継承と創造」とありました。そうなんです、「琳派」を話題にするとき、必ず出てくるのが「継承と創造」についてです。江戸時代前期の宗達の作品「風神雷神図屏風」、江戸中期の光琳の「風神雷神図屏風」、そして幕末期の今度は江戸の絵師抱一による「風神雷神図屏風」、このれらの作品は「琳派の継承」として典型的なので、よく取り上げられますが、「琳派の継承」としてはもっと幅広く取り上げられる必要があることを、その時の展覧会は示していました。また、「私淑」という言葉でも語られました。
「琳派芸術の継承と創造」(発行:平成18年9月9日、編集・発行:出光美術館)という小冊子があります。そこでは「梅を愛でる」「燕子花図の変容」「秋草図の遺伝子」、そして「受け継がれる琳派―抱一の光琳顕彰」と分けて解説しています。その時に取り上げられた作品、抱一「紅白梅図屏風」「燕子花図屏風」「八ッ橋図屏風」などが今回も展示されていました。
いま振り返ってみると、出光美術館には本当に多くのことを教えられました。屏風や軸物など、日本画はもちろん、茶道具、陶磁器に至るまで、知らないことばかりで勉強になります。金曜日の夕方、仕事が終わって出光美術館へいって、学芸員による「列品解説」を聞くのが楽しみでした。最近はなかなか金曜日の夕方に時間を合わせて行くことができなくて残念です。また金曜日の夕方、出光に足を運ぶ習慣を取り戻したいと思っています。
Ⅰ 金と銀の世界
Ⅱ 草花図の伝統
Ⅲ 江戸琳派の先駆者
Ⅳ 俳諧・機知・闇
Ⅴ 抱一門下の逸材
「琳派芸術Ⅱ」
酒井抱一(1761~1828)は、京の俵屋宗達、尾形光琳らに継承された優美な琳派芸術を、東都・江戸の地に再興した“江戸琳派”の大成者として知られています。昨年、抱一生誕250年を記念した当館での展覧会は、東日本大震災により途中閉幕となりました。この度の展覧会は、ご期待をお寄せくださった多くの皆様へ、あらためて琳派芸術をご鑑賞いただく機会といたしました。本展では、尾形光琳を意識して描いた酒井抱一筆「風神雷神図屏風」「八ツ橋図屏風」などの豪奢な金屏風の代表作や、抱一が独自の美意識を表明した清冽な銀屏風の名品「紅白梅図屏風」などを一堂に展示し、琳派ならではの金と銀の豊かな世界を、昨年に引き続いて存分にご堪能いただきます。また、本展を構成するにあたっては、酒井抱一や高弟・鈴木其一(1796~1858)を中心にご紹介した昨年の展覧会の第2部〈転生する美の世界〉を基本としながらも、その再現展示を目的とせず、新しいテーマや構成も取り入れて、展示内容をリニューアルしています。例えば、宗達以来、各時代の琳派の絵師たちがさまざまに表現した草花図の展開に目を向けたり、また抱一よりも先に、江戸の地で琳派様式を試みた江戸琳派の先駆者たちに注目するなど、新鮮な鑑賞のための視点を設けています。抱一が江戸琳派の瀟洒な造形性を確立する上で、いかに琳派の伝統や先達の様式と向き合い、挑んでいるのかを探りながら、その魅力を多方面から解き明かします。酒井抱一や鈴木其一ら江戸琳派の絵師たちは、宗達や光琳らが創った琳派の伝統を真摯に学びながらも、その模範から脱する冒険心をもっています。継承と創造を繰り返し、時空を超えて清新な美を生み出しつづけた琳派芸術の粋美の輝きをじっくりとご鑑賞ください。
小冊子
平成24年10月27日発行
編集・発行:公益財団法人出光美術館
図録
平成23年1月8日発行
編集・発行:公益財団法人出光美術館
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