LIXILギャラリーで「藤井秀全展」、「毛塚友梨展」を観てきました。まったく対照的な展覧会です。経歴も対照的。
藤井秀全の作品は、滲むような色彩で目も眩むような目映さが大きな特徴です。学部のときは豆電球から始まり、大学院でLED技術を使って効率よく光らせられるかをやり始めました。大学受験のときはデザイン科を目指したが、言われた通りにしないといけないと思って断念、立体に向かい、陶芸コースに進むも、技術的な制約が多すぎてこちらも断念。唯一、磁器で薄くつくると透過性があることに惹かれて、光を組み合わせ出しました。好きな作家は、オラファー・エリアソン、見て単純に格好いいと思い、毎回展覧会を見るたびに悔しい思いをしていると言います。
毛塚友梨は、父親が益子で修行した後に、伝統的な作品をつくっていた人、自分も人間国宝みたいな作品をつくりたくて芸大に入ります。イラン人と学生結婚をして、イラン陶器のペルシャンブルーの影響を受けてつくるようになります。学部の卒業制作で「8年間」(2009年)という自転車をテーマにした作品をつくり、その後「思い出す限りでは」(2010年)はバスルームをテーマにしています。そして「焦燥」や「忍耐」を経て、青色に戻り、「愛」(2011年)をつくり、今回の作品につながります。
藤井秀全―Staining―展
展覧会詳細
今展の作品は、LEDを使用した光のインスタレーションです。「Stain "Droop"」(2011)は、乳白色のアクリルボックスに浮かび上がる光のシミのような現象で、赤、黄、白の鮮やかな光が複雑に重なり合って浮かび上がる様は、眩さに炎や太陽を閉じ込めているかのような不思議な作品です。「Staining」(2011)(表紙作品)壁に浮かび上がる油絵の具を重ねたような重厚な色光の現象で、傍に吊るされた基盤に設置された多数の豆粒ほどの光源の多彩さがつくり上げる作品です。キャンディボックスを引っくり返したような色の洪水、その繊細で愛らしい色彩に驚かされます。「Color "Transition"」(2010)は、光のリボンとも言われる帯状の現象です。偏光板で光を分光して一定の規則上に光を並び替え、透明なアクリルボックスの中に閉じ込めています。氷やメタルのような硬質な光のかたちとプリズムのような光の原理をとじこめた作品です。作家の藤井秀全は、京都造形芸術大学大学院を修了(2009)、9th SICF グランプリ(2008)、Tokyo Midtown Award 2009 グランプリ (2009)を受賞、これまでに数々の発表を行い、若手ながら高い評価を得ています。陶芸の窯焚きで見た1300℃の光と温度の現象が、藤井の光の作品に影響を与えています。今展では、「Staining」、「Twinkle Wrinkle」を中心に「Color」のオブジェと映像を加えた光のインスタレーションを発表します。どうぞ会場でご覧下さい。
藤井秀全プロフィール
1984年 奈良生まれ
2007年 京都造形芸術大学芸術学部美術工芸学科卒業
2009年 同大学大学院芸術研究科芸術表現専攻終了
毛塚友梨展―陶 蒼い心―
展覧会詳細
毛塚友梨の作品は、蒼い釉薬が印象的な陶によるインスタレーションです。「愛 壱ー伍」(2011)は、5つの容器に5つの蛇口から、それぞれに何かが注ぎ込まれる場面がつくられています。注ぐのは水道の蛇口、水洗金具の壊れたもの、湯沸し器などで、受け入れるのは大きなバケツ、歪んだ鍋、牛乳パック、紙袋、割れた茶碗です。日用品をモチーフに選び、簡単には注ぎ込めない状況から、注ぎ口と受け皿を一筋縄ではいかない人間関係に喩えた作品です。端正な造形と、陶器に置き換えられ、鮮やかな青色の釉薬で包まれた情景は、詩的で心ひかれる世界をつくり上げています。毛塚は陶芸家の家に育ち、伝統的な陶芸を目指して東京芸術大学に学びましたが、いつしか身の回りの思い入れのあるモノたちをモチーフに作品を制作するようになりました。2009年の修了制作では、愛用の自転車を陶器で実物大につくり、長い髪をたなびかせて自転車を繰る自分の姿をその影として組み合わせた作品で、新しい世界へと羽ばたいて行く若者の心象風景を爽やかに表しました。青い風景は幼少から好きだった水色、深い海のような群青色のイメージで、いつも毛塚の心を映してきました。毛塚にはこの他にも、古陶器を思わせる、灰釉や赤土を使った勉強机やバスルームをモチーフにした作品もあります。どの作品も土や釉薬の美しさ、豊かさなどやきものの表情も見どころです。今展では、水道の蛇口とコップ、バケツ、ビン、割れた壷など8点の容器を組み合わせた新作インスタレーションを発表します。蒼が満々と湛えられたモノたちは、観る者をどのような世界に誘ってくれるでしょうか。どうぞ会場でご覧ください。
毛塚友梨プロフィール
1984年 栃木県生まれ
2003年 作新学院高等学校卒業
2009年 東京芸術大学美術学部卒業
「LIXILギャラリー」ホームページ
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