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フェルメールナイト「真珠の耳飾りの少女」を読み解く!

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とんぼの本「フェルメール巡礼」刊行記念イベント
『フェルメールナイト「真珠の耳飾りの少女」を読み解く』
前橋重二(ライター)×中村剛士(美術ブログ「青い日記帳」主宰)

6月22日(金) 時間:18:30開場 19:00開演
参加費:1500円(特別メニュー付)


会場:六次元 ロクジゲン

http://www.6jigen.com/

住所:東京都杉並区上荻1-10-3-2F

電話:03-3393-3539

Tak:フェルメールの作品は、足かけ10年書けて全作品を観ました。もう一度現地で観てみたい絵もあります。

Mae:フェルメールはあまり熱心ではなかったが、偶然ワシントンナショナルギャラリーで、ほとんど独りで観たのが最初。2008年に「芸術新潮」でコラムのテーマ出しということでかかわった。文献を読んで、複数を書かせてもらった。問題の書「シークレット・ナレッジ」のなかで、ホックニーは凹面鏡を使って投影実験を行った。光学器械を使って、イラストを描き、ここがおかしいと指摘している。ボケとシャープネスの深さ、深度。フェルメールの時代、人間の目はすべてシャープネスになってしまう。フェルメールの絵は、ピントが合っていない、ボケている。
Tak:今はアイホンなんかでボケた写真を撮れるアプリがある。操作を加えることによって、ボケた写真が受けている。「牛乳を注ぐ女」は、全体に焦点が合っていない。現実の絵でありながら非現実にみえる。有名な話で、テーブルの角度が違っている。バスケットもボケている。
Mae:「真珠の首飾り」は、テーブルの下のパターンが暗くて読み取れない。
Tak:青い壺が文様までよく見えた。一般の人は女の人ばかり目がいっちゃうが、私たちはテーブルばかり見ている。文化村の「青衣の女」は手前の近景として椅子を置いている。
Mae:写真的ということでは3本くらい重要な論文がある。フェルメールはカメラオブスクラを使ったと言われているが、カメラを使わなかっただろうという説もある。フェルメールの絵は完全に幾何学的です。糸を止めるピンがあって、糸を張って描いていた。「フェルメールのカメラ」(日本語版あり)では、フェルメールの「合奏」の絵画空間の、アトリエを推定し、室内模型作成して撮影している。また「音楽の稽古」という作品には正面に鏡が掛けてある。鏡は斜めに傾いて掛けてある。非常におもしろい作為がある。ハブリエル・メツーとフェルメールの関係。二人とも始めは宗教画を描き風俗画に移るところは同じです。評価は今では逆転してしまったが、19世紀まではメツーの方が評価は高かった。お互い響き合っている絵がある。フェルメールは6作品もの「手紙」を描いている。「手紙」は当時の流行、描きやすいテーマだった。ヘラルト・テル=ボルフの「手紙を書く女」が最初の作例。メツーも「手紙を読む女」「手紙を書く男」「手紙を書く女」がある。アムステルダムとハーグ、お互いに似た絵を描くということは、偶然とは言えない共通点がある。風俗画はなにを描いても良いというわけではない。見る人が分からなければならない。当時のオランダは識字率が高かったという背景。手紙は最新のメディアだった。飲んだくれを描くより、手紙の方が好まれた。手紙に対する重み、当時は手紙は音読した。

Tak:サイズの話「描いた順に全作品の大きさを比べてみよう」(モノクロのコピー資料)。登場人物が一人の作品、22作品を取り上げた。6~12はフェルメール黄金期の作品。牛乳パック2本分、あまり大きくない。どんなお宅にでも飾れる大きさ。フェルメールが結婚して、生活も安定し、ギルドにも入って、ちゃんと絵をあがくようになった時期の作品です。11のちょっとあやしい絵を除いて。宗教画は用途からしてどうしても大きくなります。17「レースを編む女」は小さい。ルーブル美術館にある。代表作になればなるほど、だんだん小さくなっていく。真偽という点では、18「ヴァージナルの前に座る若い女」はありかなと思う。13「フルートを持つ女」は、ナショナルギャラリーのホームページでは「フェルメール周辺の画家」となっていました。21「赤い帽子の女」は真だと思う。天地逆に描いたので右から光があたっている。女性なのか男性なのか、いつまで経っても答えが出ない。18「ヴァージナルの前に座る若い女」、小林頼子先生は、胸がゴツゴツして岩のようで、あやしいと言っている。3「ディアナとニンフたち」はイタリア絵画の影響が強い。フェルメールの作品の中では最も色が多いし、ストーリーもいい。修復されて昼間の絵にされてしまった。手前の犬が可愛い。


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司会:裏表紙のセイムスケールが面白い。四角い絵が多い。
Tak:下の方の風俗画は、ほとんど同じ画面です。奥さんと結婚するときに、フェルメールは宗教を変えました。奥さんの家は安定していた。フェルメールは43歳で亡くなったが、それ以後、オランダが不景気になっていきます。
司会:フェルメール一族はどうなったのか、途絶えてしまったのか。フェルメールは200年後に評価される。それまでは他の画家が評価されていた。フェルメール展の「公式ガイドブック」は良くできている。
Tak:フェルメールはラピスラズリを作っていたといわれてきました。それを実験してコラムにしました。アントワープの「ネロとパトラッシュ」など、素人目で書かせてもらった。マウリッツハイスは、「真珠の耳飾りの少女」の少女が、映画のお手伝いさんだということを嫌っています。少女が着ているものは「ヤポンスロック?」、東インド会社が持って帰った日本の着物です。ガウンのように見えるが、羽織っている。「地理学者」や「天文学者」では男性が羽織っている。今回の展覧会、イメージキャラクターとして武井咲が採用されたが、「真珠の耳飾りの少女」のスカートまで再現された。
司会:女の子の話を。謎が多い。  
Mae:フェルメールは謎が多い、幾つものストーリーが考えられる。(レジメ)謎めいているところ、曖昧さ。幾つものストーリーが考えられることが、フェルメールのフェルメールたる所以。
司会:会場の女性の話を聞きましょう。
会場:真珠が大きい。眉毛がない。恥ずかしがっている感じ。小学校の教科書で見た。オーツカ美術館で見た。少女ながらにして自分の美しさに自信を持っている。
Tak:本の中では「7つの疑問」というコラムを書きました。白い肌を強調するするため、眉毛を剃ってしまっている。清潔感を出すためか。当時の流行であったのかも。上流階級の証、と國學院の小池先生は言っている。
会場:パッとみに美しい。視線が合わない。切なさそうな感じ。かわいいなと思った。映画の印象が強い。お手伝いさんということでちょっと疲れた感じに見えた。当時の服装は分からないが、なんでターバンを巻いているのか。若いけれど謎めいている。少女が大人になる、新婚さんという感じ。次の表情を期待している。意外に幼いのかな。
Tak:視線が合う、合わないというのは興味深い。
Mae:この絵がどこを見ているのかという、1970年頃に3つくらいの調査がある。目線がどこを見ているのかのスタディ。実写刺激と絵画刺激。視線方向のイリュージョン。絵画と写真の目線の方向。「真珠の耳飾りの少女」と武井咲の目の方向。右目と左目の見ている方向が違う。フェルメールのは外斜視。もっと自然科学的なアプローチも必要。
Tak:右目は合う、左目は合わない。少女の目線がどこを見ているのか。右側のターバンに光があたりすぎている。「7つの疑問」の一つにした。口紅がはみ出ている。結婚したての頃、家にポスターを張っていたが、カミさんから怖いからはずしてくれと言われた。トルコなどのターバンとも違う。レンブラントのターバンとも違う。ターバンの色がツートン。
司会:フェルメールの作品、「トローニー」、3点が描かれている。肖像画ではなく不特定の人を描く。それが親密度が高いのでは。マウリッツハイスでは「青いターバンの少女」、「真珠の耳飾りの少女」とも呼ばれている。
Tak:私が最初に観たのは「青いターバンの少女」でした。

司会:本の紹介。「フェルメール巡礼」「マウリッツハイス美術館展公式ガイドブック」。
Tak:「小路」の話がおもしろい。
Mae:デルフト工科大学の研究者チームが1982年まで建っていたという証言をした。建物の保存を呼びかけたが果たせなかった。1982年に取り壊されてから現地調査をしてみると、かなりの項目についてフェルメールの「小路」と合致した。現地調査報告書をうけて、解体前の建物の模型を作ってみた。1980年代の調査、1990年代に発表した。しかし、美術史の世界にはなんのインパクトももたらさなかった。フェルメール研究者は、「小路」は実在しない風景を描いた「空想画」だと考えている。
司会:食事について。パンプディング、牛乳。硬くなったパンを牛乳に浸して食べた。ヒュポクラフ、赤ワイン。(パンプディングとヒュポクラフは会場で参加者全員に出されました)
Tak:日本橋馬喰町に「DEJIMA」というセレクトショップがある。そこに「牛乳を注ぐ女」の壺の実物があった。オランダで買ってきたという。絶対に売らないそうです。オランダで一番は自転車です。


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会場:せっかくものをつくるのなら、謎めいていた方が何世紀も続けてもつ。フェルメールに惹かれる点は?
Mae:ピンとが合わない点。ピントの合わなさはなぜか、という点から入った。時間を掛けて一歩一歩深みにはまっていった。色んな論文を読んで、追求していける点がおもしろい。テーブルの形も、もう少し掘り下げる必要がある。
Tak:数に限りがあるというのが魅力。日本にいるだけでも半分以上は見られる。同じ作家なのにバラエティに富んでいる。全部見るのに、10年ほどかかった。最初に「牛乳を注ぐ女」を見た。同じものを見ても、見る目が少しずつ変わってきた。
会場:フェルメールとは、どんな人?
Tak:頑固で職人気質の人。友達にはしたくない(笑い)。
Mae:技法的にもラピスラズリも、こだわりを持った人。20「信仰の寓意」は天井のガラス玉に人が写り込んでいない。それ以外はリアルに描いているが。あまり外へ出たがらない人、女性に優しい人。
Tak:目線が上を向いているのは、20「信仰の寓意」だけ。
会場:少女というが、幾つぐらいなのか?
Tak:直感で高2くらい、16~17か。
Mae:困ったな、18くらいか。
会場:けっこう15~16、口紅を落とすと20くらい。
会場:フェルメールの注文したクライアントはどんな人か?
Tak:フェルメールの絵をパン屋さんが持っていたという話がある。映画ほどのパトロンはいなかったと思う。
Mae:アトリエには完成作はなかったと思う。どこどこへ行けば見られるという、何点か持っていた人がいたと思う。
金沢:ピントのぼかし方について。画家同士のやりとり。似た絵があるが。
Mae:オランダ風俗画の本を読んでいると、はっきり書いてある。絵から絵へと影響した。ユトレヒトに二人とも留学していた?版画ではなく、影響は実物で。
金沢:ピントがだんだん奥行きのなかでぼけていく。ヴェネツィア派との関係は?
Mae:遠くのものをはっきり描かない。カメラオブスクラの使用。上流階級では、1631年に夫婦を描いたものがあった。遠近のレイヤーというと、ぼかしを空間の奥行きとして描くのは、フェルメール以前からあった。
会場:「デルフトの眺望」があるが、フェルメールから1点を選ぶとすれば?
Tak:「デルフトの眺望」は私も好きな絵です。マウリッツハイスでは絶対に貸し出さない。いくら拡大しても絵が潰れない。実物を目を凝らして見ないとわからない。完成度が高い・オランダらしい、乾いた空気、手前の女の人まで。
Mae:この絵はひたすら気持ちがいい。気持ちがいいな、美しいなと。自分がとっかかることがないと、見始めていない。気象学者は「デルフトの眺望」の雲を見て、雨が去って、嵐が去った後だと言った。ものを見るということは難しい。自然に対する見方を磨く必要がある。
Tak:時計が7時何分かを指しているので、朝の絵です。ライスダールは雲を描きたくて雲を描いた。フェルメールは、描く手段として光を雲で表現した。
Mae:ベルベデーレの「トルソ」、「曖昧さの神経学」という論文。フェルメールの「真珠の耳飾りの少女」がなぜ傑作なのか?どれも妥当である。美しいというものは、未完のものなのではないか?「トルソ」は古代彫刻の最高傑作。
Tak:今日は見るということをテーマにお話ししました。21世紀の我々の見ると、17世紀の人の見るは違う。17世紀は今よりはるかに濃密で、見るということが大事だった時代です。古語辞典によると、見るは理解するという意味もあります。少女を自分のものにしたくて見ている。当時の人の感覚で見れば、また変わってくると思います。

「マウリッツハイス美術館展」公式サイト


とんとん・にっき-geishin 「芸術新潮 2008年9月号」

2008年9月1日発行

新潮社
愛蔵版特集

「やっぱり気になるフェルメール」

世界全16美術館完全ガイド付








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