軽井沢の建築、といえば、やはりアントニン・レーモンドの「聖パウロカトリック教会」でしょう。1934年の作品です。レーモンドの建築はいろいろありますが、軽井沢のこの教会を悪く言う人はまずいません。レーモンドらしさが随所に出ています。裏側に回って屋根を観てハッと息を呑みました。見慣れない形をした鐘楼です。
この教会は一般的にもよく知られており、最も軽井沢らしい建築、軽井沢を代表する建築です。印象的な三角屋根、低く抑えられた入口、裏側に回るとこれまた印象的な鐘楼、屋根のおさまりが見事です。なかに入ると、丸太の小屋組、適度な陽の光が荘厳さを醸し出しています。
スロヴァキア、ウクライナ、ルーマニアといったヨーロッパ周辺諸国に要素が散見され、ナショナル・ロマンティシズム的なものでアイデンティティを確立しようとしたいとが読み取れる。浅間の火山岩、杉、栗を素材に、インテリアは日本との融合が果たされている。家具はすべて助手のジョージ・ナカシマによる。(新建築1991年1月臨時増刊・建築20世紀PART1解説より)
レーモンド建築の本は、残念ながら僕は一冊も持っていないようです。この教会が出ているもので、なにかないかと探したら、出てきました。藤森輝信:文、増田彰久:写真の「建築探偵奇想天外」(朝日文庫:1997年5月1日第1刷発行)、「スロバキアの教会」と題してこの教会が載っていました。
「一風変わったロマンチックな姿をしているから、ギャルの好奇の目から隠れようもなくて、軽井沢きっての名所になってしまった」と前書きし、「レーモンドはチェコ生まれなのにスロバキア風の教会をつくった」と書いています。また「山小屋的な教会は日本ではこれしかない」とも。「一番の特異点は後の方の鐘楼の形で、四角くてちょっと先つぼまりの箱を屋根の上に載せ、箱の頂部にはドングリとギンナンを串に刺したような飾りを付けている」と、藤森らしい表現で、この教会の特徴を言い表していました。
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