松岡美術館、現在の展覧会のメインは展示室5、展示室6で開催されている「情熱と憂愁―パリに生きた外国人画家たち」ですが、併設展示として展示室4では「神秘のひといろ―中国の単色釉磁」が開催されています。ここではそのなかの一部ですが、「うつわのかたち」について関連した画像を載せておきます。必ずしも関連したものばかりではありませんが・・・。
僕が特に気になったのは、「やきものは古代青銅器の形を模している」というところです。恥ずかしながら僕はそれまで、やきものと青銅器はまったく別物と思っていました。時折、青銅器を模したやきものがあるので、それを観ると奇妙な気分になりました。しかし考えてみれば、青銅器は元々飲食のための食器類のようなもので、やきものも食器類なので、当然と言えば当然のことです。
今年の初め、上海博物館で膨大な量の青銅器を観る機会がありました。いやそうではなく、上海博物館を見学したときに、たまたま1階の「中国古代青銅館」から観始まったのですが、その量の凄いこと、時間が幾らあっても足りません。博物館全体を観るのに、青銅器の展示をみるだけに時間をとられて、完全に時間配分を誤ってしまいました。
上海博物館のリーフレットには、以下のようにあります。
紀元前2000年前後から紀元前5世紀の春秋・戦国時代までの400点余りの青銅器を展示しています。多様な形と精細な文様がその円熟した製造技術を物語り、1500年も続いた中国の青銅器文化の栄光と輝きを身近で体験できます。
うつわのかたち
単なる壺や鉢などとは異なるこれらのやきものは、古代青銅器の形を模しています。青銅器は神や祖先の霊を祀る儀式で、飲食物を捧げるために用いられ、次第に所有者の権力を象徴するものとなっていきました。その後、北宋時代になって出土品による青銅器の研究が盛んになり、文人皇帝として名高い徽宋(きそう)皇帝の勅命で青銅器の図録が編集されました。やがて磁器の器形にも影響が及びますが、青銅器が本来持っていた呪術的な意味合いは薄れ、その形を規範としながら、煩雑な文様を省いて彩色の美しさの方に重点が置かれています。
注記:
*「尊(そん)」とは、ラッパ状の口を持った、酒を入れるうつわ。高い圏足(高台)がつきます。
*「觚(こ)とは、口が大きく開いた筒状の容器で、酒を飲むためのうつわ。
*「壺(こ)」とは、酒や水を入れる、胴の部分が張ったうつわ。まるい形や、まるみを帯びた方形(四角形)のものがある。
「神秘のひといろ―中国の単色釉磁」
やきものといえば、唐草や人物といった絵付けによる装飾を日常、目にしますが、全面に色を湛えた 釉(うわぐすり)だけの美しさも見逃せません。宋時代に青磁や白磁が活況を呈したのち、明時代に入ると主流は絵付けによる青花や五彩に取って代わるものの、清時代には色釉の開発に重点が置かれて目覚ましい技術向上により色数が増加、輝くばかりのうつわが創られました。釉には色や光沢を与えるばかりではなく液体の滲出や汚れを防ぎ、またうつわの強度を増す効果があります。しかし、やきものの質や色合いは、着色材料となる金属の種類、分量、素地の粘土に含まれる成分、さらに焼成の状態に大きく影響され、変化してしまいます。優れた技術とともに、様々な条件にかなって初めて完成をみる神秘のひといろ。その高貴な静けさ、深さ、そして輝きや華やぎをみせる単色釉の魅力をご高覧下さい。約40点。
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