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「玉堂美術館」は、奥多摩へ行ったら是非とも行かなくちゃ、と思い定めていた美術館です。家人が突然、「御岳山へ行こう」と言い出して御岳山へ行ったのは2008年8月の暑い日のこと、今から4年前のことです。日本画家・川合玉堂が昭和19年から昭和32年に亡くなるまでの10余年を青梅市御岳で過ごしたのを記念して建てられた美術館で、設計は日本芸術院会員で東京芸大教授の吉田五十八でした。没後4年の昭和36年5月に開館しました。展示作品は、玉堂15歳の頃の写生から84歳の絶筆まで、幅広く展示されていました。年7回の展示替えで、季節に見合った作品が展示されるようです。玉堂の絵の特色は、写実を超えた自然の気韻を観る者に惻々と感じさせるところにある、とはチラシの解説にありました。
講談社野間記念館で「川合玉堂と東京画壇の画家たち」を観てきました。玉堂の作品は、松岡美術館で二曲一双の「礒千鳥図」(大正11年頃)を観ました。東京富士美術館所蔵の「雪月花:朝雪」はニューオータニ美術館で観ました。山種美術館の「ザ・ベスト・オブ・山種コレクション」では、「鵜飼」(明治28年)と「渓山秋趣」(明治39年)の2作を観ました。また僕は見逃したのですが、山種の「美しき日本の原風景―川合玉堂・奥田元宋・東山魁夷―」展では、玉堂の作品は「春風春水」、「早乙女」、「山雨一過」、「溪雨紅樹」等が出されていたようです。
講談社を創業した野間清治がその在世中に収集した美術品を中核とし、その後も野間家によって継続袖手された美術品は、野間コレクションです。当初は故人コレクション、その後財団法人野間文化財団に引き継がれたことで、保存・公開されるようになりました。2000年4月、講談社は社業の地域還元と地域文化の工場の一貫として、野間コレクションを公開するため、講談社野間記念館を開館しました。野間は川合玉堂とも親交を結んでいました。玉堂から野間宛の手紙が幾つか残されていて、その親密さがうかがわれます。野間コレクションには、玉堂の掛け軸が17点含まれています。
今回の「川合玉堂と東京画壇の画家たち」の目玉は、川合玉堂の「渓村秋晴」と言えるでしょう。この作品は以前にも野間記念館を観た時に取り上げたのですが、美しく豊かな日本の自然を描いた作品です。玉堂は、絵画制作の目標として、日本画の伝統である線の妙味と色彩との調和という課題に取り組んだという。「渓村秋晴」は、西洋画の遠近法を取り入れて、自然を合理的に描写する眼が育ちつつある、独自の画風を模索していた時期の過渡的な作品だ、と解説にはありました。以前観たときには、細密な描写は素晴らしいが、全体的に硬質な感じがして、エッチングの版画作品のようにも思われ、人間味が感じられないと書いたことがありましたが、今回はそうは思いませんでした。初期の名作です。
今回出されている大正15年の「鵜飼」という横長の作品、山種にも同じ題名の「鵜飼」(明治28年)という縦長の作品があります。少年期を岐阜で過ごした玉堂、夏の風物詩である長良川の鵜飼は原風景であり、同じ題材を生涯に500点以上も描いていたというから、驚きでした。玉堂と言えば自然のもとで人々の暮らしが息づいている作品を思い浮かべますが、「夏山懸瀑」には人影はなく、ただ険しい幽谷に一筋の飛泉が流れ落ちる場面を描いているだけです。夏山の静かな渓谷で、聞こえてくるのは飛泉の落下音と渓流のせせらぎだけです。ここには南画風の味わいもあるが、西洋画法も巧みに取り入れられていると、解説にあります。
もう一つの目玉、というか、野間記念館所蔵品の代表的な作品、山川秀峰の「蛍」です。「鏑木清方一門と近代美人画展」などで、何度か観ています。山川は鏑木清方の門弟のなかでは、伊東深水、寺島紫明とともに“三羽烏”と称された、という。「蛍」は、夕闇迫る野辺で、団扇を片手に蛍を追う3人の美女が清楚に描かれています。淡く渋めの色合いの着物を、濃いめの色の帯に金色の柄や紅い裏地などを添えることで引き締め、色彩のバランスを計っている、と解説にあります。山川は、現代的感覚の美人画を得意とし、生活感あふれる清楚で上品な女性像を描きました。3人の顔立ちが似ているのは、一説には美人と評判だった山川の妻をモデルにしたからだ、と言われています。
児玉希望の「四季の風景」は、日本の自然美を代表する名所を四季に描き分けたものです。春は精進湖(山梨県)、夏は日光華厳の滝(栃木県)、秋は那智の滝(和歌山県)、冬は十和田湖(青森・秋田両県)を描いています。左右が湖の岸辺の風景、真ん中の二幅は滝の落下の場面をとらえています。児玉は、始め洋画を独学するが、大正7年から川合玉堂に師事することになります。色彩感覚に優れた風景画や花鳥画に取り組みつつ、晩年には新しい水墨表現にも取り組んだという。
多くの画家に手当たり次第に依頼して描いてもらったという「十二ヶ月図」は、野間記念館の大きな特徴の一つです。今回も、川合玉堂のほかに、山田敬中、小堀鞆音、山本丘人、山口蓬春、松岡映丘、鏑木清方、伊東深水、児玉希望、長野草風の「十二ヶ月図」が出されていました。
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川合玉堂「十二ヶ月図」
一月「海辺」、二月「梅」、三月「山桜」
四月「釣」、五月「田植」、六月「登山」
七月「七夕」、八月「月見」、九月「砧」
十月「収穫」、十一月「枯野」、十二月「雪」
「川合玉堂と東京画壇の画家たち展」
川合玉堂は、横山大観、竹内栖鳳と共に近代日本画壇を牽引してきた巨匠の一人です。俳句や和歌にもとりくみ、文学的素養豊かな彼が描いた風景画は、日本の情趣をよりよく表現しているとして高く評価されています。近代日本画の確立に向けた激動の時代の中にあって、東京画壇の中核を担ってきた、玉堂。そして玉堂とともに、主に官展を舞台に大きな足跡を残してきた東京画壇の綺羅星のごとき画家たち。特に、文展(明治40年開設)から帝展(大正8年開設)へと引き継がれる大正から昭和初期の官展において、彼らの足跡は、特に大きな光彩を放っています。帝展期と重なる時代に形成された野間コレクション。その中から佳作を厳選、輝きの一端をご堪能いただきます。
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「美の流れ―講談社野間記念館名品図録」
編集:講談社野間記念館(小田島雅和、豊田和平)
財団法人野間文化財団
編集協力:講談社写真図版資料部
撮影協力:講談社写真部
発行:財団法人野間文化財団
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