一ッ山の作品は、新聞紙をこより状にした紙紐出作られた「バイソンの群れ?」です。親子ゴリラの作品「Gorilla’s man」は写真で見たときになにしろ質感が凄い、迫力があるので、ぜひ観たいと思いましたが、今回は会場一杯に並べられた「バイソン」でした。バイソンは、野生のもの、土臭い泥臭いものがつくりたかったからだという。一ッ山という苗字は静岡の富士山が見えるところから来ているという。自分の作品は富士山に比べれば、まだまだ小さいという。実家は紙紐工場で小さい頃から紙の廃材で遊んでいた、その素材に接してきたという。
村上の作品は、「遊戯する陶」と名付けられています。「装飾」ってなんだろうと考え、行為だと思ったという。時間と一緒に増殖していくプロセスや作業そのものが装飾で、つくっているときにふっとトランス状態になり、作品が勝手に意志を持って増殖していく瞬間を感じることがあり、作品自体に意志があるように感じていたという。秩序がなくてなんでもありで図々しいような感覚、「増殖」というものに興味が沸き、自然に任せてつくる方法だという。それにしてもこれも土で作られた焼き物、「陶」なんですね、驚きました。
「一ッ山チエ展―大地に、生きる―」
展覧会詳細
一ツ山チエの作品は、こよりにした紙でつくられた動物の立体オブジェです。まず印象的なのは、紙の軽さや薄さを感じさせない圧倒的な大きさとボリューム感です。2メートル近いサイや、ゴリラの親子、四股を踏むお相撲さんのパンと張り切ったボディが、紐状の紙をぐるぐると重ねて力強く表現されています。表情の豊かさも印象的です。おもちゃで遊ぶ子ゴリラの楽しさ、それを抱く親ゴリラの微笑み、傷ついてうずくまるサイのうるんだ目、身近な素材の持つ優しさにおおらかな野生動物の優しさが重なって見えるようです。一ツ山チエは1982年生まれ、大学卒業後にイラストレーターの仕事をしながら立体作品をつくり続け、最初は既製の紙紐で、次第に新聞紙を用いてリアルな動物の姿をかたちづくるようになりました。製紙産地である静岡県富士市の、祖父の代から紙紐工場を営む家で幼少時からとてつもない量の紙類に囲まれて育った一ツ山にとって、紙は自らのルーツに組み込まれたアイデンティティともいえるものでした。工場の巨大な機械や、名字の由来でもある富士山、側に見るものすべてが大きかったことが、体感的な作品のスケールにも繋がっています。NPOの仕事で訪れたザンビアで、密猟によって傷ついたサイの姿を見たことから「君が心の叫び 歌はいまもきこえつづける」が生まれ、映画「愛は霧の彼方に」から「Gorilla’s man」が生まれました。危機に瀕している野生動物や、制作中に新聞で世界のニュースに目を留め、心を動かされたことからモチーフがインスパイアされることもあるといいます。今展ではバイソンをモチーフに、圧倒的な自然に生きるものの逞しさをあらわします。土の臭いのする巨大なバイソンたちが、大地をどっしりと踏みしめ歩んでいく。ともに地球に生きる動物の強さ、優しさが大きく広がる風景を、ぜひ会場でご覧ください。
「村上愛展 シノニム~遊戯する陶~」
展覧会詳細
村上愛の作品は、自由にうねるようなかたちをした1mの大きさの陶のオブジェです。手びねりで増殖するようにつくられる有機的なかたちの随所に、伸びやかなドローイングや、装飾、鳥の頭、人の足などの生き物がちりばめられ、ひとつの作品の中にさまざまな表情が見られます。ジオラマのような大きさ、土っぽい質感や釉薬の色使いに特徴があり、造形は大まかなイメージをもとに、上下左右を考えずに手に任せて生み出されます。つくり手が感じる、作品自体が意思を持って野放図に増えていくような感覚が、鑑賞者にも伝わってくる迫力のある作品です。2009年の京都市立芸術大学大学院在学中には、東京国立近代美術館工芸館「装飾の力」展に出品しました。それをきっかけに、装飾とは何かを考え、プロセスや作業の行為、時間と共に増殖するイメージではないかと考えたとこから、モンスターという言葉が連想され次なる作品が生まれました。「ミセス『M』」、「モンスター」は南米の乱痴気騒ぎの賑々しさと、どこか素朴でプリミティブな味わいを持っています。ディテールや感覚的な発露が毎回異なることもあり、近作では色を押さえ、かたちに意識を置いた作品も制作し、エネルギッシュでパワフルな世界を更新し続けています。村上愛は2011年に京都市立芸術大学院修士課程を修了、現在同大学に非常勤で勤めつつ、京都で制作を続けています。「装飾の力」、「アジア現代陶芸展」などで目覚しい活躍をしてきましたが、京都での個展(2011)に引き続き、今展が東京での初個展開催になります。今展では未発表の新作を発表します。村上のモチーフによく登場してくる愛らしい玩具やユーモラスな動物、素朴で愉快な南米の民芸品、土着の強い香りのするような作品を、「遊戯する陶」と名づけて出現させます。どうぞ会場でご覧ください。
「LIXILギャラリー」ホームページ
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