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木下昌輝の「愚道一休」を読んだ!

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木下昌輝の「愚道一休」(集英社:2024年6月10日第1刷発行)を読みました。

 

禅と業に翻弄された人間の一生を描破する歴史小説!

愚昧、邪淫、瞋恚、悪口 風狂の先、人あり 破壊の末、地獄なし 我思う 愚こそ美なりと

 

「立派なお坊さんになるのですよ」。
母の願いを受けて、安国寺で修行する幼い千菊丸だが、禅寺は腐敗しきっていた。怠惰、折檻、嫉妬、暴力。ひたすら四書五経を学び、よい漢詩を作らんとすることをよすがとする彼の前に将軍寵臣の赤松越後守が現れ、その威光により、一気に周囲の扱いが変わっていく。しかし、赤松が帝の血をひく千菊丸を利用せんとしていることは明らかだった。
周建と名を改め、建仁寺で詩僧として五山の頂点が見えたのにも拘わらず、檄文を残して五山から飛び出し民衆の中に身を投げる。本当の救いとは、人間とは、無とは何なのか。腐敗しきった禅を憎み、己と同じく禅を究めんとする養叟と出会い、その姿に憧れと反発を同時に抱えながら、修行の道なき道をゆくのだった。己の中に流れる南朝と北朝の血、母の野望、数多の死、飢餓……風狂一休の生そのものが、愚かでひたすら美しい歴史小説の傑作。

 

木下昌輝の「愚道一休」は、以下のように始まります。
匂いに朝の気配がまじっているが、風景は夜のままだった。星が歌うように瞬いている。宿坊や僧堂は物音ひとつしない。朝なのか夜なのかわからない一時が、たまらなく愛おしかった。柄杓一杯の水で洗った顔はまだ湿っている。指をつかって、前髪やまつ毛について水滴をぬぐった。まだ数え十二歳にすぎない千菊丸だが、新しく生まれ変わったかのような心地を全身で味わっていた。

 

目次

第一章 千菊丸

第二章 周建

第三章 宗純

第四章 一休

第五章 風狂子一休

第六章 求道一休

第七章 地獄一休

第八章 夢閨一休

第九章 瞎驢一休

第十章 狂雲子一休

終章

 

木下昌輝:
1974年奈良県生まれ。2012年「宇喜多の捨て嫁」で第92回オール讀物新人賞を受賞。2014年、単行本『宇喜多の捨て嫁』を刊行。2015年に同作で第152回直木賞候補となり、第4回歴史時代作家クラブ賞新人賞、第9回舟橋聖一文学賞、第2回高校生直木賞を受賞した。2019年『天下一の軽口男』で第7回大阪ほんま本大賞、『絵金、闇を塗る』で第7回野村胡堂文学賞、2020年『まむし三代記』で第9回日本歴史時代作家協会賞作品賞を受賞。他の著書に『人魚ノ肉』『敵の名は、宮本武蔵』『宇喜多の楽土』『炯眼に候』『戦国十二刻 終わりのとき』『戦国十二刻 始まりのとき』『信長 空白の百三十日』『戀童夢幻』『応仁悪童伝』『孤剣の涯て』『戦国十二刻 女人阿修羅』『剣、花に殉ず』などがある。

 

朝日新聞:2024年7月17日

 

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