長谷川修一の「ユダヤ人はいつユダヤ人になったのか――バビロニア捕囚」(NHK出版:2023年12月15日第1刷発行)を読みました。
バビロニアに強制移住させられた半世紀―
彼らはそこで、
「神」と「聖書」を産んだ。
なぜユダヤ人は迫害されたのか?
そして迫害のなかで、彼らはいかにして
自らのアイデンティティを保つことができたのか?
紀元前六世紀に起こった半世紀に及ぶ「強制移住」、
そのインパクトがもたらしたものとは何か――
神と聖書とユダヤ人、その関係の謎に迫る。
目次
はじめに
第一章*事件の全容
ユダの人々はなぜバビロニアに捕囚されたのか?
ユダヤ人の登場
ユダ王国の「ユダ人」からユダヤ人へ
強制移住
何のために征服地の住民を移住させたのか
新バビロニア王国
アッシリアから独立しバビロンを奪還
捕囚のいきさつ
メソポタミアの強大な勢力とエジプトに翻弄されて
第一次バビロニア捕囚
捕囚されたユダの人々はバビロニアで何をしていたか
ゼデキヤの反乱
エジプトに援軍を求めて反乱を画策したが・・・
第二次バビロニア捕囚
「ゼデキヤの両目を潰し、青銅の足枷につないでバビロンに連行した」
その後のエルサレム
バビロニア軍は「神殿」を破壊したのか
第二章*歴史的・宗教的背景
二大勢力のはざまでイスラエル王国はいかに翻弄されて来たか
「文明の十字路」
エジプト文明とメソポタミア文明にはさまれて
イスラエル王国時代前史
聖書が伝えるイスラエルの人々の創世神話
イスラエル王国時代概略
北イスラエル王国と南ユダ王国という二つの王国
大国のはざまで
エジプトに代わって、勢力を拡大したアッシリア
神々の戦い
北イスラエル王国が滅亡したのは、神の命令を守らなかったからだ!
第三章*同時代におけるインパクト
「ヘブライ語聖書」はいつ、なぜ、書かれたのか?
捕囚の地で
なぜユダの人々はバビロニアの文化に埋没しなかったのか
ヤハウェの神像はあったのか
偶像崇拝のむなしさを繰り返し説くヘブライ語聖書
ヤハウェはマルドゥクに負けたのか
バビロニア捕囚時代もヤハウェ信仰は保たれていた!?
聖書に反映するバビロニア文化
「バベルの塔」のモチーフがバビロンにあったん!
ヤハウェ神殿をめぐって
エルサレム以外の地のヤハウェ神殿について
律法の形成
ヤハウェを崇拝する者が守るべき「神の命令」
神学思想の発展
自らのアイデンティティを保持していく装置として
唯一神教の萌芽
バビロニア捕囚後に初めて、排他的唯一神教的な思想が登場
第四章*後世に与えた影響
なぜユダヤ人が迫害の対象になったあのか?
捕囚からの帰還
王を必要としないシステムの構築
ユダヤ教の成立
ギリシャ風文化に対するユダヤ人の抵抗の時代
終末論とキリスト教成立
ユダヤ教から枝分かれしたキリスト教
「ヘブライ語聖書」の決定
世界中のどこにいても、その書物の内容にしたがって生きる
キリスト教世界とユダヤ人
キリスト教徒の目に異質に映ったユダヤ教徒の習慣
近代以降のユダヤ人迫害
アイデンティティ保持Systemが迫害の原因!?
おわりに
参考文献
長谷川修一:
1971年生まれ。立教大学文学部教授。筑波大学大学院博士課程単位取得退学。ハイデルベルク大学(ドイツ)神学部博士課程に学び、テル・アビブ大学(イスラエル)大学院ユダヤ史学科博士課程修了。専門はオリエント史、旧約学、西アジア考古学。主な著書に「聖書考古学」「旧約聖書の謎」「謎解き 聖書物語」、共編書に「歴史学者と読む高校世界史」など。
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