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100分de名著「中江兆民 三酔人経綸問答」を読む!

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12月の100分de名著は、「中江兆民 三酔人経綸問答」です。

解説は、劇作家、演出家の平田オリザです。

 

酒を酌み交わしながらの軽妙な対話に、

民主主義の本質を読みとく

明治時代中期、藩閥政治への不満から民権運動が大きな盛り上がりを見せるなか、その理論的な支柱を作り出そうと奮闘した思想家・中江兆民。代表作『三酔人経綸問答』は民主主義の本質を問う名著だが、ユニークなのはその形式。三人の人物の酒を飲みながらの問答によって進んでいく。理想主義者の洋学紳士と覇権主義者の豪傑君、真っ向からぶつかる二人の議論に、現実主義者の南海先生が示した意外な答えとは――

学生時代に中江兆民について研究し、演劇を通じて「対話」の持つ力を訴え続ける平田オリザ氏が、『三酔人経綸問答』の問答に込められた、現実主義的なリベラルの可能性や、分断が進む現代社会における「対話」の意義を解説する。

 

 

 

 

 

 

プロデューサーAのおもわく

日本が欧米列強に肩を並べようと近代化に邁進していた明治時代。その後半は藩閥専制への不満から自由民権運動が澎湃として巻き起こっていました。その理論的な支柱を創り出そうと格闘していた男がいます。中江兆民(1847-1901)。ルソーの「社会契約論」を「民約訳解」というタイトルで本邦初漢語訳し、「東洋のルソー」とも呼ばれた思想家です。彼の代表作「三酔人経綸問答(さんすいじんけいりんもんどう)」は、現代人にとっても避けて通れない「民主主義の根幹」を問い直す名著です。民主主義が危機に瀕していると言われる現代、この名著を読み直すことで、私たち日本社会が進むべき道をあらためて熟考します。

「三酔人経綸問答」は思想書としては珍しく三人の対話形式で進んでいきます。一度酔うと政治や哲学を論じて止まるところをしらない南海先生のもとに、ある日、洋学紳士、豪傑君という二人の客が訪れます。自由平等・絶対平和の追求を主張する洋学紳士と軍備拡張で対外侵略を目指せと激する豪傑君。互いに一歩もゆずりません。黙して耳を傾けていた南海先生が最後に発したのは意外な答え。帝国憲法下で与えられた恩賜的民権を活用して立憲制度を確立し、平和外交、専守防衛を旨とした国民軍の創設を説くという、二人の思想の妥協案とも見える現実主義的解決策でした。

かつてラディカルなまでの自由民権思想を唱えた兆民は、なぜこんな結論を書いたのでしょうか。劇作家の平田オリザさんは、この結論は自由民権運動の挫折を通して鍛え抜かれた強靱な思想的営為の所産であるといいます。単に理想論を唱えるだけでは現実は何も変わりません。歴史的現実を直視し、今ある条件を最大限に活用し、「対話」によって一歩一歩リアリスティックに理想への歩みを進めていかなければ、いかなる思想も意味がなくなる…それは、苦い挫折を経て兆民が獲得した筋金入りの現実主義が出した結論でした。苛烈な分断で閉塞状況に陥った現代の日本社会でこそ、この兆民の思想は読みなされるべきだと平田さんはいいます。

番組では、劇作家・平田オリザさんを講師に招き、新しい視点から「三酔人経綸問答」を解説。現代に通じるメッセージを読み解き、価値感が混迷する中で座標軸を見失いがちな私達の現代人が、よりよい民主主義社会を築いていくためには何が必要かを学んでいきます。

 

平田オリザ:

1962年、東京都生まれ。劇団「青年座」主宰。芸術文化観光専門職大学学長。江原河畔劇場・こまばアゴラ劇場芸術総監督。国際基督教大学教養学部人文科学科卒業。現代口語演劇を提唱し、1994年初演の『東京ノート』で翌年第39回岸田國士戯曲賞を受賞。1998年『月の岬』で第5回読売演劇大賞優秀演出家賞・最優秀作品賞、2019年『日本文学盛衰史』(原作:高橋源一郎)で第22回鶴屋南北戯曲賞、ほか受賞多数。2011年フランス文化通信省より芸術文化勲章シュヴァリエを受勲。主な著書に『演劇入門』『わかりあえないことから』(いずれも講談社現代新書)、『演劇のことば』(岩波書店)、『ともに生きるための演劇』(NHK出版)、『名著入門』(朝日新書)、小説『幕が上がる』(講談社文庫、2015年映画化)など。

平田オリザの「名著入門 日本近代文学50選」を読んだ!

 


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