鴻巣友季子の「文学は予言する」(新潮選書:2022年12月20日発行)を読みました。
”未来”は小説に書かれていた。
トランプ政権を先取りした「侍女の物語」
性加害の構造を描いた18世紀「少女文学」
英語一強時代を揺るがす「生まれつき翻訳」
小説から見通す世界の「未来」とは・・・
圧倒的な文学案内
トランプ政権誕生で再びブームとなったディストピア小説、ギリシャ神話から18世紀の「少女小説」まで共通する性加害の構造、英語一強主義を揺るがす最新の翻訳論――カズオ・イシグロ、アトウッドから村田沙耶香、多和田葉子まで、危機の時代を映し出す世界文学の最前線を、数々の名作を手がける翻訳家が読み解く。
小説に表れた数々の「予言」を
丹念な<読み>の力で繙く
「ディストピア」……
マーガレット・アトウッド、村田沙耶香、小川洋子、J.M.クッツェー、カズオ・イシグロ etc.
(メリトクラシー、リプロダクティブ・ヘルス/ライツ、ポストヒューマニズム、キャンセル・カルチャー)
「ウーマンフッド」……
ヴァージニア・ウルフ、桐野夏生、川上未映子 etc.
(精神的吸血、シスターフッド、ルッキズム、ケア労働)
「他者」……
アマンダ・ゴーマン、多和田葉子、奥泉光 etc.
(当事者表象、スポークンワード、英語帝国主義、生まれつき翻訳小説、アテンション・エコノミー)
【目次】
はじめに
第一章 ディストピア
1 抑圧された世界――ディストピア小説のいま
2 『侍女の物語』の描く危機は三十五年かけて発見された
3 大きな読みの転換――『侍女の物語』と『密やかな結晶』
4 拡張する「人間」の先に――ポストヒューマニズムとAI小説
5 成功物語の限界――メリトクラシー(能力成果主義)という暗黒郷
6 もはやリアリズムとなったディストピア
第二章 ウーマンフッド
1 舌を抜かれる女たち
2 男性の名声の陰で
3 シスターフッドのいま
4 雄々しい少女たちの冒険
5 からだとケア労働
6 文学における女性たちの声
第三章 他者
1 原作者と翻訳者の無視できないパワーバランス
2 パンデミックの世界に響く詩の言葉
3 リーダーの雄弁術
4 盛りあがる古典の語り直し
5 ますます翻訳される世界――異言語と他者性のいま
6 多言語の谷間に――多和田葉子
7 日本語の来た道――奥泉光
8 小説、この最も甚だしい錯覚
9 アテンション・エコノミーからの脱却――それは他者と出会うこと
おわりに
鴻巣友季子:
1963年東京生まれ。翻訳家、文芸評論家。訳書にJ・M・クッツェー「恥辱」(ハヤカワepi文庫)、M・アトウッド「誓願」(早川書房)、A・ゴーマン「わたしたちの登る丘」(文春文庫)等多数。E・ブロンテ「嵐が丘」(新潮文庫)、M・ミッチェル「風と共に去りぬ」(全5巻、同)、V・ウルフ「灯台へ」(世界文学全集2-01」所収、河出書房新社)等の古典新訳も手がける。著書に「明治大正 翻訳ワンダーランド」(新潮新書)、「熟成する物語たち」(新潮社)、「翻訳教室」(ちくま文庫)、「謎とき『風と共に去りぬ』」(新潮選書)、「翻訳一期一会」(左右社)等多数。