太田記念美術館で「歌川広重 山と海を旅する」を観てきました。
「歌川広重 山と海を旅する」
風景画の第一人者として、幕末に庶民の人気を得た浮世絵師、歌川広重(1797~1858)。広重が江戸の名所とともに盛んに描いたのが、諸国の山や海などの自然を題材にした作品です。広重は若い時期から、江戸から遠く離れた東海道の名所などを題材にしていますが、特に40代頃からは甲州や房総など、さまざまな場所へ旅に出たことが知られ、旅先で自然を写した経験が以降の作品に反映されていると考えられています。
本展では山と海をキーワードに、広重が晩年に手掛けた揃物「山海見立相撲」や、「六十余州名所図会」をはじめ、よく知られる名品から展示されることの少ない作品まで、幅広く展観をいたします。
展示ではあわせて、広重が実際に現地を訪れた名所や、既存の地理書の挿絵をアレンジして描いた名所など、その作品制作の様子についても紹介。また険しい山に建つ神社、海上の大鳥居など、各地の山と海に根付いたさまざまな信仰の形についても、その作品から読み解きます。浮世絵に描かれた絶景を、旅をする気分で楽しみながら、広重の画業をもっと深く知ることができる展覧会です。
本展の見どころ
1 日本の山と海の美をもとめた傑作「山海見立相撲」全20図を一挙公開歌川広重は晩年、諸国の風景、特に山や海を題材にした作品を数多く手掛けています。中でも「山海見立相撲」はまさに山と海を題名に冠したもので、安政5年(1858)9月にコレラで亡くなった広重が、その直前に手掛けた絶筆のひとつとも言えるシリーズです。本展では、同じく最晩年に描かれた「名所江戸百景」「冨士三十六景」などと並ぶ、広重渾身のシリーズ全20図を一挙公開。全図公開は国内で初めての機会となります。ほかにも「六十余州名所図会」をはじめ、広重が描いた諸国の風景を多数紹介いたします。
2 広重はその絶景を見たか―作品の制作過程を読み解く広重は生涯に幾度も諸国への旅に出ました。甲州や房総などを旅した際には広重は日記を残しており、実際に訪れた場所でのスケッチや体験をもとに、多くの作品を描いたと考えられています。一方で、広重は淵上旭江『山水奇観』や谷文晁『名山図譜』など、既存の地理書などの挿絵をアレンジして描くことも盛んに行いました。美しい風景画を生み出すために広重が行っていた様々な工夫を、作品や資料とともに読み解きます。
3 大自然に根ざしたさまざまな信仰を紹介広重が描いた諸国の山や海の景色の中には、しばしば神社や寺の境内が描かれているのを見つけることができます。急峻な山や、海に面した岬など、大自然の絶景は、古くから信仰の対象となりました。富士信仰や大山信仰をはじめ、江戸時代のさまざまな信仰を広重の絵を通して紹介します。
「太田記念美術館」ホームページ
太田記念美術館 Ota Memorial Museum of Art (ukiyoe-ota-muse.jp)
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